忘れな草をもう一度

小学校1年生の時の同級生、Tちゃん。
Tちゃんは、ちっちゃくて、くりっとした目が印象的な女の子だった。


今思うと、別に家が近かったというわけではないのだが、毎日のように、
二人で遊んでいたような記憶がある。主な遊び場は、学校だった。
1年生だから、ほとんど午前中に授業は終わり、給食を食べたら家に帰る。
そして、学校で待ち合わせをして、夕方まで遊ぶのだ。

何をして遊んでいたんだろう?
一緒に遊具で遊んだり、学校の
池にいるコイに
エサをやったりしていたんだろうか。
ほとんど記憶に残っていない。

ある時、Tさんと手をつないで遊んでいたら、6年生の男の子3人組が
やって
きた。
「おい、見ろよ、こいつら手をつないでるぜ」
「ほんとだ。ヒューヒュー!」

Tちゃんとふたりで、怖くなって、その場から逃げた。
「こわかったね」「うん」

Tちゃんは、その後、転校してしまった。それ以来、どうしているだろうか。
これが、初恋だったのかもしれない。
  
花は何のために咲く?
自分のため?

愛する誰かのため?
どんな花にも、その花が咲くために、一番ふさわしい場所と条件がある。
その環境をねじまげては、けっしていい花は咲かないんだよね。

Tちゃん、あなたは今、誰のために咲いている?




【『Singles』ほかに収録】

(初稿 2001.02.11)



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