| 一年中、元気な人は、どこにもいない。 一年中、人に優しくできる人は、どこにもいない。 だれだって、つらいときはある。 だれだって、疲れるときがある。 普段、気を張って生きている人ほど、 誰も見ていない時には、力無く肩を落とす。 普段、周りに気を配って生きている人ほど、 誰も見ていない時には、大きなため息をつくね。 にぎやかな街の喧噪の中で、あなたは生きているけど、 いつの間にかあなたの首に巻きついた真綿の糸が、 汗で縮み、あなたを絞めつけているのが見えるよ。 でも 誰よりも知っているよ。 あなたは機械じゃないってこと。 あなたは 誰よりもやわらかい体と 心を持った人だってこと。 「ただいま」 「おかえり」 本当の故郷じゃないかもしれないけど、 ここは、確かにあなたの還るところ。 |
【『短篇集』ほかに収録】
（初稿 ２０００．１２．２５）
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