わたしの子供になりなさい

「人を殺す経験をしようと思って、やりました」

17歳の少年が犯した殺人現場を見てきた。
そこいらは、小中学生だった頃、わたしの遊び場だったところ。
身近な場所で起こった事件。
何が彼をそうさせたのか、心が理解できるまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。
でも…。

涙を流したことがない人はいない。あなたもそうだね?
でも、涙を流さない努力をしている人はたくさんいるものだ。

自分自身、哀しい涙は見せたくないし、見たくない。
自分が哀しいからといって、人まで哀しくしてはいけない。
自分の哀しみを人に押しつけてはいけないのだ。

ただ、自分の哀しみを、感じてくれて、哀しみを共有できる人が
いることはうれしいものだ。押しつけではない、共有。
そんな人が一人いるだけで、人は少しだけ救われた気持ちになれる。
そんな人、あなたにはいたのだろうか。

『どんな冬にも春が来る どんな夜にも朝が来る』

前にもどこかで書いたフレーズだけど、わたしが中学3年生だった頃、
ラジオのパーソナリティだった落合 恵子さんに手紙を出したことがある。
その時に、彼女からいただいた手紙の返事に書かれていたメッセージだ。

今しか見えず、未来のことを考えない行動は、いつか破綻し、自分に返ってくる。
当たり前のことかも知れない。だけど、なかなか見えないことだった。

あなたは、誰の子どもなのですか…?
そして、あなたは、誰の親になるのですか…?



【『わたしの子供になりなさい』ほかに収録】

(初稿 2000.05.06)



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