家 出

 「もう、友だちが信じられないよ」
 「誰にも話せない」
 「来年も同じクラスになりたい」
 「うん。もし一緒のクラスじゃなかったら…家出しよう」
そして、4月。二人は家を出た。

先生に見つかり、家に連れ戻されるまでの3日間、二人は
いろんなことを話した。
自分のこと、家族のこと、友だちのこと、夢のこと、そして二人のこと。

別に、家出いていくあてがあったわけじゃない。
ただ、家にはいられないと思った。
家出をするには、いろんな理由があったけど、それは話しても
他人(→親もそう)には理解できないことかも知れないね。
家出をするときは、今までの自分に別れを告げるときだから。

家出をしたあとで何が変わっただろうか?
何がよくて何が悪いかという、自分の中に新しい価値観が
生まれたかもしれないね。
家出は、新しい自分を見つける旅と考えればそれもいい。
でも、その価値観の中に、あなたの家出にどれだけ心配した人が
いたかってことは入っているのかな。



【『寒水魚』ほかに収録】

(初稿 2000.11.26)



この空を飛べたら  みゆきトップ      やさしい女