運命はその動きを止めない。
星は我儘を語り願いを叶える。
彼らはその本質を知る。
星の我儘を、願いを。
他愛もない願いなのだと言うことを。
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「ガイ、千瀬ちゃんは……」
一つの部屋にウィルがやってくる。
そこには千瀬が眠る。
ガイは、彼女を一人見守っていた。
「ウィル、いつまで千瀬の事、千瀬って呼ぶつもりだ?」
不満そうにガイはウィルに視線を向ける。
「なんだい?君は自分以外千瀬ちゃんのこと千瀬って呼ぶのが気にくわないのかい?別に構わないじゃないか、千瀬ちゃんのことそう呼んでるのは僕以外にもマリーチや理奈ちゃんだってそう呼んでるだろう?」
そのウィルの言葉にガイは苦虫を噛み潰したような顔をする。
ウィルは、理奈のことすらアリーナと呼ばず理奈と呼んでいる。
それを聞いてガイはため息をついた。
理奈は良い、千瀬の親友だ。
マリーチも仕方ない、理奈のパートナーだし、一応ガイの親友だから。
だから叔父でしかないウィルに千瀬のことをそう呼ばれたくない。
だが、彼がそう呼ぶのはガイは理解している。
元の名前を呼んでいるのは千瀬がそう願ったからだ。
理由は、ガイはつい最近気がついた。
自分という本質の問題なのだと。
マリーチは「特別みたいでいいよな」と言うけれど。
だから千瀬は自分の事は名前で呼んで欲しいと言ったのだろう。
ウィルは、それを知っていたのだろう。
とガイは考えている。
「まだ、眠っているようだね」
ウィルの声にガイは頷く。
「かなり強力な攻撃サイキックだったからね。あれで天塔の八姉妹の目をそらすことが出来たのだからそれはそれで良かったのかもしれないねぇ」
今、ガイ達プリマスの面々はレイス星のプリマス支部に戻ってきている。
レムル・デュナンのサイキックと千瀬のサイキックがぶつかり合い、大地の塔上部を破壊したのだ。
その隙を突いて、プリマスの面々は大地の塔を脱出の後、帰還できたのである。
「初めて使ったサイキックだから、すぐに目覚めないだろうって。リンが……ライアとして、強制催眠による覚醒状態にあったから……それで負担を増大させたのかもって……言ってた」
この部屋で休ませる前に、リンはガイに言ったのだ。
攻撃サイキックを使ったとき、なれない力の動きに翻弄されて力を使い果たしてしまうと。
回復のために眠ってしまうのだが、普通ならば、長くはない眠り。
だが、千瀬はつい最近まで強制催眠状態にあった。
体の負担は普通よりも大きい。
「そうか……」
ガイの話を聞いてウィルはそう頷く。
部屋を静けさが支配していく。
「ガイ、僕とクェスは少し出かけるよ」
「ウィル、どこへ行くつもりだ」
「………すぐに戻る。僕たちは、真実を知る必要がある」
「真実?」
「そう、ライアとフラッシャーの真実。それには、彼女が必要なんだよ」
ウィルは笑顔を見せて言う。
「ライアとフラッシャーの…………真実…………」
「怖いのかい?」
「何故」
「千瀬がライアだから……。ライアはフラッシャーと恋人だったと聞く」
「別に……そんなこと気にしてない」
「それぐらいは思うようになったか」
ガイの言葉にウィルは嬉しそうに笑う。
「あのなぁ」
「知ることをおそれる必要はない。僕はそう思うよ」
そう言ってウィルは部屋を出て行く。
「……ただ、その事に振り回されているだけ……か……」
ガイはウィルが出て行った扉を見つめそう呟いた。
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彼らは知る。