「…奥方様。お願いですから、緊迫した空気を無視して仕掛けを片すのは止めてください」
「あのバカが自暴自棄になってたらどうするんですか」
「だって。カカシさんと皆さんがいらっしゃるから。絶対安全だと思ってましたし」
何の懸念もなかったと言い切られ、我関せずとばかりにトラップを外す事に専念していたイルカに苦言を申し立てていた隊員の肩ががくりと落ちる。
「万が一と言う事もですね…」
「ありえません。皆さんが他の方に後れを取るなんて。…あ、カカシさん。皆さんの分のお茶淹れますけどー」
「んー。誰か手伝わせて良いよー」
捕らえた男を入念に縛りあげ、無造作に庭に転がす。夜が明ける前に里へ戻せば問題はない。
酒は無理だが、一服の茶は構わないと、イルカの提案に気軽に許可を与える。
「いや。平和だねぇ」
「平和なのは貴方様方だけですぅ…」
隊員達の泣き言は、二人にあっさり無視され、夜闇の中に溶けて消えた。
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