彼女の他愛もない願い
25・宇宙の虚空
レイス星は、古代語で大地という意味を持つ。
大地の割合は他の惑星とも比率はそれほど変わらないのだけれども(水と大地の割合、6:4)。
地図で見ると海の割合はものすごく少ない。
その代わり、川が多いらしいんだけど。
そこにある天塔、大地の塔は、長い年月、誰の手も入らないのかツタがからみついていた。
それに反してミランセリアはツタなんてからみつく様子なんかまるでなく、銀色に彩られて機体をさらしていた。
「再生金属……か。装甲はほぼ再生されている。アルスが見たら喜びそうだな」
リッドさんはミランセリアを見つめながらそう言う。
「でも、内部の機構はいかれている様だ。コクピットブロックのハッチが開かないな……」
そしてミランセリアのコクピットがあるというお腹の部分をいろいろ触っている。
「リッドはアルスと同じで機械工学が趣味なのよ」
とフェリスが教えてくれる。
えっと…アルスって誰だろう。
「ラミア星のプリマス、セチスのアルス・サラの事だよ。まだ、ラミア星のアンクルには会わせてなかったな」
ガイがあたしの疑問に答えてくれる。
「プリマスの関係者ってその二人で最後?」
「アンクル、ティラナに関するとすれば……まぁ、そうだね」
レイナとカーツの上司……か。
どんな二人なんだろう。
「いい加減、見るのやめなさいよ。あとでアルスと来ればそれで良いでしょう?」
「ま…まぁ、それはそうなんだが………」
延々とミランセリアを観察というより……あちこち触りまくっているリッドさんにリンさんはしびれを切らす。
「ともかく、ミランセリアに構うよりも大地の塔でしょう?ウィルとクェスの二人を捕まえなくちゃ」
え、捕まえるために来たの?
「……一応、見つけるためのはず…なんだけど…」
なんてあたしとガイの呟きも気にしないでリンさんはリッドさんを引っ張って大地の塔に向かっていくものだからあたし達もあわてて後を追う羽目になった。
『姉様……』
『分かってる』
『ライアは、引き渡すの?』
『奴らの失態であろう?それを何故我らがぬぐわなければならない』
『ライアの側にはあの方が………』
『あの方は未だ、目覚めてはおらぬ。それが一つ問題……』
『姉様……』
『今は、この余興を楽しもうぞ』
大地の塔の内部には簡単に入ることができた。
水の塔と同じような転移装置というよりポイントがあったからだ。
道理で、外壁がツタに覆われているはずだと納得する。
外壁に触れないで中に入れるんだもん、全体がツタに覆われるはずよね。
でも、すぐに立ち往生。
ココがどこだか分からない。
ついでにどこにも進めないで八方ふさがり。
ちなみに大地の塔の内部の広さはそれほど大きくない。
学校の教室より少し広いくらい。
「なんで、ここ窓がないの?」
「必要ないからじゃないの?」
あたしの疑問にフェリスがため息ついて答えてくる。
「って言うか、なんで天塔の八姉妹は天塔なんて場所に陣構えしたんだか、そっちが気になるわよ」
リンさんの言葉にあたしとフェリスは頷く。
「と言うより、今一番の問題は男どもが消えちゃったって事よね」
そういったリンさんにあたしとフェリスは大きく頷いた。
大地の塔の内部(多分。それも不安になってきた……)に簡単に入れた。
それは事実なんだけど、ただ、ガイ達とはぐれたらしいんだよね……。
「お姉ちゃん、ここって本当に大地の塔の内部?」
フェリスも同じ疑問を持ったらしく、リンさんに問い掛ける。
「それは間違いないわよ、GPSでもそれを示してる…」
と、ポケットから携帯ぐらいの小さな機械を取り出してなにやら見ている。
「それ何ですか?」
「ん〜GPS付きの通信機よ」
やっぱ、携帯であってたらしい。
アルゴル太陽系でも携帯電話ってあったのね。
まぁ、あってもおかしくないか。
「IDが発信機の役割してるの知ってる?」
……聞いてないかも?初めて聞いたかも?
「ガイってば肝心なこと教えてないのね」
リンさんは呆れながらぼそっと呟く。
「まぁ、お姉ちゃん?ガイもいろいろ変わりつつある見たいよ?」
「そうじゃなきゃダメよ。あの子は」
あの子、呼ばわりですか……。
「話戻すけど、この通信機でID証が発している電波を受信することが出来るの。アンクル専用の船についてるものと同じね。近距離で探すにはこれで十分。…ここが大地の塔であることは間違いない。リッド達もここら辺にいる……。階層は違うかも知れないわね……。っっ?」
ケータイ(でいいよね)を見ていたリンさんは驚いて何度も確認している。
「リンさん、どうしたの?」
「……ウィルとクェスのID発信もある」
「やっぱりココにいるんですか?」
あたしの問いにリンさんは頷く。
ウィルさん達が確実にココにいるのは間違いないみたいだ。
「でも、ここからどうやって違う階層にいくの?」
「さっきのと同じ転移装置みたいなのなら、ここにあるけど………」
フェリスが、自分の足下を見つめながらそう言う。
その足下には先ほどと同じような転移装置がある。
3つもあるなんて……思いもよらなかったよ……。
「さて、自力でテレポートする?それとも、三人で同じ所行く?それとも……三人で別々の所に向かう?」
じ、自力でテレポートはちょっと自信ないんですが……。
「テレポートはムリなんじゃない?なんだか、ここPSIもESPも使えなさそう……。それにもし出来たら、最初にアドル達がテレパス送ってくると思うし」
え、そうなの?
「その通りよ、フェリス。ココは軽くPSIとESPのアンチブロックがかかってる。階層が変われば多分使えるようになると思うけどね。さぁ、ココは運試し。全員違うところに入るわよ!!!」
へ?リンさん?
「ルイセ、惚けてない。まずはあなたから。好きなところに行きなさい」
ってあたしから〜〜。
「さぁ、悩んでないですすみなさい」
り、リンさぁん〜。
あたし一人じゃ不安なんだけどっっっ。
「お姉ちゃん、ルイセはまだ一人って言うの無理じゃない?」
「大丈夫よ、実戦でなれた方がすぐに成長するわよ?」
………もう、すでに戦闘ありの状況ですか……?
「つべこべ言ってないで、さっさと行きなさい」
は、は〜い。
リンさんに追い立てられるようにあたしはあたしの方から見てちょうど、左側の所へとあたしは意を決して踏み込んだ。
そしてまったく別の部屋に入ったようだった。
「誰も…いない…」
…誰の気配もない。
『フラッシャー様は渡さない』
『別に、あたしはフラッシャーを返して欲しくって来た訳じゃないわ。だいたい、フラッシャーって300年ぐらい前に死んでない?あたしは、シルビアを返してって言いに来たの』
『何を面白いことを……あの方はフラッシャー様ではありませんか。ライア』
『何度言えば、分かるの?あたしはライアじゃない!!!』
な、何、この記憶。
ライアの記憶じゃない記憶だ……。
でも、彼女は天塔の八姉妹(多分)にライアって言われてる……。
『私たちはフラッシャー様をお慕いしておりますの』
そう天塔の八姉妹が叫んでる。
『ふざけたこと言わないでよ!!シルビアを返しなさい!!!』
って女の人……。
彼女はフラッシャーと天塔の八姉妹が呼んでいるシルビアを求めている………。
彼女はライアなの?
『アルゴル大戦の頃、ライアと同一のPSI及び、ESP値を持っていた人間がいたらしい…』
レイス星に来る前、そう教えてもらった。
だから、シウス星の『パルマ』の連中はそれを元にあたしを見つけたという。
じゃあ、今見えるように頭の中に入ってくる映像…、そこに映っている女の人が『ライア』って事?
生まれ変わり……。
彼女が愛した人もフラッシャーなのだろうか……。
この記憶を見ている限りそうなんだろう。
たまたま?
それとも………。
「ようやく見つけた」
の声と同時に背後から抱き占められる。
「……が、ガイ?」
「千瀬のPSIを感知出来て良かった。どこか怪我はないか?」
その声にあたしは小さく頷く。
な、なんか、このところやっぱりガイに抱きしめられることが多い気がする……。
「リンとフェリスは?」
「べ、別行動だよ?この部屋の前からだけど」
そう聞かれて思わず言葉がどもる。
「何かあったのか?」
「え?何もないよ?」
あるとすれば、今………かな?
ずっと抱きしめられて、声が耳にかかるんだけどっっ。
ガイってこんな直接的な人だったの?
な、なんか急に触られ率が高くなってる気がするんだけどっ。
もしかして、む、無意識?
「あ、悪いっっ」
突然、ガイが離れてあたしはようやくその方を向く。
と、ガイは耳を真っ赤にして恥ずかしそうに顔を手で隠している……。
「オレ、そんなに触ってたかな………」
う、ばれてる……。
このところ平気だったから、何にもしなかったんだけど……。
いや、なんだか無意識にやれてたような気がするんだけど……?
「ごめん」
って、謝られても困るんだけどっっ。
強引に話題を変えよう。
その方が良い。
「それより、アドルとリッドさんは?ガイもやっぱり別行動取ったの?」
ふと思ったのはその事。
「え、あぁ。俺たちが入った部屋に三方向への転送装置があったからな」
「そっか。今どの辺にいるのか全然わかんないね。窓がないんだもん」
「そうだな」
ガイが冷静に受け答えする。
どうやら、調子が戻ったみたい。
『どうして、私がライアだって言うこととシルビアが関係するのよっ』
突然あたしの頭に響く、叫び声。
「今のは……何だ?」
……ガイにも聞こえたの?
「千瀬も聞こえたのか?」
ガイの問いにあたしは頷く。
「塔の……記憶……?かも知れない」
「塔の記憶……?」
水の塔の時みたいな?
「あぁ……、大地の塔はアルゴル大戦の時最大の激戦区だった。その時の記憶を、もしかすると大地の塔は持っているのかも知れない。この塔はPSIとESPに包まれている。この塔を作る物質にすでに含まれているようだ」
ガイは大地の塔に手で触れながら言う。
塔の記憶……。
「彼女は、ライアだって……。シルビアって恋人かな……」
…彼女は、天塔の八姉妹に連れてかれたシルビア……フラッシャー……を追ってこの大地の塔までやってきた。
彼女は自分がライアだって分かっていたのかな。
彼女は、シルビアがフラッシャーだって分かっていたのかな……。
好きになった人がたまたまフラッシャーだった?
それとも、それは決められたこと?
「ガイ、それでも、あたしはガイの側にいたいよ……」
ふいにそう思った。
離れて気付いた思いに近いけれど…。
「………千瀬……」
今度は正面から抱きしめられる。
気付いたら、って事あるんだって気付かされた。
「ガイ、あたし、ガイのこと好きだよ……。フラッシャーはライアの恋人。だからライアはフラッシャーを探している。でも、フラッシャーが誰でも…あたしは、ガイのことが好きだよ」
「先に…言われるとは思わなかったな……」
困ったようなガイの声がする。
顔を上げてみたら、ガイが苦笑いを浮かべている。
「それは、きっとオレの台詞だよ。千瀬がライアだろうが何だろうが関係ない。オレは千瀬のことが大切で離したくないんだ。それを好きだって言うだけじゃ収まらない気がする」
う……わ………。
なんか、すごい台詞聞いた気がする……。
「が、ガイ。あ、あのね。そうだ、ウィルさん達がいるってリンさんが言ってたから、行かない?」
さっきみたいに、思わず強引に話題を変えてしまった。
だって、なんか……、恥ずかしいんだもん。
「そうだな…、先にそれを済ませようウィル達がココにいる理由、それに天塔の八姉妹最後の双子も確認しなくちゃならない」
あたしの言葉にガイは案の定、苦笑して答えた。
ガイの言葉に頷き手を引かれるまま転移装置に向かう。
その部屋の転移装置の行く先にウィルさんとクェスさんがいた。。
「やあ。ようやく、来たか………。というよりも、とうとう来てしまったかといった方が正しいかも知れないな」
あたし達の存在を認めてウィルさんは困ったように微笑んだ。
「ウィル、ウィルは千瀬がライアだって言うことを知っていたのか?」
「突然だね。久しぶりの言葉もなしかい?ガイ」
ウィルさんの言葉にガイはばっさり
「雑談をしに来た訳じゃない」
と切り捨てる。
「……じゃあ、単刀直入に言おうか。僕は知らなかった。というよりも後から知ったという方が事実かな?」
「どういう事だ?」
「お前達が、彼の星に行くまで知らなかったよ。レニアスから送られてきたデータで僕は知ったと言うことか?」
「レニアス……から?」
ウィルさんの言葉にガイは慎重に問い掛ける。
「そう、レイナが千瀬ちゃんのESP値とPSI値を送ってきたんだ。パルマ・プリマスの本部…つまり僕の書斎と大統領の所にね……。新たな部下になる人間の能力データを把握するのは当然だろう?だが、彼女のデータを確認する事になって、気がついたんだ………。あり得ないと思った。彼女は他の星からこの星に連れてこられてる。だが、それはライアの願いが成就されていると言うことになる……」
そう、ウィルさんは足下を見つめる。
何もない場所。
「ウィルさんは、ライアのPSIとESPデータを知っていたんですか?」
「………情報部に、知り合いがいてね。一度、こっそり見せてもらったことがあったんだ。僕がこういう研究をしているのを知ってたんだか、知らなかったんだか、まぁもう知ってしまっているんだからどうしようもないんだけどね」
いたずらっ子のように茶目っ気たっぷりでウィルさんは答える。
「ライアの願いって何なんですか?」
ウィルさんはそれを調べに来たはずだ。
変えることの出来ない運命のはず。
「ライアの願い?星の我儘?それは他愛のない事だよ、千瀬ちゃん?」
ウィルさんはずっともう、あたしのことを千瀬と呼ぶつもりらしい。
「他愛のない事……」
その言葉をあたしは繰り返す。
「誰しもそれを願う。彼女はただそれを願っただけだ。この広大な宇宙の片隅でね」
そう、ウィルさんは嬉しいとも悲しいとも見える笑顔をあたし達に見せた。
その後すぐに、リンさん達と合流することができた。
リンさんは、意外にもウィルさんに詰め寄ってる。
「ウィル、どういう事か、後できっちり説明してもらうからね」
「………リンが来るとは思わなかったからなぁ、たいした覚悟もないよ」
「何ふざけて事言ってるの?天塔の一つ大地の塔はどこの星にあると思ってるのよっ」
「……そ、そうだねぇ。よっぽどの事がない限り、ティラナだけに行かせるわけいかないねぇ」
のらりくらりと交わす前にリンさんに詰め寄られてるウィルさん……。
その顔は非常に困った顔をしている。
ウィルさんってリンさんみたいな人が苦手そう。
「と、ともかく、行きましょう。この先に」
そしてリンさん達の間に挟まって困り果ててるのがアドルなのかなぁなんて今ちょっとだけ思った。
リンさん達と合流して、転移装置を見つけて転移する。
最上階なのか、全面に遠くを望める窓が見える。
随分、高い所にいるようだった。
そこにいたのは、長いウェーブがかった長い金髪に青灰の瞳の女性と青紫(すっごい珍しいというより、いないよ)の髪に、金目。
「ようこそライア。私は、天塔の八姉妹長女レムル・デュナン。そして彼女は次女ピアス・アルティア」
と唇に笑みを貼り付ける、レムル・デュナン。
でも、目が笑っていない。
「塔の記憶は見ていただけましたか?」
塔の記憶……?
過去の出来事みたいなものは……やっぱりガイの言うとおり塔の記憶だったんだ。
「あぁ、見せてもらったよ。なかなか興味深いものだった。だが、結局僕の探していた答えは全く別のものだった。意外だったけどね」
レムル・デュナンの言葉にウィルさんが応える。
ウィルさん達、天塔の八姉妹にあって、この塔の中に入れてもらったようだ。
「別のもの?何故そう思う」
「ライアの願いは他愛のないものだった。それを『パルマ』や君たちは曲解しただけだ」
「でも、それは星の我儘としてこのアルゴル太陽系を支配している。それはウィル・ラーマ。ライア研究の第一人者のお前ならば理解していることだろう?」
ライア研究の第一人者?
「僕はただの歴史学者で考古学者だよ。だから、この塔も見つけることが出来た………」
「ちょっと待て。ウィル、お前さんはこの塔がここにあることを知っていたのか?」
突然、リッドさんがウィルさんに詰め寄る。
ウィルさんの言葉からすると、天塔の八姉妹と前もってコンタクトを何らかの形(曖昧だけど)を取って、この大地の塔に入ったのではなく、最初から、この大地の塔がある場所を知っていてレイス星に来た……って事?
「…ま……ぁ……。あたりはリッドだって付けてただろう?」
「そう言う問題じゃないだろう」
「今は良いわ。後でじっくり聞かせてもらうわよ。ウィル、クェス?」
リンさんがリッドさんを押さえてウィルさんとクェスさんの二人を睨む。
「そうだね。さて、話を戻そうか。星の我儘はこの星を支配している。それは事実だ。だが、その星の我儘はなんだというか…君たちは知っているか?」
「そんなことは我々は知る必要のないこと。ただ、あの方が私たちの側にあればいい。ただそれだけだ」
「そう。だから、君たちは理解という事を排除し、目の前のものだけを求めた……。僕はそうして理解したんだ。星の我儘とは彼女の願いを知ったもの達が振り回された結果だと……」
ライアの願いを知ったもの達が振り回された結果……。
「振り回された…だと?」
「そう。君たちしかり…『パルマ』しかり、僕もしかり……」
だから、あたしはパルマに連れて行かれた……。
ライアの願いを曲解したパルマに……。
「星の我儘……僕はそれを変えることの出来る事象だと思っていた。だが、本当は違う。ライアは自分の願いを叶えるために、転生……生まれ変わるための秘術を探した。他愛もない願いを叶えるために。ライアは女神と讃えられた。星の女神……。彼女の願い、彼女の我儘。それが……いつの間にか星の願い、星の我儘と変化していったんだ……」
他愛もない願い。
それはフラッシャーと共にあること?
……そんなまさか……。
「ふざけるな。ふざけるなっっ。そんなものが星の我儘であるはずがない。私たちが振り回されただと?この天塔の八姉妹が。だとしても関係ない。あの方を、フラッシャー様を求めるのには変わりない」
レムル・デュナンが叫ぶ。
周囲が激しく火花を散らす。
「フラッシャー様、早くこちらへいらっしゃってくださいませ」
ピアス・アルティアの高い声が横から聞こえる。
「『ダメっ』」
「ライア?、覚醒は不完全なはずではなかったの?」
ピアス・アルティアはあたしの方を見ながら言う。
「『あたしは、願ったの』」
あたしが言ってる。
でもあたしじゃない人もいってる。
一緒に言ってる。
「フェリス、クェス、サイコブロック。ガイ、あんたはルイセの側にいなさい。彼女が落ち着いたら強制テレポート掛けるわよ」
「アドル、リッド、テレパスブロックもだよ。そしてガイ……千瀬ちゃんは君が守れ」
リンさんとウィルさんの声が遠くで聞こえる。
「『貴方たちがフラッシャーを連れて行こうとしても。どこに行こうとしても。絶対にあたしの側に連れ戻すって。あたしは、彼を愛してるの。前にも言ったわよね。覚悟しろって。だから、天塔の八姉妹。あんた達だけは、絶対に許さない!!!!』」
誰があたしと一緒に言ってるの?
「千瀬」
すぐ側でガイの声が聞こえる。
「ガイ、大丈夫。『すぐに終わらせるから』心配しないで」
「千瀬?」
だから、力を使う。
「攻撃サイキック用ブロック」
自分から力が放出されているのが分かる。
「きゃあああああああああ」
鋭い光線と共に誰かの叫び声。
そして、あたしは一瞬のうちに気を失ったのだ。