裏事情


「…判って言っておるのか?」
「判ってますよっ」
「…イルカから選択肢を奪う気か?」
「違います!」
「…ワシらが納得いくよう説明せんか」
 苦虫を数十匹も噛んでるような三代目との睨み合いは、オレが目を反らす事で終わる。
 …判ってるんだ。自分が無茶を言い出した事なんて。
 でも、仕方がない。
 おとなしく、黙って見てるなんて、とーてい出来っこないんだから。
 その時になって慌てる位なら、今の内に予約しときたいと思うのは当たり前。
 ──────── …我ながら、ガキらしくない考えだとは思うんだけどね。
「…アレは。儀式は。一応、希望があれば…とか言ってますけど。大抵、その年代の希望の相手なんて、まず規定外だし。そしたら、スリーマンセルの担当上忍がやるんでしょ?」
「…ま。大半はそうなるのォ」
 嫌々口を開いたオレに自来也が合槌を打つ。
 目の前に揃う、里の最上層部のお歴々。
 …この大戦中によくも集まりやがったよなぁ…なんて、ここで引いてる場合じゃない。
 オレだって、何故だかその中に組み入れられてるんだから。
 …本当に何でだろう、とか偶に思うよ。こんなガキを最上層部にして良いのかよ…とかね。
「だったら!オレが今から立候補しといても構わないと思ったんですよ!」
「…理屈ではそうねぇ。その時期に上手い事、里に居られるか判らない以上、予約もしたくなるわね」
「まぁ。一応、婚約者なんだから、権利はあるだろうね」
 オレの言葉に頷くのは大蛇丸と綱手。
 どっちかと言えば面白がってるみたいだけど。それを言うなら、先生や自来也も一緒。
 難しい顔をしてるのは、三代目と──────── こっちが重要なんだけど ──────── うみの上忍夫妻。いくらオレが頭下げたって、この二人が頷いてくれなきゃ意味がないし。
 それから、傍観者に徹しちゃったらしい、ホムラじーちゃんとコハルばーちゃん。口を挟む気すらないらしく、のんびりお茶なんか啜ってる。
 …でもって最後に、本当は今回の最重要人物なんだけど、多分…っつーか、絶対、一番判ってないだろう、イルカ。
 オレが珍しく大人相手に言い争ってるのを、不思議そうな顔して見ながら、(大蛇丸お手製の)お菓子を食ってる。
「…ねぇ、カカシ?儀式の相手には一応規定があるの、知ってるよね?誰でも良いって訳じゃないよ」
 一応、真面目な声で、先生。無表情装ってるけど、目が笑ってるんだよねぇ。
──────── 規定は。中忍昇格後、三年以上で、Bランクの花街潜入捜査を五回以上経験、遂行した者である事。ただし、上忍の場合は不問。…オ・レ・は!上忍だから、既に規定満たしてますからね、先生!」
 強調してみる。
 流石に、知らないでこんな事、言い出したりしないよ。
 それに、オレが木の葉の法律、全部諳んじられるの知ってるクセに、こんな事言い出すんだ、先生は。
「三代目ぇ。言い逃れ出来ませんよォ」
 …笑いながら言うと、三代目の血圧上がるよ、先生。別に、オレは主張が通れば文句ないんだけどね。


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