わたしが初めて手に入れた中島みゆきアルバム(→ダビングテープ)は、 『生きていてもいいですか』(;^_^A アセアセ でも、意外とそういう人は多いみたいだね。 なかなか重い曲が多い、このアルバムの中で、わたしの心が選んだのは、『エレーン』。 4年前、一人の男と出会った。同じ職場の同じ部署に配属された彼。 彼は、背が高く、陽気で、ビールが好きで、マージャンが好きで、剣道が好きな男だった。 大学での専攻が同じで、年齢が一つしか違わないこともあり、彼には親近感を覚えた。 職場の同僚とよく飲みに行く中で、彼が転職して今の職に就いたことを聞いた。 彼が以前勤めていたPC関連の企業では、自分の仕事への手応えがなかったようで、 心機一転、転職したんだと。 3歳になったばかりの息子の自慢をいつもしていた彼。 自分が企画したプロジェクトに自信を持っていた彼。 多少、強引なところもあるが、それも彼の個性。楽しい一年だった。 翌年、私は彼とは違う部署になった。違う部署と言っても、同じ職場。毎日のように顔は 合わせていたが、以前のように飲みに行くことも、じっくり話をすることもなくなった。 しばらくして彼が療養休暇をとった。(心が疲れた…)という言葉を残して。 彼が休んで4ヶ月近くたったある夜、私は夢を見た。 「長い間、ご心配をおかけしました。○○○○、今日より戦線に復帰します!」 夢の中で元気よくあいさつをする彼は、以前の彼だった。 (夢の中でも、ほっとするんだな…)と不思議な感覚になった夜だった。 彼が死んだという連絡を受けたのは、その2日後のことだ。 4ヶ月もの間、自分の心と向き合い、対話してきた彼。 療養が終わり、来週から職場に復帰すると言っていた矢先のことだった。 自分で自分の命の火を吹き消すことを選んだ彼。 地面に落ちるまでの、わずか数秒の中で、彼は何を思ったのだろうか? 冷たくなった彼のズボンのポケットには、連絡先のメモが一枚あったという。 それは、妻と息子の待つ自分の家でなく、自分の実家の住所だった。 それが最後の彼の優しさだったのだろうか。 妻のお腹には、彼の心を受け継ぐ、新しい命が宿っていたのだから。 通夜の席に、職場のロッカーに置いたままだった彼の剣道防具を持っていった。 兄弟のいない彼。一人息子の形見を見て、これ以上ないほど取り乱してしまった彼の母。 通夜で見た彼の息子は、無邪気に彼の棺をのぞき込んでは、動かない父を、不思議そうに 見つめていた。涙が止まらないって、こんな夜のことを言うんだろうね。 わたしたちは、彼に何もしてやれなかった。 でも、本当に何もしてやれなかったのだろうか? もしかしたら、何もしようとしなかっただけではないのだろうか? |