「…皆さん、上手なんですね」
一方、ハヤテの家では。
予想に反して、かなり手際の良い少年達にハヤテが感嘆の息を吐く。
「ん〜。チョウジの場合、好きこそモノの上手なれって所じゃねぇ?」
「そういうシカマルは薬剤の調合に慣れてるからか?」
「シノは何でも器用だよね」
話しながらも手は止めず、テキパキと調理は進む。
飾り付けこそ、料理に一家言のあるチョウジの独壇場だが、そこはそれ、流石に食欲をそそる盛り付けである。
「…以前、クッキーを習って以来、たまに作ってるんだ」
「…あ。俺も。化学実験みたいで結構面白い」
「…僕は前から手伝ってたけど…」
肯き合うシノとシカマルの反応にチョウジが溜息を吐く。
世の中で最も大切な料理を、実験になぞらえられては堪らない。
「それはよく言いますね。私もそう思います」
ハヤテがくすくす笑って、シノ達に同意する。
実際、実験工作感覚で料理にハマる男は多いのだ。
作るのも食べるのも好きなチョウジはともかく、他の二人は似たような気分なのだろう。下手に創造性を発揮しない限り、微笑ましいの一言で片が付く。
「…そういえば、カカシセンセって今日、来ねぇの?」
「…任務だそうですよ」
ちろりと意味ありげに窺うシカマルに苦笑する。
「ナルトの先生がどうかしたの?」
「…いや。ナルトが拗ねてたから」
「そういえばそうだな」
「任務が終わったらいらっしゃいますよ」
不自然さを感じさせない、ポーカーフェイスと話題の逸らし方に内心拍手を送り、軽く援護する。…それでも、ナルトを出せば納得させられてしまうという、強力な説得力は少々問題があるような気がする。
「…さぁ、出来た順番に運んでおきましょうか。女性陣の料理も、運ぶ手伝いをしないといけませんしね」
大量に作った料理を運び切るには、一度ではとても無理である。担当分が出来上がり次第、随時運んだ方が段取りもスムーズだろう。
「…あいつ等、絶対手伝いに行くの待ってるぜ」
「…だろうな」
「まぁまぁ。女性は女性と言うだけで素晴らしいんですから」
げんなりと肩を落とす少年達にハヤテが執り成す。それを受けてチョウジが不思議そうに首を傾げた。
「ハヤテさん、それ本気?」
「…と、アンコさんが常々」
鋭い指摘には、正直に、そして苦笑で返すしかない。
もっとも、無自覚フェミニストのハヤテとしては、半分以上は本気ではあるのだが。
「…やっぱり」
「あの人、本っ気で、無理を通せばの典型だよな。ま、そういうの嫌いじゃねぇけど」
母親といい、幼馴染といい、周囲に気の強い女性ばかりが集まる所為だろうか。シカマルが微妙な表情を見せる。
「…いのとサクラがこれ以上影響を受けないと良いなぁ」
チョウジも神妙な面持ちで同意する。
ただでさえ、気が強いのに、これ以上強くなられては太刀打ち出来ないからだろう。
「…ヒナタは、少し刺激を受けた方が良いと思うが」
「「同感」」
シノの言葉に強く頷く二人の姿に噴き出しかけて、咳をするフリで誤魔化す。
「あ、ハヤテさん、大丈夫?」
「…すみません」
「じゃ、とっととやっちまうか」
「そうだな。主役を待たせては申し訳ない」
「…ナルト達がいるから、暇はしてないと思うけどね」
気を取り直す彼らに、今度こそ、笑いが堪えきれなかった。
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