「…頭冷やそ」
初めての行為の後、疲れ果てた顔で寝息を立てるイルカから無理矢理視線を外す。
このまま見ていたら、理性がなくなる。絶対。
妙な自信と共にテントを後にする。それでも、少しでも寝やすいようにとシーツを替え、結界を張り直した。
「…水浴びして来…」
不寝番の者に告げようと近付くと予想外の人数が揃っており、言葉が止まる。
「…何、この人数」
「…カカシよ。儀式は終わったのか?」
「一応…て。…え?三代目?何で?」
カカシの問いに隊員が答えるより早く逆に問われ、素直に応じかけ、身体が固まる。
有り得ない人物が隊員達の中心に居た。
「こやつらの式を見て飛んできたのじゃ。…何を突っ立っておる。座らんか」
「…はあ」
言われるままに開けられた場所に腰を下ろす。
里長の…否。この場合、保護者の突然の訪問に思考が追い着いていかない。
「無体は強いてないじゃろうな」
「…出来る訳ないでしょ」
渡された湯飲みを反射的に受け取り、にやにや笑う三代目を軽く睨む。
判っているくせに揶揄うのは、カカシの保護者達の悪い癖だ。それが判っていて躱せないのは修行不足なのだろうが。
「じゃろうな。で、今回のイルカの任務じゃが」
当然のように頷く三代目を睨もうとして、続けられた言葉に止まる。すう…と表情と気配が変わった。
「出立時は、ワシも、相談役の二人も里を離れておったので詳細は不明じゃ」
「不在…?だからあんな発言を…」
「如何した?」
「イルカが火影の命を請けてるって言ったら有り得ないと」
暗部の言葉は絶対の筈なのに、自信に満ちた顔で否定してきた。
そこに感じた不信と違和感。
「ふむ。調べさせておるのか?」
「一応は。その代わり、イルカにトラップを張らせます」
「良いじゃろう。この件はお主に任せる」
「御意」
「…で。イルカは不適格で良いのじゃな?」
「…!」
真面目な話から一転した言葉にカカシが咽る。それに対し、そばに居た隊員が慌てて背を擦る。
「何を咽とるか」
「…で」
「何じゃ」
「不適格で!」
珍しく顔を真紅に染めるカカシに三代目が爆笑する。暗部隊員たちも笑いを堪えつつさりげなく顔を背けている。
「…儀式報告書なら後で出しますよ」
「うむ」
顔を手で隠しながら涙目で告げるカカシに満足そうに頷く。
実は、くの一の「儀式」の際、本人に知らせず行われる試験がある。それは、女性特有の身体を使った任務に対しての事。こればかりは、性別が女性と言うだけではこなせない。何より本人の資質が大事なのである。そこで、儀式の際に身体及び精神の『適・不適』が測られるのだ。
ちなみに、今回のカカシの判断には、多分に私情が混じっているが、その事で三代目から咎めが来る事はおそらく、ない。…揶揄いはあるだろうが。
「…勘弁してよ…。…て。…あ!」
何かに気付いたのか赤い顔が蒼く変わっていく。
「…じっちゃん…」
蒼白な顔で茫然と見るカカシに、流石に三代目の顔色も変わる。
「何じゃ」
「…どうしよ。避妊忘れた…」
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