星の夢。
それは星の願いと同意だという。
星の夢。
それは他愛のない願いの夢。
夢は叶ったんだろう………。
『彼』は『彼女=あたし』を捜して地球まで来た。
まさか、シルビアもフラッシャーもフレアやライアを捜すために24光年も離れた地球にまで探しに来るとは思いもよらなかったと思う。
「目が、醒めたのか?」
…………………?!
えっと、今、男の人の声が聞こえたような気がする……。
えっと、昨日はラミア星のプリマス支部に泊ることになって……。
そうそうアルスさんの手料理をいただくことになって……。
レイナやカーツの話じゃエルナさんは大の料理下手。
どうあがいても炭?!(それは言い過ぎだと思う)にしかならないからいつもアルスさんが作ってるって言う。
なかなかおいしくってびっくり。
アルゴル太陽系に来て驚いたのは地球とあまり食文化が変わらないって所よね。
その食べ物の名称は違うけど。
中身は一緒。
アルスさんが得意な料理は中華(ちなみにアルゴル太陽系では『シュヌマ』と言うらしい。っていうか古語?)料理で、青椒牛肉絲とか酢豚とか蟹玉スープとか出てきたときは驚いた。
で、普通においしい。
アルスさんって料理上手よね。
って理奈と一緒に言ってた。
アルゴル太陽系に来て時間はたったけど、衣食住があまり変わらないのは良いことだよね。
季節も日本と変わらず快適快適(それは首都[プリマス支部がある場所]圏内だけみたいだけど)。
アルゴル太陽系に来て、一番びっくりしたのはやっぱり空飛ぶ車と空飛ぶ船……よね。
地球は空飛ぶ車はおろか空飛ぶ船だってないんだもん……。
飛行機とはまた違った快適空間が空飛ぶ船……。
あと言葉。
ある固有の単語は言葉が変わるんだけど、他はあまり日本語と変わらない。
便利で楽で良いんだけど。
逆に突然聞いたことのない言葉とか単語が出てきたりすると戸惑うんだよねぇ……。
で、その後猛烈な睡魔に襲われたんだっけ……。
なんか立ってらんないぐらいの眠気。
その場で倒れるかと思ったけど……今は平気だからそんなことないのかな?
「まだ、寝てるのか?」
……声がするけど聞こえないふり。
「千瀬?」
だから、耳元で話すのはやめて欲しいなぁ……。
「狸寝入りって言うんだろう?千瀬達の言葉で」
だぁ、もうばれてるしぃっっ。
「ガイ、っ女の子の部屋に入るなって言われなかった?」
目を開ければそこにはガイの顔。
あぁ、もう近いってばぁっっ。
「俺はあんまりにも起きてこない千瀬を起こしに来ただけだよ?」
だからって、部屋に入って人の寝顔をのぞき込むのやめて欲しい。
「千瀬の顔見てると飽きないからな」
飽きないってなにそれ〜〜〜。
く、口説き文句みたいでなんだかやだ。
「口説き文句って……。俺の素直な感想なんだが………」
す、素直な感想って……。
ガイってこういう人だったの?!
なんか、この状況から逃げるには起きる以外にないよね。
起きようっっ。
「あ、ルイセおはよう」
着替えて顔を洗ってガイから逃げるようにして食堂に来ればエルナさんがあたしを迎えてくれた。
「PSIを使うと気がゆるんだら一気に眠くなるけど、なれたら大丈夫なるから気にしないで」
とエルナさん。
……眠くなった後の記憶がないって事は…。
「もしかして倒れました?」
「うん、ガイが支えてたけどね」
と何の悪意もなく教えてくれる。
………気付いたらベッドって言うのがあること初めて知りました………。
って言うか、あたしパジャマに着替えてたよねぇ……。
ね、寝間着は……誰が着せてくれたって言うんだろうか……。
「あぁ、寝間着はね私が交換したんだよ」
うわぁ、直接の上司ではないにしろ、上司っていう立場にあるエルナさんに着替えさせていただくなんて………。
「あ、ありがとうござましたっっ」
頭90℃に曲げて体育会系っていうか応援団ののりで礼を言ったら、エルナさんが逆に驚いてたんだけど。
まぁ、何はともあれガイじゃなくって良かったよね。
「なんだか今回は何から何までお世話になっちゃった気がします……」
ちなみに、理奈達はもう戻ったと言う。
あんまり理奈と話出来なかったな……。
「お世話なんて気にしなくてもいいよ。任務をティラナだけに任せちゃったなぁって言うお詫びっていうか?そんな感じ?」
とご飯を食べながらエルナさんは言う。
エルナさんはホントにご飯、炊いた白米を食べている。
典型的な日本食。
ちなみにあたしも日本食を頂かせていただいている。
久しぶりの日本食だ。
日本食もあるんだって知ったのはラミア星に来てからだって事だけど。
ラミア星の特有の文化なのかなぁ?
「ん〜でも困ったねぇ」
「え?何がですか?」
「そうそう、敬語じゃなくてもいいよ?ため口全然気にしないから」
無邪気と言う言葉がホントに似合うエルナさん。
さすがに……一応年上らしいんだけど、上司なんだよね。
「ともかく、何が困ったんですか?」
「天塔の八姉妹の四人とやり合ったんだよね」
その言葉にあたしは頷く。
あれは、やり合ったというんだろうか……。
彼女たちの攻撃を跳ね返しただけども言えるような……。
「残りの四人もどこかにいるはずなんだよね……そうすると」
そう言えば……そうだ。
考えても居なかったけれど。
残りの四人もどこかにいる……。
「レイナの話じゃ、あそこに来たのはつい最近っぽいし……。もしかすると、あたし達っていうかルイセとガイ?の行動?が天塔の八姉妹にばれてるのかも〜〜〜」
………なんでこの人なんかじょしこーせーって感じがするんだろう。
年上だよねぇ……。
あたしの方が女子高生なんだけどっっ。
「ん〜〜〜強烈なぁ、ESP察知が〜〜あるのかもぉ〜〜?アルス〜どう思う?」
「へ………。……エルナ……の考えてる…?通りじゃないのか?」
「聞いてなかったでしょう、人の話っっ」
「だったら、俺の顔を見たとたんに話を振るなっっ」
「だってぇ〜アルスなら〜?答えてくれるかなぁって思ったんだもん………。テレパス所持者だし?ESP汎用者でしょう?」
「だからテレパスを安易に信用するなよ……」
「だってぇ〜〜〜」
えっと……なんだか、ものすご〜く取り残された気分になるのは何故?
「エルナ。俺たちはとりあえず、戻ることになった。ウィルに伝えておくことは?」
ガイが食堂にやってきた。
どうやらウィルさんから戻るようにと言われたらしい。
「だったら、天塔の八姉妹がESPまたはPSIによって貴方たちの行動を先読みしているかの可能性について調べてって……。それからもう一つ。バヌア・シェイドの行動。彼がまだ連邦政府のIDを所持しているのなら、彼によってプリマスの予定が漏れているかも知れない。それについて調べてって。もしそうなら、シャルに連絡ね」
今までと一転、エルナさんの口調と態度が変わる。
エルナさんって仕事とプライベートとで性格変えてるのかも……。
ん〜そう言う女性ってちょっとあこがれる。
「了解。千瀬」
ガイがあたしを呼ぶ。
「あ、うん。ご飯食べ終わってからで良い?」
久しぶりの日本食堪能したい……。
「好きにしろ」
あたしの言葉にガイは苦笑いを浮かべた。
ガイの船でもあるシュレストでパルマに戻る事になった。
元々、この船でラミア星まで来たんだよね。
「何か、良いことでもあったのか?」
「何が?」
唐突にガイが聞いてくる。
「寝てたとき、笑ってたから……」
……………いつから、居たの?ガイ。
「千瀬が起きる30分ぐらい前……だったかな」
思い出すようにガイは言う。
ちょっとまって、起きる30分前ってあたしまだ熟睡中じゃないの?
それは起こしに来たって言わないと思う!!
寝顔見てたけど良い時間だからついでに起こしてみたって奴じゃないの?
「ガイっっ」
「仕方ないだろう?顔が見たくなったんだから」
だから……普通に自然にそう言うこと言うのやめて欲しい……。
ものすごく照れるんですけどぉ!!!
あぁ、もうっっ。
「夢を見たんだ……」
何の夢よ……。
「アルゴル大戦の頃の夢。シルビアとフレアの約束……」
……もしかして……同じ夢?見てたの……かな……。
「二人だけの約束。三回目の約束は守ったよな……」
そう言ってガイはあたしの方を見てにっこりと微笑む。
た、確かに……守ってくれたのよね……。
「ここはありがとうって言った方が良いのかな?」
なんて考える。
「気にしなくても良いんじゃないのか?」
え?
「同じだけど違うもの…。だろう?俺が千瀬が居る星に行ったのは俺とESPが合う人間が千瀬しか居ないことを知ったからだ…。迎えに『フレアを捜して迎えに行った訳じゃない』俺は『千瀬を捜して迎えにいった』んだから……」
それは、へりくつな気がするけど……。
でもそう言われるとすごく嬉しい。
「だったらやっぱりありがとうかな?」
「どうして?」
「捜してくれて、あたしを見つけてくれてありがとう。って誰でもないあたしのこと」
だから嬉しいんだと思う。
「……参った……」
何が?参ったの?
「こっちのこと」
そう言ってガイはあたしの頬に手を当てる。
「が、ガイ?」
「だからこういう事だよ」
そう言ってガイはあたしの唇にキスをする。
優しいキス。
前と同じ……。
ってキス二回目ですよ。
いわゆるセカンドキスって奴?
「ウィルが、うるさいから…少しスピードあげるぞ?」
唇を離した後ガイは計器をいじりながら言う。
声は冷静だけど、顔や耳は赤い。
ファーストキスの時……。
そう言えばその時、支部の方に戻った後にさんざんからかわれたんだよね……。
「このまま戻ったらまたからかわれるよ」
なんて言おうと思ったけど、あたしも真っ赤だからガイのこと言えなかったりする。