誕生日


「…ねぇ、いのちゃん、サクラちゃん、メニューはこんな感じで良いかな?」
「良いんじゃない?」
 思いつくまま、パーティー料理を書き出していたヒナタが二人にメモを見せる。
 手元にある料理の本は、子供好みのメニューだけでなく、大人向けのメニューも入れようという、意欲の現れ。
「でもさぁ、どこで作る?いくらイルカ先生がおうち、自由に使って良いって言ったって、主役の家で作るってのもねぇ」
 サクラと一緒にメモに手を加えつつ、いのが呟く。
 参加メンバーを考えて、かなりの種類と量を揃えなければいけない為、比較的用意しやすい物を厳選したのだが、どこで調達すれば良いのか、ちょっと思い当たらない。
 人数…というより、食料消費率から考えて、出来合いのものを買うより、手作りの方が遥かに安い。
 多少のスポンサーがついたからと言って、それに甘える訳にはいかないのだ。
 とはいえ、いくらパーティー会場とは言っても、主役の家で全てを用意するのも、どこか気が退ける。  おまけに、そんな事になったら、本来主役である筈のイルカが、さり気なく準備を手伝ってくれてしまうのが目に見えている。
「あ。それは大丈夫。アンコさんとハヤテさんの家のキッチン使って良いって」
 いのの不安を払うようにサクラが告げる。
 楽しそうに参加を表明してくれた二人の特別上忍は、ありがたい事に少し大目の資金と、料理を作る場所を提供してくれたのだ。
「…近いの?」
「二人共、先生ん家のすぐ側なんだって。だから、二手に分かれれば大丈夫っぽい」
「あ、ほんとだ」
 教えてもらった地図を広げると、三つの家がそれぞれとても近い事に気付く。里の外れと言っても良いのに、不思議なくらいだ。
「…で、分担どうするの?」
「それなら、こっちでやっといたぜ」
 パーティーの企画をしていた筈のキバがひょい、と顔を見せる。後ろに他の男の子達も来ているので、打ち合わせは一通り終わったのだろう。
「あぁと、そっち三人はアンコさん家でケーキとかそういうの。俺とチョウジとシノがハヤテさん家でメシ」
「そんで、俺とサスケとキバでイルカ先生ん家で飾り付けだってばよ!」
 面倒臭そうにシカマルが料理班の分担を告げ、ナルトが嬉しそうに装飾班のメンバーを告げる。男女綺麗に分けてしまってあるのは、たまたまではなく、彼らがアンコの家に行くのを忌避した為だろう。
 ちなみに、装飾班は料理が出来ない者だけで構成されたようだ。
「あ、それで良いわ」
「じゃ、じゃあ、このメニュー渡しとくね」
「…凄い量だな」
 ヒナタに渡されたメニューを見て、シノがぼそりと零す。いつもの口調でありながら、どこか楽しそうなのは、全員で気付かないフリ。
「…米、もうちょい増やした方が良くねぇ?」
「あ、うん。サンドウィッチとかもあるけど、これじゃ足りないよ」
「…チョウジ、お米持参しなさい」
 リストを見て、量を補正しだすシカマルと肯くチョウジ、呆れたように口添えするいの。
 そんな三人を見て、一体、何升炊けば足りるのだろうと、思わず眩暈がしてしまう、十班以外の六人だった。


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