Destiny Third

彼女達が望むコト
27・UMA
「いや〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
 叫び声がその古びた建物内に響き渡る。
 廃墟になっている建物の調査に来たのは良いけれど(いや、廃墟に調査ってよくないって)。
 何、この化け物!!!
 ゾンビー!!
 ねぇ、ここってSFじゃなかったの〜〜。
 何でいきなりファンタジー!!!
「SFもファンタジーも同じ分類には属してるんだよね。正確に言えば、ファンタジーという分類の中にSFっていうのがあって〜。ルイセが言ってるのはどっちの意味かな」
 一緒に走ってるカーツがそう笑顔で聞いてくる。
 笑顔かどうかは分かんないよ。
 走るのに精一杯なんだから!!!
「カーツ、冷静に分析してないでよ!!!」
「ハハハハハ」
 レイナの怒りにカーツは笑ってかわす。
 …カーツがウィルさんと同等に食えない人って言うのがよく分かる。
 って言うか、今そんなこと考える余裕ないんだった。
「千瀬〜、レイナ〜二人ともサイキッカーでしょう?何とかしてよぉ」
 な、何とかしてって言われたって、理奈……。
「マリーチもっサイキッカーよ」
 レイナ、案外、冷静だよね……。
 って言うか、ホントに何とかしないとならないわけで。
 案外足の速いゾンビーー!!
 いや〜〜〜〜〜〜〜。
 ってあたしサイキッカーなんだから攻撃するべきなんだけど……って攻撃ってどうやんのぉ〜〜。
「レイナぁ〜〜ヘルプ〜」
「攻撃PSIは手にイメージを集中させる」
 て、手にイメージ?
「どんなのでも良いわよっ。簡単なのは火の玉とかね。それを手にイメージさせる。サイキックには2種類あるけれど、今はこっちの具現化の方が無難よっっ」
 レイナが言ってる側から彼女の手から火の玉が現れる。
「うっとうしいのよっっ」
 そう叫んでレイナの手から放たれた火の玉はゾンビーーに見事命中。
「すごい、レイナ〜〜、あたしもやってみるっっ」
「うわぁ、サイキッカーってすご〜い」
「千瀬、理奈、二人とも落ち着け」
「はいはい、ガイは冷静に突っ込まない。まぁ、火事にならないように。」
 そう言ったマリーチの手から氷の刃。
 有象無象の燃えてるゾンビーー!の周囲が氷っていく。
「マリーチもサイキッカーだったんだよね」
「理奈、素で忘れてた?」
「まぁね」
 少し、落ち着いた?
 ほっと息を吐いたら燃えかすになったゾンビーー!の後ろから……またゾンビーー!!がぁ。
「マジですか?」
「うそ〜〜〜」
 今度はあたしがやってみるわっっ。
 えっと、手にイメージ!!!
「これでも、食らえ!!!!!!」
 とあたしがイメージしたのは
「ギャアアアアアアア」
 断末魔の叫びと光が同時に発生。
「千瀬、室内で雷禁止〜〜〜」
 こ、焦げ臭いっていうか…………。
 ゾンビーのにおいが漂ってきた…………。
「こ、氷付けにした方が無難だったかもね」
 な、何よ〜最初に燃やしたのレイナじゃない。
「そう言わない。ともかく、このにおいの元をシャットダウンしないとね」
 マリーチの言葉に頷いて3人であたりを氷りづけすることになった。
 というかなんかうまい具合に出来なくてあたしはやれなかったんだけど。
 大量ゾンビーーの気配がなくなったのは良いけれど、やっぱりその場にいるのはどうもということで移動することになった。
 まだ、ココは建物の最上部。
 窓の外からは、空中に浮かぶ島々が見える、ここは不思議な星ラミア星。
 ラミネリウムという鉱物のために島が浮くことがある不思議な星。
 この不思議な鉱物のためかどうかは分からないけれど、ラミア星は古代語で天という意味を持ち、ラミネリウムは祝福の石という意味を持つらしい。
 なぜ、あたし達がこの星に来たかと言うと、ウィルさんが一応一段落は着いたんだから仕事しろって言うから(なんか、未確認のモノがいるって報告があったらしく……絶対ゾンビーーだよ)、エルナさんがあたしの事気に入ったかどうかは分からないんだけど、この星の廃墟を調べろって言い出して、理奈達も行っていいとかカーラさんが言い出して…。
 で、その星のプリマスが同行するのは必須だからレイナとカーツ。
 計6人でこの廃墟を歩き回ってる。
 巨大ショッピングセンターぐらいの大きさの建物。
 地上3階、地下2階………という規模。
 地上より問題は地下だろうなぁなんて思ってたら……とんでもなかった。
 その建物はものすごーくへんぴな所に建っていて、徒歩はもとより船(イスアはウィルさんが回収。レイナのレニアス)で近くに着陸するのも難しかった。
 でも、屋上から降りれば何とかなったので、あたし達は屋上から内部に入ったんだけど……。
 入った瞬間になぞの生物が登場したのよねぇ……。
 ゾンビーーなんて、ゲームとか映画とかぐらいしか見たことがないわけで
 っていうか、何でゾンビーーが動いてるわけ?
 ここって……そう言うとこ?
「な、なんか……研究所っていうか…びょ、病院みたい……」
 マリーチにぴったりとくっついている理奈が言い出す。
 びょ、病院って。
 普通、こんなへんぴな所に病院があるわけないでしょう?
「びょ、病院じゃないよね」
 病院だと思ったらなんかもう急に怖くなった気がする〜〜。
 病院だったら、ゾンビーーが居てもおかしくないかも〜〜〜。
 ゾンビーーって言うよりもお化け?幽霊?呪われた病院跡???
 怖すぎる……。
「期待に添いたいところだけれどねぇ」
 先頭を行くカーツがのんびりという。
 レイナは意外にもカーツの後ろをぴったりとくっついて歩いている。
 いや、……あたしも人のこと言えないんだけど。
 前から来たら怖いんだよっっ。
 ゾンビーー!!の固まりが。
 ガイとカーツって案外平気そうって思うのはあたしだけ?
「誰も怖くはないって言った記憶はないんだけどな」
 ぼそっと頭上で呟かれる。
 ガイ〜〜、そのぼそって言うのやめてよぉ。
 今は、すごく怖い……。
「カーツ、病院じゃないのよね」
「ん〜〜〜〜医療系研究所?っていうか元大学病院別棟?研究棟」
 ……………今、病院って言った。
 今、カーツ、病院って言ったぁ!!!!!!
「カーツ、お前病院じゃないって言わなかったかぁ?」
「病院じゃないとは言ってないよ。期待に添いたいところだけどとは言ったけれど。まぁ意味としたら病院じゃないという答えに対して病院って答えなくちゃならないってところで……期待には添えないという意味だったんだけど」
「分かりづらい!!!!」
 全員のツッコミにも絶えず、カーツはにこにこと微笑んでる。
 カーツってこんな人だったわけぇ?
「基本的にこういう奴だ」
 ガイの言葉にレイナもマリーチも深く頷いた。
「今回の件に関してカーツは聞いたのよね」
「……ん〜〜………聞いても怒らないかなぁ?」
 あれ?
 ちょっと待って、レイナは聞かなかったの?
 疑問に思って聞いてみれば、
「聞かなかったって言うよりも、私は教えてもらえなかったのよ」
 何故?
「それは、天塔の八姉妹の研究所の一つ。だからだよ」
 は?
 今、なんかいや〜な単語を聞いた気がするんだけど。
「レイナは一応レグルト人だし、大統領の娘だし、天塔の八姉妹と関係がなかったりしないわけでもないし…、まぁ黙っておいた方が面白いだろうなぁって」
「誰がそう言ったのよ!!!」
「いやぁ……ねぇ」
 カーツに詰め寄るレイナに大きくため息をつくガイ。
「ウィルに決まってるだろう、レイナ」
「あたりぃ〜」
 その言葉にあたし達はウィルさんの企みに思いっきりため息をつきざるを得なかった。
「最低ね」
 吐き捨てるようにレイナは言う。
 その言葉を矛先はココにいないウィルさんか、黙ってたカーツか。
 睨んでるんだからレイナはカーツよね。
 あたし達とすればウィルさんだけど。
 あたしの感情的に、何と言っていいか分からないけれど、天塔の八姉妹と会ったら絶対喧嘩ふっかけるって思う。
「まぁ、一応ココの見取り図とか、貰ってきてるし。元々この廃墟は調査対象だったし。それはレイナも知ってるだろう」
「そう言う問題じゃないって分かってるだろう!カーツ・トーナ」
「あぁ、怒ると口調変わるのやめて欲しいなぁ」
「誰のせいだ、誰の!!!!」
 ……レイナの違う一面を、今知ってしまいました。
 こういうの触らぬ神にたたりなしって言うんだと思う。
「で、カーツ。我らが上司様達はなんて言ったんだい?レイナも怒るのはそれからだって遅くはないと思うよ?」
 和やかなにマリーチがその場を収める。
 その言葉にレイナは落ち着いたのは良いけれど。
 あぁ、あたしはさっさとこんな場所から抜け出したい………。
 ゾンビーー!!の次は何が出てくるか正直言えば怖いんだよね……。
「この建物の調査。としか言われてないよ。ただし、天塔の八姉妹がアルゴル大戦時に使用していた研究施設。という注釈付き」
「こういうところの調査はティラナじゃなくてアンクルの役目じゃなかったのか?」
「そうなんだけどね。元々調査申請出してたらしくって、その時は今みたいな状況じゃなかったわけだし。エルナもティラナで問題ないだろうと気楽に調査ランクをティラナにしちゃってたみたい何だよ」
 ………気楽にティラナって………。
 プリマスの仕事はその難易度によってランク付けされてるのね。
 知らなかった。
「変更だって出来たでしょう?」
「ん〜〜〜面倒だからしなかったみたいだね」
「エルナのバカ!!!」
 レイナが今はここにいないエルナさんに向かって悪態をつく。
「まぁ、ともかくココにいても仕方ないから、丁度そこに階段もあることだし、下に降りてみよう」
 マリーチが指さすそこには階段が一つ。
 踊り場までは何もなく、死角になってる方の階段からは生き物らしき声もしない。
「何もいないよね」
 とのぞき込んだ理奈にマリーチは苦笑いを浮かべる。
「まて、降りる前に索敵をかける。うっかり忘れていた。目的は調査。ESP索敵をかけてこの建物内に居る『生き物』を探そう。そうすればさっきみたいにゾンビにあって逃げ回る必要はそれなりになくなるだろう?」
 ガイの言葉に全員頷く。
 大量に何かの気配を感じたらそっちに行かなくていいんだもんね。
 でも、地図とかないんだから目的の場所に行くとき、大量の化物と遭遇したりしないかなぁ……。
 しなければいいけど。
「理奈、カーツ。始めるぞ」
「う、うん」
「了解」
 ガイの言葉に理奈とカーツはESPで索敵を始めた。
『…………!!!!!』
 んっっ!
 何、今の。
 頭がズキンとなった瞬間に見えた映像。
 何の映像だか分かんない。
「……!!!!」
 どこかの場所、どこかの映像。
「……!!!!!」
 見たことのある風景、窓の外からはこの星の特徴の浮いている人工島。
 そして、金髪ととがった耳。
「………彼女は……」
 あぁ、思い出した、彼女は。
「2階には何もない……」
「……1階は…なんだろう。なんか邪魔されてる感じがする……」
「邪魔?残りの地下は」
「地下の場所は?」
「地図あるよ」
「カーツ、さっさと出せ」
「ハハハハ」
 みんながカーツの出した地図をのぞき込む。
 レグルト原種特有(双子の一人)のとがった耳と金色の瞳。
 そして緩やかな長い金の髪。
 その笑顔は少女のようで……。
「ルフィー・シリウスがいる……」
「千瀬?」
 彼女の姿が見えた。
 それに床につく程の長い黒髪に黒い瞳。
「それに、シエル・ルシファ」
 他にも二人いる。
「桜色の人…と藍色の髪に金色の瞳の人……」
 この二人にはあったことない。
「サクラ色……リリィ・イクール。藍色……スピア・エルフィノだわ。彼女たちも天塔の八姉妹」
 レイナがあたしの言葉にそう応える。  ここには天塔の八姉妹の内半分が居る。
「見えるのか?」
「今も見えてるわけじゃないんだけど……見えたって言うか、感じたって言うか……」
 窓があったからそれほど高くなかったから……1階かも……。
 今はでもなんか違う気がする。
「理奈、邪魔されている感じがする1階はどの辺だ?」
 ガイが理奈に聞く。
「丁度、この辺かな?」
 地図で見ればあたし達が居るところとは反対側の所だった。
「この場所は会議室というか講堂だったみたいだね」
 建物の情報を知っているカーツが地図からそれを読み取る。
「ねぇ、さっきみたいなゾンビーー!!!が出てくるのかな」
 何となく不安。
 天塔の八姉妹と対峙しなくちゃって思ってるんだけど、ゾンビーー!!にはご対面したくないなぁ……。
「ともかく、行ってみましょう?」
 レイナの言葉に全員が頷いた。

 というか、なんで化物のオンパレードなのよ。
「って言うか、未確認生物?」
「かわいく言ったって、どうにもならないでしょう!!!!」
 カーツのぶりっこした言い方にレイナがツッコミを入れる。
 このコンビ案外良い感じなんだなぁと思わず思ってしまった。
 そんなことより、未確認生物のオンパレード。
 白い雪男みたいな奴とか、ツチノコみたいな奴とか、変な鳥とか(というかまともに見る余裕ないよ)。
「いやぁ、こんなところで、ノンウィライやユニトロをギャザヌォー見るとは…いやいや」
 って何でそんなにカーツは楽しそうなのよっ。
 っていうか最後のぎゃざぬぉー?って何?
「カーツは、生物学が趣味なの」
 プリマスって多趣味な人多いの?それともそう言う学歴?
「潜入作業が多いから、知識はあればあるほどいい」
 成程、納得したわ。
「あの扉だ」
 かけずり回って、逃げ回って、1階の目的地。
 索敵が出来なかった場所に到達する。
 通路の奥の扉。
 講堂みたいで観音開きの二枚扉。
「連中は追ってこないみたいよ」
 息を整えながら、レイナが言う。
 中に天塔の八姉妹が居る。
 そんな気がする。
「……千瀬、大丈夫か?」
 あたしの後ろを守るようにガイが背後から声をかけてくる。
「それはあたしの台詞だよ」
 振り向いて答えればガイは苦笑いを浮かべる。
「さて、何が待ってるかは開けてみてからのお楽しみっと言うわけで。準備はいいかな?」
 マリーチの言葉にあたし達は頷く。
 重たいのかゆっくりとマリーチは開けていく。
 部屋の中は明るいとも言えないけれどそれほど暗くない。
 入り口から全体がつかめない。
 大学とかの講義室の様になっていて前に行くにつれ下に低くなっていた。
 何もないがらんどうのその部屋。
 でもそれほど広く感じない。
 そして、一番下に天塔の八姉妹が居た。
「……皆様方、お待ちしておりました」
 そう、ルフィー・シリウスが声をかけてくる。
 中にいたのはあたしが感じたとおりルフィー・シリウス、シエル・ルシファ。スピア・エルフィノ、リリィ・イクールの4人だった。
「フラッシャー様、覚醒おめでとうございますわ。私たちを思い出してくださいましたのでしょう?」
 楽しそうにルフィー・シリウスは言う。
 その目は相変わらず笑っていない。
「と言われてますが、覚えてるの?」
 マリーチが首をかしげながらガイに問い掛ける。
「さぁ、あまり興味がなかった……らしい」
「うわぁ、ガイにしては珍しい」
「そう言う問題じゃない」
 カーツの揶揄にガイはばっさりと切り捨てる。
「ならば、思い出さして差し上げますわ。私たちの想い、受け取ってくださいませ」
 く、来るっっ。
 先行思念を感じてあたしはサイコブロックを張り巡らせる。
 テレパスブロックの方が良かったかな?
「テレパスの方が正解だけど…サイコブロックでも問題ない」
 ガイはあたしの側でそう言う。
「お前はオレを守るって言ったけど、そのまま言葉を返すよ、千瀬」
 が、ガイ……。
「そこそこ、ナチュラルに口説かない」
「うーん、ガイが素直になるとこんなに饒舌になるとは思いもよらなかったなぁ」
「うるさいなぁ。余計なお世話だ」
 ………カーツ、マリーチ、ナチュラルに口説かれてるのはあたしなんだからさぁ……。
 照れるんだけど……、ものすごく。
「やはり、ライアがそれを邪魔している」
「シエル姉様。やはりパルマに引き渡すべきだったと思います」
「レムル姉様とピアス姉様に任せたのが不味かったって事かしら?」
「いえ、あの時に、殺すべきだったと、その方が利口ですわ」
 天塔の八姉妹の会話に寒気を感じる。
「強い……悪意。思念っていうの?千瀬、大丈夫?」
 理奈があたしを心配して聞いてくる。
「大丈夫」
 ホントはそんな余裕全然ない。
 でも、ココで隙を見せたら、大事なもの……ガイを………持って行かれそうな気がして。
 気がするんじゃなくって確実な気がした。
「フラッシャー様の側にいる限りライアは邪魔なのですもの。あの女が居るから、フラッシャー様は私たちの物にならないのですわ」
 そうにっこりとルフィー・シリウス微笑む。
「フラッシャー様、お慕いしておりますわ」
「オレは、覚えていない」
「そんなはずはない。あなたは覚えているはずだ。アルゴル大戦の頃を」
 シエル・ルシファがそう言う。
 アルゴル大戦の頃?
『返して貰うわよ、セシル・シルビアを』
『何を血迷い事を。この方はあなたがおっしゃるような方ではございませんわ。私たちのフラッシャー様です』
『何を血迷い事を……はこっちの台詞よ。その男はあんた達が言うフラッシャーなんかじゃない。そいつはセシル・シルビア。連邦軍ユニット開発所属、セシル・シルビア博士よ。あんた達が怖がった、セリアシリーズの生みの親。ちなみに最高傑作ミランセリアはあたしが乗ってるのよ』
『ふざけたことを!!!』
 今のは………。
「アルゴル大戦の頃の記憶……だと言うのか……」
 ガイにも見えたの……?
「フラッシャー様。思い出してくださいまして?」
「思い出す?」
 見せられた記憶を思い出すなんて言わないで。
「今のは思い出したと?ただ見せられたと同じだろう?」
 ガイがそう言えば、天塔の八姉妹はその言葉に驚いたのか目を見張った。
「フラッシャー様っ。私たちはどれだけあなたが戻るのを楽しみにしていたのか感じてくださいませんの?」
「あいにくだが……」
「そんなっ」
 冷たく響くガイの声。
 そして悲痛に響くルフィー・シリウスの鳴き声。
「そんな、フラッシャー様……」
 な、なんか嫌な予感がする。
「ルイセ、サイコブロックを強化出来る?天塔の八姉妹がPSI値を増大させてる」
 レイナがこっそり言ってくる
「やってみる」
「私もマリーチも手伝うわ。転移をしなくちゃならない場合もあり得るから、準備をしておいて」
 うん。
「彼女たちの目線がガイに行っていて良かったわ」
 安心はできないけどね。
 いつあたしに向かうか分からない。
 んん、きっと向けられる。
 大丈夫、あたしは戦う。
 ガイのこと、みんなのこと守るために。
「フラッシャー様、私たちの所に戻ってきてくださいませ」
「断ったはずだ」
「ならば、全てを消して、邪魔者を消せば、こちらに戻ってきますわ」
 うっとりと夢見るように言うルフィー・シリウス。
 その言葉に賛同している、シエル・ルシファにスピア・エルフィノとリリィ・イクール。
「では、覚悟はよろしいですの?」
「覚悟って何よ」
「消えていただく覚悟ですわ」
「そんな覚悟するつもりなんてないっ」
「ならば、私たちの力を受けなさい!!!」
 彼女たちの力が膨大したかと思った次の瞬間、その力の奔流におそわれる。
「な、何これぇ〜」
「サイキックだよ。本来のサイキックは念波動をさす。……さすがに強いな天塔の八姉妹」
 理奈の叫びにカーツが冷静に答えてくれる。
「フラッシャー様、戻ってきてくださいませ」
「何故、ずっとそこにいたと決めつけるんだ。オレは、元々そこには居ない。千瀬、レイナ、マリーチ。オレも手伝う。弱いけどな」
 ガイのサイキックが合わさる。
 押さえていた念波動の力が少しだけ弱まる。
「これなら、押し返せる」
 ブロックとブロックで念波動を押しとどめていたんだけど、ガイの力が加わったことで跳ね返せることに気がついた。
「『あたしは、好きな人は渡せない。それを忘れていた訳じゃないでしょう』くっそーーーーーーー」
 跳ね返した念波動はそのまままっすぐ天塔の八姉妹に向かっていく。
「脱出する」
 そう聞いたすぐ直後に波動は天塔の八姉妹に当たり、壁を突き破り、衝撃と同時に強大な爆発音を鳴らす。
 もっとも衝撃と爆発音はレニアスに乗って気付いたのだけど。
 脱出するといった後、転移はすぐだった。
 眼下では煙が大量に建物全体も包み、崩れていく。
「案外……もろかったんだね」
 誰にも返事を期待していないマリーチの言葉にあたし達は声も出さずそれぞれに頷いた。
「生命反応なし……天塔の八姉妹は……あの念波動を受けて、死んだようだ」
 淡々とカーツが言う。
 こういうときはなんか淡々といってくれた方がいい気がする。
 天塔の八姉妹はあと4人居る。
 彼女たちは何を望んでいるんだろう。
 フラッシャーが側にいること?
 残骸となった建物を見てあたしは考え事をやめることにした。
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