誕 生 前編

たったひとつだけ、中島みゆきの曲を選べと言われたら、わたしはためらうことなく、
この曲を選ぶ。
前にも話をしたが、それまで15年間ぐらいに渡り、ベストの座にあったのは『歌姫』である。
別に歌姫に魅力がなくなったわけではない。より、わたしの心に響く曲が見つかっただけだ。

人が人と出逢い、逢瀬を重ねながら二人の時を刻んでいく。
(このまま時が止まればどんなにいいだろう…)
その流れの中では、無駄な時間など刹那にも感じないものだ。

あなたは、つらい恋に泣いたことはないだろうか?
でも、その涙があったから次のめぐり逢いがある。
その時に流した涙は、けっして無駄なものではないはずだ。

どんな出逢いをしても、たとえどんな別れをしても、
『覚えていること』…これが一番大切なことなんだと思う。
『誰かが自分を覚えてくれている』という支えがあるからこそ、人は前に進むことができる。


【『EAST ASIA』 ほかに収録】

(初稿 2000.02.22)
(最終改稿 2000.02.28)



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