神婚


「そう。じゃ、帰ろうか。迎え用の神事も済ませたし」
 壊れた空気の中、いち早く立ち直ったカカシがあっさり告げる。
「いつやったんだ、そんなの」
「今。さ、イルカ先生、帰りましょ。ナルト達が待ってます。…雫。今回の上忍試験は不合格だから。次にまた挑戦するように」
 面倒臭そうに眉を寄せるアスマの問いに軽く応じると、呆然とした風情で立ち竦んでる雫にきつい一言を投げ掛ける。…無事に潜入し、要所に就いたまでは評価出来るが、まぁ、及第点には…という所か。
「…え。嘘!カカシ先輩、そりゃないですよ!」
 投げつけられた科白をワンテンポ遅れて認識すると、慌てて立ち去ろうとするカカシに追い縋る。次回…と言われて、本当に次回があるのかすら怪しいのが上忍試験なのだ。
「カカシ先生、すみません」
「はいはい」
 イルカの要請に肯き、抱えていたのを一時的に解放する。イルカはするりと元雇い主の前に立ち、忍独特の、鮮やかな笑顔を浮かべてみせた。
「…では、依頼完了と言う事で里に戻らせて戴きます。延滞料金は後程、里の方から請求させて頂きますので、ご了承ください。尚、今回、中忍一名の指名料の他に、上忍二名、特別上忍一名の特別指名料が別途請求されますので、そちらの方のお支払いもよろしくお願い致します」
 さらりと事務用件を伝えると、へたり込んでいる雇い主に背を向ける。そこをすかさず、カカシが抱き上げた。
「…自分で動けますよ」
「…見た目、ちょっと痩せてないですか?」
「あー…。ちょっと強制的にダイエットを」
「そりゃまた何で」
「…食事に混ぜモノがあって。怖くて水分しか取れなかったんですよ」
「…契約違反で違約金も請求…だな」
 アスマの言葉が、相手に対するトドメとなった。


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