砂の船


夜中に目が覚めた。
夢を見ていたようだ。
どきどきどき…感じる鼓動。
たいがい、そんな時は、重い夢を見ていたことが多い。

心地よい波が続けば続くほど、そこから荒海に出た時はつらい。
しかたないとはわかっていても、どこかでもう一度、戻れるかも知れない航路を探す。
砂の船は、いつか海に沈む。それが明日か、1ヶ月後か、1年後かはわからない。
沈む前に、少しでも何とかしたくて、人は、それでも船を出すのだ。



【『寒水魚』 ほかに収録】

(初稿 2000.03.05)



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