「…七〇点…かな」
カカシの注文した竹細工をなんとか作り終え、三人で頭を突き合わせながら描いた見取り図。赤ペンを片手に採点するカカシが満足そうに告げた。
「ま、今のお前らじゃこんなもんでしょ」
「…結構違ってる」
「ほら、やっぱりここはデカい部屋だってばよ」
訂正箇所を不満そうに見るサスケが呟けば、意見の通らなかったナルトが騒ぐ。そのまま喧嘩になるかと思いきや、どうやら復習の方に気を取られているらしい。
ぎゃあぎゃあ言い合いながらも見取り図の見直しに余念がない。
「…先生。これって…」
「昨日の掃除で憶えた成果。他の所に行っても同じ。一度行った所の間取りは、後で図面化出来るように頭に叩き込むんだぁよ」
サクラの言葉に肯く。
地図や見取り図、地形図を見て現場に対応するのも、また逆に、事前情報もなく敵地に入った折に自身の目により地図、地形、間取りを把握するのも、忍には重要な素養となる。
前者は速やかに任務を遂行する為に。後者は後陣に確実な情報を伝える為に。
「合わせて脱出口も…ですよね」
「はい。イルカ先生正解」
ナルトとサスケを黙らせたイルカが言い足す。それをおどけた口調で肯定し、ぴしりと後を続ける。
「何事にも不測の事態ってのがある。この程度の観察眼と記憶力は養っておけよ」
最悪の事態に備え、どんな状況にも対応し得るだけの情報を得る為の観察眼は不可欠である。掃除一つでもその手の修行になるのだ。今回は演習でやらせたが、掃除等は基本的にDランク任務に多い内容である。本人達はしょっちゅう文句を言っているものの、結構馬鹿に出来ないのだ。
今までやらせた事はなかったのだが、今後、掃除や修繕の任務が入ったら、後日見取り図作成をテストにしてみようかと考える。
「カカシ先生。そろそろ…」
子供達が神妙な顔で返事をするのを待ち、イルカが遠慮深く告げる。
「そうですね。…サクラ。イルカ先生と一緒に風呂入っておいで」
「…良いの?」
鷹揚に頷き、サクラを立たせる。夕方には少し早いが、別に構わないだろう。
「女の子は支度に時間かかるしねぇ。それに、約束したんでしょ?」
「ありがとう!」
「じゃあ、すみませんが…」
「はいはい。こっちは仕上げにかかります」
会釈をしてサクラを連れて行くイルカに手を振って、自分もナルトとサスケを立たせる。
「先生、仕上げって?」
「残った竹でね。ま、手伝いなさいよ」
訝しげな顔を見せつつ、ついてくる二人の頭を、ぐしゃぐしゃにしながら再度庭に向かった。
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