「さ。ビシバシ作っちゃおうね」
「は〜い」
イルカの誕生日、早朝。
気合いの入りまくったアンコの言葉に、三人娘が元気に返事をする。
「まず何から作ります?」
「そうねぇ。一から作るのはサンドイッチとクッキー、パウンドケーキかしら」
揃えられた材料とスウィーツリストを見比べ、アンコが指折り数える。
「スポンジケーキは作らないんですか?」
「それはね、ゲンマに仕込んでおいて貰ったから。コレに、後はデコレーションだけで良いのよ」
言いながら取り出したのは、シンプルながらも店で売られていても不思議じゃない出来のスポンジケーキ。
「…ゲンマって、不知火特別上忍?」
「…人は見かけによらないって言うか…」
「あ。でも、ホワイトディに皆がくれたクッキー、不知火特別上忍と森乃特別上忍に教わったって言ってたよ」
「ゲンマは任務でパティシエやった事があるのよ。イビキも器用な方だし」
顔を見合わせ、驚きを隠せない子供達に種を明かす。
どれだけくの一達に人気があろうとも、飄々として千本を銜えたままの胡散臭さ漂うゲンマと、基本優しく、子供好きにも関わらず、顔中傷だらけで強面のイビキ。
確かに、お菓子を作っている姿と言うのは、想像できないかもしれない。
思わず噴き出しそうになったのを、辛うじて堪えたアンコである。
それはさておき、初心者には少し、荷が重いスポンジさえ用意しておけば、後は失敗しにくい物ばかり。日持ちのする、焼き菓子が多いのもまた、よく考えた結果だろう。
彼女達自身の実力に見合ったメニュー選択の妙に感心しつつ、簡単に手順を説明していく。
「…ま、こんな感じね。まずは材料、量っちゃおう」
「はーい」
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