「そうだけど違うの〜」
「…どう違うの?」
「低いの!低くてどきどきするの〜」
「…よく判らないけど。嫌いな訳じゃないんだ?」
「…うん」
「…ん〜。低い声ねぇ」
イルカのパニックの原因は今一つ理解出来ないのだが、別に嫌いな訳ではないようだ。
そう結論付けると、取り敢えずその事は頭の隅に追いやる。声なんか一々意識して使っている訳ではないし、殊に相手がイルカとなれば、意識しなくても優しい(?)声音しか出てこない。
近い将来、声一つで人をタラしこむと言われるようになるカカシも、自覚がなければこんなものである。
「…慣れて」
言い切る。
どう低い声なのか、自覚がないので皆目見当もつかないが、少し前に声変わりも終わってしまっている為、今更声を高くするのは無理である。イルカに慣れて貰う以外ない。
「慣れて…て」
「お願い」
情け無く眉を寄せるイルカに囁くと頬が染まる。その隙にするりと衣を落としてしまう。
「わざとじゃないから、さ。慣れて?」
「う、嘘ぉ…」
強請る口調で囁く度にイルカが紅くなって身を縮こませる。耳の後ろまで紅く染めている姿にたまらず唇を寄せた。
「…んっ」
「何が嘘?」
吸い付いて離すと白い肌に紅い華が散る。満足気に目を細めると柔らかく問う。
「先刻からずっと低い…もん」
「…そお?」
困ったようにきゅう、と首にすがりつくイルカの背を擦り、邪魔になってきた衣を剥ぎ取る。会話に気を取られて衣を脱がされた事にも、その行為に無意識に協力してしまった事にも気付かない様子に内心で苦笑する。
「気を付けるよ」
吐息混じりの言葉にぴくん、と肩がはねる。
強く縋りつく仕草にくす、と笑い、吸い着くように滑らかな背中を撫であげた。
「え?」
「可愛い」
驚いて顔を上げ、背を反らせた隙に軽くキスを落とす。何度となくキスを降らせながら今度こそ膨らみに触れる。
「…っ」
目を固く閉じ、全身で緊張を表すイルカに優しく優しく触れる。
「可愛いよ」
直に触れる肌の感触にびっくりして固まるのを宥めるように囁く。
「嫌じゃないよね?赤くなってるの、凄く可愛い」
意識して優しい声を出すと、自分でも予想以上に甘い声が出る。その度に紅く染まる頬に胸が疼く。
固く閉じられた目に、一つキスを落とし、改めてベッドに押し倒す。背中にシーツの感触が拡がった瞬間、うっすらと目を開くが、すぐに目を閉じてしまう。
「怖い?」
「へ…き。カカシさんだもん。怖くない」
ふ、と目を開けて視線を合わせる。不安に揺れてはいるが、恐怖心はないようだ。
「目、閉じてていーよ。今から、全身に触るよ?この手とこの口でね」
ちゅう。
音を立てて首筋を吸い上げる。
「どっちも俺だけどね」
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