孤独の肖像

高飛び込み用のプール。
水深5mの底まで沈み、仰向けになって水面を観る。
水圧で肺と鼓膜が圧迫され、身体中が水と一体になった気がしてくる。
ただ、きらきらと輝く水面だけが視界の中で広がってくる。
そんな景色を観ていると、(このままずっと沈んで、眠ってしまうも悪くないなぁ…)なんて。

別に自殺願望があるわけではない。
すべての生き物が海から産まれた頃の、遠い記憶が残っているのかも。
何かに、きゅう〜っと包まれながら眠るのって、そんなに悪いもんじゃない…。
  
信じていたと思っていた人に、裏切られたこと、ありますか?

人に裏切られた時、それが信じられなくて、思わず自分の心を閉ざしてしまう。
自己防衛反応だ。孤独の面をかぶり、心を壁に塗り込める。そうすれば、
しばらくの間は、心が安定するような気がするから。
でも、それでは何も解決していないことに、やがて気がつくだろう。

つらいことだけど、あなたを裏切った人は、あなたが思っているほど、あなたのことを
気にはしていないものだ。
それを認めることができるようになるまでには、時間がかかるし、勇気もいるが…。

きっと、あなたがその人を信じていると思っていたこと自体が、偽物だったのだ。
よく観てごらん。その人は、あなたが探している、本物の『あの人』ではない。

本当に孤独になるのがつらいから、孤独を演じる面をつける。
それで心が落ち着くなら…。
それで新しい自分になれるなら…。


【『miss M.』ほかに収録】

(初稿 2000.05.02)



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