世界は、終焉を迎えた。
それは彼にとっての終焉で、彼女にとっての世界はこれからも続く。
星の願い。
それはこれからも変わらない。
*******
風が吹く。
気がつけば体中が痛くて上を見上げればガイが心配そうにでもほっとしたようにあたしを見つめていた。
「千瀬、気がついたな」
「ガイ、……大丈夫?」
そう聞けば、ガイは苦笑する。
「それは、オレの台詞。どこか痛くないか?」
「痛いけど……それは倒れたせいだと思う。ガイは、どこか怪我してないの?大丈夫?」
「オレは大丈夫。オレよりも目覚めなかった千瀬の方が心配だったから」
そう、ガイはあたしの頬に手を当てる。
「心配してくれてありがとう。それより、他のみんなは?」
と聞けば、ガイは少し考えて
『こっちは全員発見したよ。早く戻っておいで』
って邪魔するようにウィルさんからテレパスが入ってきた。
「ウィル……」
「は〜い」
ガイを通じてウィルさんにテレパスを送る。
PSIは使えるようになったけど、テレパスはまだ難しいみたいで、あたしってば中途半端だなぁなんて思ってみたり。
「ココはどこ?」
「それほど、離れてないよ」
とあたしが起きあがるのを手伝ってくれながらガイは答える。
見渡せば、確かにそれほど離れてない。
でも、乗ってきたイスアが見あたらないって事は…、結構イスアから離れてるのかな?
「イスアの逆方向って感じかな?」
そっか。
少し歩けばすぐに見つかると言うことであたし達はイスアに歩いて戻ることにした。
「これで、全部…終わったんだよね」
「あぁ…」
爆発の影響ですり鉢状になっているその場所を横目で見ながらあたし達はイスアを見つける。
「デュークは、結局何を欲しかったのかな?」
「さぁ……オレには分からないな…」
あたしの質問にガイは軽く流す。
あたしも別に答えが欲しかった訳じゃなかった。
だから、それだけで良かった。
「休暇を言い渡すよ」
あれから数日後。
なれない事務処理に追われていたいたあたしと淡々とこなしているガイに、ウィルさんから呼び出しが入った。
で、部屋に入って開口一番聞かされた言葉がこれ。
「忘れたかしら?この一件が終わったら休暇あげるって。1週間は難しいけど、3日ぐらいならお姉さんの所にも行けるでしょう?」
とクェスさん。
お姉さんって誰だろうって思っていれば
「僕の姉さん。まぁつまりガイの母親って事だね」
とウィルさんが教えてくれる。
そ、そうか。
ウィルさんはガイの叔父さんだもんね。
うっかり忘れてたし、気がつかなかったよ。
「お姉さんが住んでいる所はパルマでも有名な温泉地なのよ。のんびりしてくると良いわ。その後はあたし達ね」
と茶目っ気たっぷりにクェスさんは言葉を付け加える。
当然だけど、そっちが本命だと思う。
クェスさんが休みたいから、あたし達に休暇を出したんだわ……。
でも、まぁ、当たり前なんだよね?
「じゃあ、おみやげ買ってこいなんて言われなくても済むな」
「ひどい、一緒に住む者におみやげがないなんて。心遣いが為ってないと思わない?」
まぁ、その通りだとは思いますけど……。
どうせ、その後行くって言う人におみやげなんて買いたくないっていうガイの気持ちが分かるなぁ…なんだか。
「まぁ、ともかく行っておいで。ガイ、千瀬ちゃんを姉さんに紹介するんだろう?」
「ウィルっっ!!!」
紹介?!
ガイのお母さんにあたし紹介されちゃうの??
あ、挨拶しなくちゃならないんだ〜〜。
ど、どうしよう……。
「念のため、シュレストに乗って。呼び出すかも知れないから」
「呼び出されないことを祈るよ。千瀬、行くぞ」
ガイに手を引かれてあたし達は部屋を出る。
って言うか、ど、どうしよう。
ガイのお母さんに挨拶なんて、なんて言ったらいいんだ??
「千瀬、緊張する必要なんてないよ。母さんは気さくな人だから。なれなれしいって言ってもも良いかもしれないけれど」
け、けどさぁ。
「大丈夫、心配しないで。さっさと向かう」
りょ、了解。
シュレストに乗って、ガイの実家があるラース地方に向かう。
眼下に広がるパルマの眺めを改めて見て、なんだかじーんと胸が熱くなってしまった。
「ガイ、あたしね。ガイにあえて良かったって思うよ」
「千瀬……」
「何でだろうね、すごく今言いたくなった。ありがとうって」
それが、なんだか相応しい気がする。
ありがとう、見つけてくれて、ありがとう、探してくれて。
「ガイ、約束して」
見つめながらあたしは言う。
「ずっとあたしの側にいて。離れないで、側にいて」
ライアも、フレアも願ったこと。
単純で他愛もないけれど、一番大切なんだと思う。
「側にいてくれれば、絶対あたし大丈夫だと思うんだ」
うん、これから先も、この先も。
未来も、全部。
「千瀬……」
ガイがあたしの手を取る。
「約束する」
そう言いながらあたしの手に唇を落とす。
「が、ガイっっ」
「約束する。いつでも、側にいるから」
そう言ってガイはあたしを抱き寄せる。
思ったけど、これも二人だけの約束っていう奴なのかな?
なんて聞いてみれば
「奴じゃなくってそのものじゃないか」
なんて少し剥れた感じでガイが答えるからなんだかおかしくなってしまった。
きっと何度でも繰り返すんだろう。
こうやって二人だけで約束を。
この先も、これからも、未来でも。