小石のように


どんな小さな子どもでも、夢と意志を持っている。
いつかその意志で、自分の夢の道を歩き始める時が来るものだ。
その道が、本当に自分に合っていればいいが、そうでないと…。

中学生から高校生ぐらいになると、それまでの子ども世界の価値観から、
大人世界の価値観を持つようになる。そして、みんな、そのギャップに苦しみ、悩む。
自分の進むべき道が自分自身の中に確立できればよいが、なかなかそれは難しい。
多くの場合、いろんな方向に右往左往しながら、模索していくものだ。
もちろん、それでいいのだが、中には、大きく道を外し、転がっていくこともある。

一度、坂道を転がりだした石は、自分では止まることができない。
加速度をつけて、どんどん転がっていくのみ。
何かにぶつかるか、あるいは、奈落の底に転がりつくまで、それは止まらないよ。
今まで、そんな石を、たくさん見てきてしまった…。
…心配なのは、丸い石ほど、一度転がりだしたら止まらないということだ。
ごつごつしたとげのある石ほど、転がりだしても途中で止まれる可能性が多いよね。

親は子どもたちを見守る。そして、子どもたちをかばおうとする。
しかし、転がり始めて勢いがついてしまった子どもたちを止めることは困難だ。
それでも、たとえ羽根がボロボロになろうとも、子どもをかばおうとするのが親だ。
そして、そんな親の気持ちを知ってか知らずか、いつか子どもは親の巣から旅立っていく。
なかには、二度と帰らぬ旅に逝ってしまったものもいる。

いくつになっても、親は親。子どもは子ども。
お互い、胸を張って、語れる人生を歩みたい。


【『親愛なる者へ』ほかに収録】

(初稿 2000.04.23)



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