「へーぇ。お子様達がねぇ」
「うん。ちょっとびっくりしたけど、構わないかなって」
アカデミーが半日だった為、午後から受付シフトが入っている昼休み。
暇そうに現れたアンコと、彼女に引きずられて現れたハヤテと中庭で弁当を広げての会話。
「いんじゃない?アタシも一口乗せて貰おうかな。どうせイルカのトコに行く予定だったし」
「アンコちゃん、任務入ってないの?」
昨日、受付でシフト表を見た記憶によると、アンコは確か里外任務だった筈である。…今日の夜から、二日間程の。
「イビキに代わって貰った」
「え」
「私もゲンマさんに代わって頂いたんですね」
「ハヤテ偉い!」
「ありがとうございます」
「二人共、偉くないから!」
「でも、イルカさんの誕生日ですし」
「そうそう。どうせカカシは任務だし。毎年の事じゃない」
「はい」
仲良く頷き合う二人に軽い頭痛を覚える。
自分を大事にしてくれるのは嬉しいが、モノには限度というモノがある筈である。そこを爽やかに無視されて良いものだろうか。
「確かに任務だけど!アンコちゃん達が代わって貰う理由にはならない!」
「だって、良いって」
「ゲンマさんから提案されましたし」
「信じらんない…」
あっさりと告げられた事実に本気で頭を抱える。何だって、あの二人は恋人にこんなに甘いのだろうか。
「世の中、深く考えちゃいけない事もあるのよ」
自信満々に言い切るアンコを上目に睨みつつ、がくりと頭を垂れる。
確かに、世の中には、深いツッコミを入れてはいけない事がある。
アンコとの長い付き合いで、それをよく知るイルカである。
…ただし、いつもなら常識人と言って良いハヤテまでもが、時折アンコと同じような行動をするのには、何年経っても慣れないのではあるが…。
「…あぁ、もう」
「それはそれとしてさ」
「何」
話を変えるアンコを、き、と涙目で睨みつけると苦笑が見える。
「カカシって、いっつも任務だけど、何で?」
「そう言えばそうですね。なるべく休まれるようにはしてらっしゃいますが、任務の方を優先されますね」
不思議そうに訊いてくる内容に、内心、溜息を吐く。この件に関しては、あまり言いたい物ではないのだ。
「旦那バカのクセに変じゃない?ねぇ、何で?」
「…そんなの、任務最優先が当たり前…」
「イルカ?アイツの任務三昧はいつもなんだから、一年で一日くらい休み優先してもおかしくない筈よ」
微妙な声音で言葉を濁すイルカを見逃してくれるアンコでない。案の定、的確に突っ込んでくる。
「…め」
「何」
「駄目。絶対駄目。あの人は任務最優先」
「だから何で。何かあったの?」
コレだけは譲れないと、握る手に力を入れると、更に追求される。仕方なしに、上目に肯く。
「…あった」
「何が」
「まったく、あの時の自分を葬り去りたい」
言いながらも頭を振る。思い出すだけで、心が痛くなる。
「こらこら」
「本当に何があったんです?」
どうせ、話を逸らしてはくれない。覚悟を決めると、気乗りしないままに口を開いた。
「実は…」
|