8話:闇を纏う男
まだ早朝。
森に囲まれているラルドエードは朝霧に包まれていてまだ、人の気配がほとんどしない。
もう少ししたら起き出して街が動き始めるだろう。
あたし達は街には向かわず、王城の後ろにある森の中へと入っていく。
「シュウ、どこまで行くの?」
「もう少し歩きます」
そう言ってシュウは黙り込む。
「ゼン、聞いてる?」
「いや、オレも全然聞いてない…」
眠そうな声でゼンは答える。
動いているのはシュウの意志?
どのくらい歩いたのだろうか、背後の王城は木々の間から見つけるのがやっとと言うぐらい離れた距離でシュウは立ち止まった。
「ココは……そのままでしたか……」
その場を見ながらシュウは呟く。
サークル状に黒ずんだ地面。
「近づくのはおよしなさい。それはエルフ神族ですら触れられないものですから」
あたしが近寄ろうとするのをシュウは止める。
「ここは何?」
その周囲は緑の生い茂っている場所だというのに。
その場所だけ生き物の気配がしない。
「私は、この場を浄化させるために来ました。あの時の私にはその余裕がなかった」
「オレは、お前が来るとは思わなかったけどよ」
そのサークルのすぐ側に黒で身を包んだ男の人が現われた。
その人から感じるのは潜在的な畏れ?
エメラルドグリーンの瞳がヤケに印象に残る。
「冥府王ダーウィン……」
シュウがそう呟く。
「忘れていると思っていたけどな」
「まさか、協力者の事を忘れるわけは無いでしょう?」
協力者?
冥府王ダーウィンって……。
「初めまして、シェリー・ヒルカライト嬢。オレは冥府を統べる王、アシュレイ・ゼブル・ダーウィン……この世で言うならば冥府王ダーウィンという方が通じるかな?」
冥府王……あの世の神……。
「なんで、知り合いなの?」
あたしの言葉にダーウィンは不適に微笑んでいる。
「『協力者』だから。彼はオレに協力を求め、オレはそれに答えた。ただそれだけ。それ以上をキミは知りたい?」
冥府王ダーウィンは静かな笑みを湛えたまま、言う。
ダーウィンから聞いて良いの?
でもあたしはシュウが教えてくれるのを待ちたい。
だから、あたしはシュウの方に顔を向けた。
その表情はいつもと変わらない。
「シュウ…」
あたしはシュウの名前を呼ぶ。
少しの沈黙の後、彼は静かに語り始めた。
「私は…今はない王国に住んでいました。さほどその国に愛着があるわけでもなく、だからといって出て行くわけでもなく、まるでソレが当然のようにその国を守る騎士となりました…」
今はない王国。
ドコの事だろう。
国は興りそして滅ぶ。
あたし達が育ったファーレンも昔は国だったという。
今はその面影はなく、ただ名前だけが残るだけ、だけど。
「その国は、『世界の礎』の1つでした」
世界の礎?
「この世界にはかつてそう呼ばれていた場所が数カ所合った。キミが住んでいたファーレンもその一つ。ハーシャやトゥルーラ、ハイリア……他にも数国、かつての国、…今は滅びた国…が礎となっていた」
ハーシャが滅んだ国って……今もハーシャはあるよね。
「元々ハーシャはレナウルス大陸の下半分を治めていました。今はかつてハーシャの首都であったシャナ周辺の都市国家です。既に過去の国としてのハーシャではなく、魔法協会を守るためだけに存在する魔法騎士団という姿のみです」
「しかも、純正な魔法剣技を使えるのは……ゴルドバのロシュオール・ダルハートだけなんだぜ」
ゼンがシュウの言葉を受けて言う。
「魔法協会本部は今はシスアードにその拠を移している。仕方ないけどね、あの場所に礎は存在しないから」
礎は存在しない。
…礎がどういうモノだか分からないけれど、無いと問題なんじゃ……。
「心配することはないんだよ。今は全てゴルドバに集約されているから。ゴルドバの巫女ミアと従騎士が永遠の命を持つのは礎を守るためでもある」
礎を守るために……。
でもなんで礎はゴルドバに集約されたの?
「シオドニール・シュバイクがいた国は、世界の礎の1つだった。その国の滅びが決まったときに、礎は、消えた。礎はその国の守り、世界の守り。これ以上は、……言わなくても関係のないことかな?」
ダーウィンはそう言う。
「私は、私が住む国が滅ぶなど思いもしませんでした。国は悪くなかったし、平和だった。1つ……問題はありましたが」
「問題?」
「そう、問題です。世界の礎と呼ばれる国には必ずソレを支える…という言い方が無難でしょうか……、巫女がいました。巫女は礎を見守り国の祭事を執り行う。ところが、その国には巫女が不在だった。巫女となるべき人物を誰も擁立しなかった。……王が認めなかったのです」
「礎を守る…支える巫女がいなかったら、礎はなくなっちゃうんじゃないの?」
「その通りです。だから、国が滅んだ。国は礎を守り、礎は国を守る。ソレが世界を守ることにつながっていく。ですが、王はその為の巫女を選ぶことをしなかったのです。巫女は永久のモノではなく、そしてとりわけ神聖なものでなくてはならないわけでもなかった。ただ、礎を支える能力が必要なだけです。ほぼ形だけに近かった。それでも、王は巫女という存在を拒んだ。……理由は分かりません。私には知る術が無く、そして必要のないことだった。私にあったのはただ国が滅んだという事実だけです」
そう淡々と感情を入れず、シュウは話す。
「王が巫女を拒んだ理由をオレは知っている」
唐突に、ダーウィンは言う。
「死を左右するあなたが、知っていてもおかしくない。だが、何故?」
「個人的な興味といっておこうかな」
シュウの疑問にダーウィンは笑顔を見せて答える。
個人的な興味って何だろう。
「…ふぅ…、話を続けます。私が気がついたときには、人は全て息絶えていました。私も瀕死の状態。その時に分かったことは国が滅んだということです。巫女と礎の守りが無くなり、攻め滅ぼされたということです」
攻め滅ぼされた?
誰に?
シュウはあたしの疑問には答えずに話を進めていく。
「圧倒的な力は他人を恐怖に陥れます。同時に、困ったことに魅了する事もあるのです。私が抱いたのはそれだけではありませんでした。国が滅んだことに対するやり場のない思い。それらは負の感情を引き起こしました。恨みや、怒りです。彼を滅ぼす、ソレは私の中で使命となりました。国を滅ぼした彼を私が滅ぼす。その為なら何をやっても構わない。大義名分に似ているかも知れません。そして…私はたとえ自分の身に何が起こっても構わないと思いました」
シュウの独白は朝の森に静かに響いている。
「どうすれば良いのか最初は見当もつきませんでした。その為に、国の魔法に関する蔵書をあさりました。幸いなことにその場所は比較的無事だったのです。まずは自分に魔力を付けること……。国は魔法に関する蔵書は他国を圧倒していました。魔法国家であったハーシャですらもです」
その国ってドコにあったんだろう。
大量の魔法本ってちょっと気になる。
「私は大量の蔵書のなかから1つの本にたどり着きました。手段としてもっとも的確であろう……という本です。それが……死神の召喚」
死神の召喚?
そんなこと無茶苦茶な事、出来るの?
あたしも死神のカードとか持ってるし、死を直接与えることの出来る呪文知ってるけど。
死神の召喚なんて聞いたことない。
………普通、向こうから勝手にやってくるような………。
「無茶苦茶なこと。確かにその通りです。当時の私はだからこそ単純に考えたのです。彼のモノに滅びを与える事の出来る物は何かと。無茶苦茶ですが理論上は正しい。何者も死から逃れることができません。永遠の命を持つモノなどいないのです」
「ゴルドバの3人でさえそう。彼等はその使命が終わるとき、その生涯を終える……」
死は誰の上にもやってくる。
「永遠の命を望む者はいつの世でもいる。だがそれは愚かな事でしかない。終わりの来ない苦痛がどれほどのモノか彼等は知らないのだから」
まるでソレを知っているかのようにダーウィンは呟く。
「そして、私は、死神を呼ぶ方法を見つけました」
シュウが話を戻す。
「でもそんな方法ってあるの?」
死神って神様だよね……。
神様を召喚することって出来るの?
そんな方法無いような気がする。
召喚士が呼び出すのは精霊から神獣限定って聞いたことある(召喚術で召喚が出来るのは星霊界住人である、精霊、聖獣、神獣、神龍。神龍も召喚及び、契約可能。妖精も住人だが除外されているのは彼等が他のに比べてその力が弱いため、召喚術として成立しないため)。
「召喚士が召喚術を得ることが出来るのは方法が確立されているからです。その方法さえ分かれば神龍も召喚可能なのです。死神も同じです。召喚の方法さえ分かれば呼び出すことはできるのですよ」
シュウは一息いれて再び話し始める。
「私はがむしゃらに試しました。本職の魔法使いでもない私が何かにとりつかれたように。そうして試したモノの1つでルーザと言う名の死神を呼ぶ事に成功しました。……成功したと言うよりも、向こうが私を…私のようなモノを探していたと言った方が正しいでしょう」
そう言ってシュウはダーウィンに目を向ける。
「ダーウィンが、関係しているのか?」
ゼンの問いにダーウィンがうなずく。
「オレは、直接手を下せない。ルーザも同様。だから手を貸せる人間が……手を下せる人間と言った方が正しいだろう。そんな人間が欲しかった。それなりに知識があり、自分がそのものに対して、利用できる人間だと言うことを示すことの出来る力の持ち主。ルーザを呼ぶことが出来たシオドニール・シュバイクにオレはその知識と魔力を確認した。彼の望みを聞き、オレと利害が一致することを確認した。それはたった1つ。とあるモノの消滅」
とあるもの消滅………。
それが……。
「今、ダーウィンが言ったように、彼は直接手を下すことは出来ません。死神が人の生き死にを勝手に変えることは出来ない。だから私は、その人物を瀕死の状態にまで追い込み、彼に引き渡した……」
「そして、その人物を消滅させるために、その人物の力を彼に移動させる」
ダーウィンがシュウの言葉を引き継ぐ。
「この地は……」
最後まで言わなくても分かった。
この草木が生えない一角で、シュウは魔王ゼオドニールの力を手に入れた。
魔王ゼオドニール・ピエヌ・シャハガール。
魔族を率いて世界の多数の国々を滅ぼした魔王。
エルフ神族と神魔戦争を起こした魔王。
強大な魔力の持ち主で常に身には魔法結界を張っていたという。
「どうやって瀕死の状態にまで追い込んだんだろう……」
そう聞こうとして1つの事を思い出した。
エルフ神族の神娘の魔法無力化。
「シュウ、お前がクリシュナの力を知っていたのは……」
ゼンも同じ事を思ったみたいでシュウに問い掛ける。
「そうです……。神魔戦争の時、魔王ゼオドニールは神娘を人質に取りました。私が勧めた事です……。全ての魔力の無効化。あなた方も見たとおり、下手に動くことが出来ないあの状況と同じ状況を作り出しました。ですが唯一の打開策がある。その唯一の打開策を告げずに」
人質に取られる神娘。
神娘を救い魔王に躍りかかる守護聖騎士。
そして瀕死の状態に陥る魔王。
状況が見えるようだった。
「昨日、言うことが出来なかったことについては謝ることしか出来ません。クゼルも近くにいたことですし。これ以上、禍根を残したくはなかったので。ですが、神娘を人質に取ったことは後悔はしていません。そうでなくては魔王ゼオドニールは滅ぼすことが出来なかった」
そう言ってシュウはその草木も生えない一角に向かう。
「力を得た私は世界中を放浪しました…。そして再びココに戻ってきた。コレを浄化させるのは私の使命なのでしょう」
そう言ってシュウは隠し持っていた小瓶の中にある液体(水?)を振りまく。
「シェリー、周囲に結界をお願いします。この国の誰にも知られたくはありません」
「ならば、その役目はオレがやろう、シオドニール・シュバイク。それくらいしか出来ないから」
そう言ってダーウィンはその一角とあたし達の周囲に結界を張る。
「ありがとうございます。冥府王ダーウィン、礼を言わせていただきますよ。シェリー、光の呪文、あると思うのですが」
シュウはあたしの方を見て言う。
カードで光の呪文と言えば、やっぱり太陽かな?
「あるけど。太陽のカードで問題ない?」
「十分です。その力を、この地に使ってください」
シュウの言葉にうなずきあたしはカードを取り出し一角に向けて呪文を唱える。
「no.19、その名は太陽。生命の導き、命の光よ。失われし命を救え」
「穢れしこの地に女神の祝福を。リヒト・レイグノウス・シュウェルティンフェヌル・フリュディン・ヴェイ・ヌル・ヒア」
シュウはあたしの動きを見ながら呪文を唱える。
あたしの呪文が終わり文字通りの太陽のカードから光が現われその場所を照らす。
シュウの呪文が終わるとその光から火が現れ燃え始める。
光の炎はその草木が生えない荒れた場所から穢れを焼いていく。
その様子をあたし達はじっと見つめていた。
そして穢れがはぎ取っていく様な炎はやがて静かに鎮火していった。
「消えちゃった……」
「浄化されたんですよ……。このラルドエードにはあまり来たくありませんでしたが……この心残りを解消出来たのですから……良かったのかもしれませんね」
完全に火が消えたそこに立ってシュウは言う。
「そう言えば、シオドニール・シュバイク。力を貸そうか?」
不意にダーウィンが言う。
力を貸そうかって何だろう……まだ何かあるのかな。
「お断りします。この先はあなたに直接、関係の無いこと。あなたが手を下せることは皆無に等しい……」
「まぁ……押しつけたのは……オレじゃないけどな。まだ『見てない』様だし、お前の裁量に任せるよ」
そう言ってダーウィンは消える。
どういう事?って聞いてもシュウは教えてくれそうにない気がした。
シュウはただ森を走る風に身を任せている、そんな感じだった。
『Ne pas oublier que j'avais ete』
遠くから歌が聞こえる。
なんて言っているかは分からないけれど、切ないメロディーが聞こえてくる。
透明感のある高い声。
その声と、歌は周囲を包み込んでいくような気がした。
「シェリー、戻りましょうか?」
あたしの方を見て言うシュウにあたしはうなずいた。
そしてあたしより先に歩き出す。
先に歩く姿を見てどうしてもあたしは声を掛けずにはいられない。
「シュウ、ゼン。あたしは何があってもずっと側にいるから」
「急に…」
「どうしたんだよ」
「ただ、言いたくなったんだよ……」
風に吹かれているシュウを見て、あたしは彼の孤独を感じてしまった。
魔王ゼオドニールを吸収してから(神聖アルゴル暦934年)から表の歴史に出てくるのはそれから300年後…。
そして再び消えて…、それからまた200年の後の今。
シュウはゼンの中に入るまでずっと放浪していたという。
そんなこと言えば
「余計なお世話っていうんですよ」
なんて言われそうだけど。
「シェリー」
「何?」
呼びかけに答えた瞬間、あたしは抱き寄せられた。
「ありがとうございます……」
「シェリー、サンキュ」
二人のシュウとゼンの声が響く。
「あたしはちゃんと側にいるから…大丈夫だよ」
「分かってる」
二人の声が重なった気がした。
「Ne pas oublier que j'avais ete J'ai du oublier, mais je peux pas
S'il vous plait juste vous dire Je t'aime Mais je ne vais pas changer lorsque le changement」
エルフの森を1つの歌声が埋める。
まだ戻ろうともせずにあたし達はそこに歌が終わるまでたたずんでいた。
1日のんびり観光や買い物して次の日のこと。
エディやクリシュナの見送りであたし達はアトゥマクルの港に戻ってきた。
「……済みません。ボクには父を止めることが出来ませんっっ」
本当に申し訳なさそうにエディは言う。
「……いや、エディが悪い訳じゃないし……」
ディルがそうエディに言う。
顔を引きつらせながら、背後にあるモノにため息をつく。
アトゥマクルの港に戻ってきたあたし達を待ち受けていたのはエルフ王国国王専属お船………。
クゼル様はコレを引っ張り出してあたし達を待っていたのだ。
「一旦…シスアードに戻ろうかなって思ってたんだけどな」
ディルがぼそっと呟く。
「そう言えば、ディルさんとヒリカさんはシスアードの方だったんですよね」
「あ…まぁな」
そうエディの言葉にディルは曖昧に返事する。
昨日の夜、次の目的地に関してクゼル様を抜かして5人で話し合ったのだ。
そこで2つの問題が発覚と再認識!!
一個はあたしとゼンとシュウが追われていること。
追うように依頼したのはゼンのお父さんで、受けたのはシスアードの協会。
シスアードの領主(シスアードは商業都市)に会ってその一件についてどうするか相談すると言うことになった。
そしてもう一つ、旅券に関すること。
ファーレンからゴルドバ、シスアードに関しては旅券は必要ないけれど、それ以外の場所に行く場合、本来ならば旅券が必要なのだ。
あたし達は陸路で初め行くつもりだったから……というか、まさかラルドエードまでやってくるとは思ってもいなかったから旅券なんて持ってないし。
ソレを取得するためにもシスアードに行こうって言うことになったんだけど……。
丁度、アトゥマクルの港から出ている船はシスアード行きだし。
けれどまさか、クゼル様が、船を出して待ちかまえているなんて思いも寄らなかったけど。
クゼル様は意気揚々となんだか楽しそうだけど!!
「王は……今まで堂々と出掛けていたわけではないから…嬉しいのだろう」
なんてエディ達と一緒に見送りに来てくださっていたハイファ様が仰る。
「我々エルフ神族は長い時を生きる……。クゼルは自らが望んで王になった方ではない。それが故に1つの所にとどまれないかもしれない……。迷惑だろうが、王の事1つよろしく頼みたい」
そうハイファ様は困ったようにでも本当にクゼル様を思っているのかあたしに向けて仰る。
ハイファ様にそう言われたら……嫌だなんて言えなくなっちゃうよ…。
「分かりました……。ついでになるべく、早くラルドエードに戻るように説得します!!」
コレが一番の恩返し!!
きっとそう!!!
「頼む」
ハイファ様の言葉にあたしは力いっぱいうなずいた。
「皆さん。コレを」
そう言ってエディから全員短剣を渡される。
「コレは…まさか…」
そう言って鞘から抜いたディルが驚いた。
「こ、これってエルヴィンダガーじゃねぇか!!!」
「ほ、ホントだ!!この柄の装飾、この刃の輝き…、エルヴィンダガー…」
「へぇ、コレがエルヴィンダガー……」
ビックリしてるあたし以外の3人。
エルヴィンダガーはエルフしか持ってない短剣なので非常に珍しいものだったりするんだけど。
あたしはクゼル様が持ってたからあんまり珍しいと思えないんだよねぇ。
「人にとっては貴重かもしれませんが、エルフにとってはさほど珍しい物ではありません。国外にでるエルフの為にあつらえる、お守りのような物です」
だからエルフしか持ってないってわけか…。
「さて、行くか」
ディルの言葉にうなずきあたし達は船に乗り込む。
「皆様の行く先に幸運があることをお祈りしてます」
クリシュナの言葉で船が動き出す。
「さて、目的地はとりあえず……」
「クゼル王、とりあえず、シスアードで!!!!」
クゼル様に勝手に決められる前にディルが言う。
「そうか?まぁ確かに他の国に向かうにしてもシスアードに向かわなくては話にならないからな」
というわけでとりあえず、シスアードに行くことになりました。
シスアードに行ったらどうしようかな。
ディルやヒリカが見たいって言う赤のルビーでも見てみたいな。
あと何だろう。
「とりあえずはシスアードに着いてからって所だな」
「うん」
ゼンの言葉にうなずく。
船は風を受けてまっすぐにシスアードに向かっていた。