七夕


「ケチだよな。年に一回しか会っちゃダメだって。…で、どれだってばよ?」
「ただの昔話だろーが。…あれだ、ドベ」
 歩きながら一緒になって空を見上げて、結局星の位置が攫めなくてサスケに聞くナルト。突っ込みを入れつつも、きちんと教えている辺り、サスケもなかなか面倒見がいい。
「確かに、私も嫌だな。…ねぇ、イルカ先生は?」
「何が?」
 きゅ、とイルカの腕を掴み、サクラが上目に見つめてくる。
「恋人と一年に一回しか会えなかったら!先生だって嫌じゃない?」
「…あぁ。ん〜。…平気、かな」
 少し、考える素振りをしてから答える。無意識に視線が後ろに向けられたかも、しれない。
「え〜?何で?淋しくないの?」
「淋しいよ。でも、心配はするけど、ちゃんと帰って来てくれるから、何年でも大丈夫」
 想像するだけでも嫌そうに首を振るサクラに、淡く微笑む。帰らない人を待つのならともかく、必ず帰る人を待つのなら、幾らでも待ててしまうものなのだ。なまじ経験があるだけに、言葉に説得力がある。
──────── …敵わないねぇ」
「カカシ?」
「何でもな〜いよ」
 思わず毀れた呟きをサスケに聞き咎められるが、適当に誤魔化す。なんとまぁ、心強い言葉なのだろうか。
「じゃ、カカシ先生は?」
「ん?」
「…話、聞いてたでしょ」
 振り返って腕に手を絡ませてくるサクラの頭を軽く撫でてやる。
「ん、平気」
「先生も平気なの?」
「っつーかねぇ、任務に出てるとあっという間」
「…任務って…」
「俺の場合は任務でしょ。そっちに集中してるから、一年や二年なんてすぐ」
「…それって薄情。淋しくないの?」
 ぷう、と頬を膨らます。恋を夢見る女の子に、この答えは納得いかないものだったらしい。
「里で待ってるの、知ってるからねぇ。淋しいとか言ってる暇に任務終わらせ〜るよ」
 苦笑気味に言ってやれば、まだ多少は不服そうだったが、黙って考え込んでしまう。
 淋しい思いをさせているのを知っているから、いつだって絶対に帰ろうと思う。五体満足は無理でも、必ず生きて里に。
 それ以外に、出来る事はないから。
「…恋人より、任務?」
「恋人を抱きしめる為に、任務」
 上目に拗ねた顔で睨む幼い顔に真面目に告げる。くっついて来た残りの二人も、真剣に見上げてくる。
「…ま!そのうち解るようになるよ」


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