波の上

初めて留守番電話にメッセージを受けた時、めずらしくて、
うれしくて、何度も何度もそのメッセージに耳を傾けたことがある。
自分のためだけに、送られてきたメッセージ。大切な思い出。

…いつか、その録音されていたメッセージが消えるときが来る。
自然と消えることもあるが、たいていは、意識的に消すものだ。
単純に、大したことじゃないから、消すのかも知れない。
覚えていたくなくて、忘れたくて、消すのかも知れない。
つらくて、くやしくて、離れたくて、消すのかも知れない。

さあ、勇気を出して、消去ボタンを押してしまおう。



【『Singles』ほかに収録】

(初稿 2000.05.20)



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