時 効

第二次世界大戦の末期、1945年8月6日。
広島の原子爆弾が投下された。
市内にいた約42万人の市民のうちの38%にあたる、約15万9000人が、
その4ヵ月後の1945年12月末までに死亡したという。

この8月6日、今は「原爆の日」と呼ばれているが、かつては「原爆記念日」と呼ばれる
こともあった。
普通、「記念」という言葉にはおめでたい意味が含まれているね。「結婚記念日」とか。
(原子爆弾が落とされたのが、めでたいことであるわけがない!)
記念日は、「決して忘れてはいけないこと・忘れられないこと」の意味を持つものだ。

誰にでも一つや二つある、心の記念日。
いいことなのか、悪いことなのか、それはいろいろあるだろうけど、すべて記念日。
 忘れられない想い出…。
 忘れたくない想い出…。
 消してしまいたい想い出…。
 消すことが出来ない想い出…。

(何もわざわざ思い出さなくてもいいじゃないか)
だけど、そんな想い出には、決して時効なんて無いと、わたしは思う。
心は、風化されることのないものだから。

8月6日は、広島原爆の記念日。
今日、8月9日は、長崎の原爆記念日。
そして、8月4日は、わたしの記念日。



【『月-WINGS』ほかに収録】

(初稿 2000.08.09)



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