誕生日


 女三人寄れば姦しいとよく言うが。
 妙に気が合うのか、四人で姦しいを遥かに超えたレベルで騒ぎながら作ったスウィーツ各種は、どれも里一の甘党と言われるアンコにしては程良い甘さで抑えてあった。
 彼女によると、食べさせる相手に合わせて作ってこその手作りらしい。自分用には激甘に作るが、差し入れ用はそうでもない、という事だろうか。
『オトコは餌付けが大事』と、悪戯っ気たっぷりに教えられ、三人は真剣な面持ちで心にメモを取る。
「アンコさんも?」
「あ、聞きたぁい」
「アタシ?アタシはどっちかって言うと逆ねぇ。戦場のキャンプの食事で落ちた」
 きゃらきゃら笑うのに目を見開いて。
「そんなに美味しかったんですか?」
「乏しい食糧事情でよくも…って位」
「すごぉい」
「まぁね。作ってあげるのも良いもんだけど、料理上手なのも良いわよ。…さて、仕上げしちゃおうか。スポンジは三種類あるから、センスの見せどころよ」
 フルーツやホイップクリーム等、必要な物を三人の前にそれぞれ並べる。
「うわっ。緊張する」
「イルカ先生ってどんなのが好きだっけ」
「綺麗に出来るかなぁ?」
 性格の違う三人が作り上げるバースディケーキは、きっと喜んで貰えるだろう。


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