「イルカ先生〜!おはよーだってばよ!」
「おはようございます」
午前中だけだった受付業務終了後。
帰宅前に商店街へ足を向けようとしたところに感じる、可愛い気配が二つ。
隠す気もないのだろう。
弾んだ声をかけられて、立ち止まる。
ゆっくり振り返れば、楽しそうに走って来るナルトに白い大きな手提げの紙袋を持ったサスケ。
「おはよう。ナルト、サスケ。…って、もう昼になるよ」
反射的に同じ挨拶を返しつつ、時刻が微妙だったのを思い出す。
「俺もサスケもまだお昼食べてないもん。お昼食べるまでは朝!」
「…成程」
「そりゃ屁理屈ってんだ」
新解釈に肯くと、呆れ顔の混ぜっ返しが入って。
仲が良いな、と嬉しくなる。
「そっか?…違うってばよ。用事!」
「…イルカ先生、今帰りか?」
「今日は午前中だけだったからね。もう帰るとこ」
「じゃあさ、じゃあさ、荷物増えて平気?」
不安そうに首を傾げる仕草に、知らず笑みが浮かぶ。
「大丈夫だよ」
意味が判らないままに頷く、イルカの言葉に二人が顔を見合わせて嬉しそうに笑う。
「先生にプレゼント!」
「良かったら」
体に似合わない大きな手提げの紙袋から二人がかりで出されたのは、花篭。
綺麗にアレンジされたそれの、ベースになっているのは赤いカーネーションで。
「…え?」
「今日さ、母の日って言うんだろ?サクラちゃんが教えてくれたってばよ」
「お世話になってるから」
「サスケと、二人でいのん家で買ったんだ!いのが作ってくれたんだってばよ、それ!」
「結構、サービスして貰った」
思いもよらないプレゼントに、花と二人を交互に見つめ。
どこか誇らしげな二人に言葉をなくす。
「…メーワク?」
「まさか!…ちょっと、びっくりしただけ。スゴく嬉しいよ。ありがとう」
黙ってしまったのに不安を感じたのだろう。情けない表情を浮かべる子供達に心からの笑顔を向ける。
欠片でも期待していなかった、と言えば嘘になる。
でも。
無理だと思っていたのも本当なのだ。
嬉しすぎて、鼻の奥が痛くなる。
「先生?」
「…これから、商店街行くんだけど」
声が震えないよう、留意しながら口を開く。
「何?」
「荷物、持ってくれる?一緒にお昼食べよう?」
「いいの?」
「ありがとうございます」
「家の片付けも手伝ってくれたら、夕食も招待するよ」
勿論、子供に否やがある訳がなかった。
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