夜風の中から

もう忘れたと思っていた人に、街で偶然逢ったことって、ないだろうか。
4年前、二度と合うはずのない時の流れが交差した。

(…12年ぶりぐらいですね)
(うん。元気そうだね。結婚したんだ)
(そう。2年前)
(可愛い赤ちゃんだね。…あ、二人目もできてるみたいだね)
(うん、今6ヶ月。あなたも子どもさん、いるの?)
(いるよ、2人。幸せそうで安心したよ。よかった)
(ありがとう。じゃあ、お元気で)
(お元気で)

偶然出逢った外食産業のお店。
言葉に出して会話はなかったけど、心がそんな風に会話した。
12年前は、いい別れができなかったけど、時間がすべてを解決してくれた。

『時間は、最良の医師である』
今は苦しいかも知れないけど、時がすぎるのをじっと待つのも、いいものである。


【『みんな去ってしまった』ほかに収録】

(初稿 2000.04.29)



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