誕生日


 あまり手入れのされていない、自宅の庭で。
 いつもは忙しくて揃う事の少ない両親と、珍しく両親の知り合いが集まっていた、昼間。
 嬉しくて、走り回って、転んで泣きかけた瞬間。
 いきなり渡された、花冠と甘い木の実がたくさん入っていた手作りの篭。
『はじめまして。誕生日おめでとう、お姫様』
 泣くのも忘れて、見詰めてしまったのは、銀色の王子様。
 絵本で見たより、保育園で聞いたより、ずっとずっと、遥かに小さかったけれど。
『…いるか。おひめさまくないよ?』
『そぉ』
『おにーちゃん、だあれ?』
『えっとね…』
 優しい笑顔を向けられて、絶対、そうだと、思ったのだ。


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