Destiny Third

ミランセリア
19・ロボット
「遅い、一体何やってたのよ!!!」
 ブロンズ色の髪の女性があたし達を迎える。
「えっと……姉のリン・ラータ…です」
 あっけにとられたあたしに済まなそうに言う、フェリスと似ている。
 二人ともブロンズ色の髪、目がリンさんは緑色でフェリスは青色。
 怒っている彼女はレイス星のプリマスでフィスト。
 そう、今あたし達はレイス星に来ている。
 ガイとあたしとこの星のプリマスのティラナであるアドルとフェリスと一緒に。
 あたしとガイだけがこの星に来たのはウィルさんとクェスさんの二人を探すという個人的理由のため。
 だから、理奈とかも来るわけにはいかなかったのよね。
 ついでに天塔の最後の一つがあるのもココ。
 一番力のあり、脅威でもある双子がいるであろう塔。
 行くかどうかも……というか塔自体が見つかってないんだからどうしようもないわけで。
 まぁ、塔探すにも、ウィルさん達を探すにも、その星のプリマスに許可を取らなくちゃならないというわけで、ひとまずレイス星のプリマス支部にやってきたわけ。
 ついでに、あたしもまだ本調子でもないし………。
 ガイがすっごく心配してるから、なんだか妙にくすぐったいっていうか。
「君が、ルイセ・エシル?」
 そう言ってリンさんはあたしの前に来る。
 そしてあたしのあごをあげて。
 って何をするんだろう……。
 ジロジロと見られる。
「ふーん」
 あ、あのぉ。
「攻撃サイキッカーか……。使ったことは?」
 え?
 使ったこと?
「ないですよ」
「ガイ、あたしはあんたに聞いてない。この子に聞いてるの。ルイセ、攻撃サイキックは使った事ある?」
「と、とりあえずないと思います」
「調整までして?」
 って、そんな暇なかったよぉ。
「リン、千瀬が怖がってる」
 と声と共に体に腕が回って背後に、引き寄せられる。
「が、ガイ?だ、大丈夫だよ?」
 び、びっくりした。
 急に抱き寄せられるんだもん。
「今はあんたに怖がってるみたいだけどね。別に、あたしは怖がらせるつもりないわよ。で、使ったことはない訳よね。とりあえず、場所を変えましょう?玄関で立ち話っていうのもどうかと思うわ」
 と、今までと違う雰囲気でリンさんは先に向かう。
 なんか、とげとげしさが消えてる。
 何でだろう?
「……リンに試されたんじゃないのか?」
「そんな気がする」
 すぐ頭上で聞こえるガイとアドルの会話。
 煉瓦色の髪に暗い青の瞳を持つアドルはフェリスのパートナーだ。
「試されたって何?」
「千瀬の事じゃないよ」
「もちろん、気むずかし屋のテレパシストの事だよ」
 アドルの言葉で分かった。
 あぁ、ガイの事か。
「でも、何で?」
「まぁ、今までが今までだもんねぇ」
 そう言って、フェリスはガイを見る。
 今までが今までって。
 ホント、ガイいろんな人に言われてるなぁ。
「って言うか、いい加減腕放して欲しいよ。ガイ」
「っっっっっっっっ」
 あたしの言葉を受けてようやくガイはあたしを離してくれた。
 ってガイ、顔が真っ赤。
「ガイ?どうしたの」 
「別に、何でもない」
 顔を赤くしてガイは何故かそっぽを向いてる。
「ふふふ〜」
 フェリスとアドルは訳知り顔で意味深な微笑み浮かべてるし。
 もう、なんだかわかんなくなってきた。
 重厚な扉を入ると中にいた人が難しい顔でリンさんを見ていた。
 リンさんは正面の大きな机に座っている。
「お帰り、フェリス、アドル」
 扉を開けた音に気付いたのか、その人はフェリスとアドルに声を掛けた。
「ただいま、リッド」
「ただいま戻りました」
 そう返事をするフェリスとアドル。
「久しぶりだね、ガイ。それから、君が、ルイセ・エシル?オレはリッド・カイル、よろしくな」
 そう言ってあたしに笑顔を見せてくれる、リッドさん。
 煎ったコーヒーの様な髪にキャラメル色の瞳を持つリッドさんはリンさんのパートナーでセチス何だとガイが教えてくれる。
「リッド、聞きたいことがある」
「セクロスの消失点だろう?」
 とリッドさんはガイの質問を聞かずに答える。
 まぁ、それ以外ないのだけど。
「セクロスの消失ポイントは、R-[-30150]-0だ……」
「大地の塔の、予想地点は……?」
 ガイの言葉にリッドさんは小さく息を吐く。
「やはり、そう考えるか」
「ウィルの今までの言動を考えるならば……」
 そう言ってガイはあたしに目線を落とす。
 ウィルさんの今までの言動。
 あたしには、…たとえ、いなくなる直前に会話していたとしても、ウィルさんの考えはよく分からないのだけど。
 ガイは、分かっていると言う。
「ガイ、どういう事?」
 フェリスの言葉にガイは説明を始める。
「ウィルが、古代の歴史について研究していたのは知っているな?」
 そ、そうなんだ…。
「発掘好きなんでしょう?お姉ちゃん」
「……えぇ、ウィルの発掘好きは有名」
 意外、ウィルさんが発掘好きだなんて。
 なんか何を考えてるんだかよく分かんない人だけど、学者風と言えば、そうかも知れない。
「ウィルが、各地の歴史を調べている内に『星の我儘』という言葉にたどり着いたとオレは考えている」
 星の我儘……ライアの願い……。
「その件に関してはシャルから聞いてるわ。だとすると、わざとレーダーからロストさせたって事になるわよ?」
「そうだな…プリマスのレーダーは特殊なものを使っている。故意に行わない限りレーダーからロストするはずがない。それがセクロスだとしても」
 ウィルさんは『星の我儘』=『ライアの願い』と言うことを知っていた。
 だから、機体をレーダーからわざとロストさせて大地の塔に降りたって事?
「そう考えれば、つじつまはあう。ウィルは研究から大地の塔に『星の我儘』について手がかりがあると思ったのかも知れない」
 そう、ガイは呟く。
「星の我儘を変えるための何か?が」
 あたしの言葉にガイは頷いた。

「セクロスの消失ポイントであるR-[-30150]-0は、元々磁場が強い場所でな。この磁場はESPまたはPSIによる変化だろうと考えられているんだ。その二つが強く検知されるからな」
 とリッドさんが説明してくれる。
 ともかく、想像だけではどうにもならないとと言うことになってレイス星アンクル用のマルークに乗ってあたし達はセクロスの消失ポイントR-[-30150]-0に向かっている。
「その事から、大地の塔はココにあるんだろうと考えられているんだが……」
 でもどうしてESPとPSIの検知だけで大地の塔があるって分かるんだろう。
「大地の塔には、天塔の八姉妹の長女レムル・デュナンと次女ピアス・アルティアがいるっていうのが分かってるんだ。この二人の能力は天塔の八姉妹の中でも最強でPSI能力もESP能力も高いらしい」
 とガイ。
 彼女達が有名なのはこの地が3000年以上昔におこったアルゴル戦役の最大の激戦区だった為だらしい。
 改めて3000年以上昔って聞くと途方もない昔で、なんだか現実味がつかめないよ。
「ルイセ、サイコブロック掛けられる?」
 とリンさんが前を見ながら聞いてくる。
 その顔はどこか青い。
「やったことないから、分からないですが、やり方ぐらいなら」
 そう言うとリンさんは頷く。
 一応、レムネアから聞いてるからね。
「分かったわ。アドル、壁までの距離は」
「最大船速で3000。カウント30の後にフィールドを発見」
「20ぐらいからPSIフィールドだろうな。ESPフィールドは見あたらない」
 リンさんの言葉にアドルは答え、それを受けてリッドさんが追加する。
「分かったわ。最大船速のままフィールドに突入。フェリス、ルイセ。カウント10の後サイコブロックを」
「ブロックをブロークンフィールドに変化させてPSIフィールドに突っ込むか。相変わらずむちゃくちゃな作戦だな」
 ガイがリンさんの作戦にため息をつく。
「それ以外ないでしょう?文句言わない。アドル、カウントを。だから、ガイはテレパスブロックの準備。あんたなら一人で大丈夫でしょう?」
「だから、無茶なんだよ。リンの作戦は」
「それがリンだろう?諦めろ」
「そう。オレが諦めてるんだから」
 ガイの言葉にアドルとリッドさんが慰める。
「うるさいわよ、アドル、リッド!!!ともかく、突っ込むわよ。最大船速、カウント開始」
「了解、カウント1、2、3、4、5、」
 カウントアップしていく。
 出来るかどうかわかんないけど、レムネアに言われたとおり壁を作るイメージ。
 機体の前で良いんだよね。
「7、8、9、10、ブロック」
 リンさんの言葉に機体の前に壁をイメージする。
「そのままサイコブロックを維持。衝撃くるわよ」
 言葉通り強い力が重力となってやってくる。
『許さないって決めたから』
『彼は、渡さない』
 何、この声。
「ガイ、テレパスブロック」
「分かってる」
 聞こえなくなる声。
 感じなくなる押される重力。
 気がつけば、全体を緑に…ツタらしき何かに覆われた塔が現れた。
「あれが、大地の塔……」
 あたし達の前には大地の塔がそびえ立ち、その下には何かの残骸が存在していた。
 残骸というにははっきりと形が残っている。
 ロボットアニメに出てくるロボットのような形をしている。
 朽ち果ててなくまだ塔を守ると言うよりもにらみつけている様で……。
『………来る必要はなかったのよ……本当は』
 何、今の…。
 あの機体から大地の塔を見ているような……感覚。
 記憶?
 誰の?ライア……?違……う?
「………で、データ照合終了。……アーマーユニット……ミラン…セリア」
 アドルの声が驚きに震えている。
「ミランセリアだって?」
「間違いない。あの機体は、アルゴル戦役で使われていたミランセリア」
「そんな……」
 アドルの声に、誰もが信じられないと首を振る。
 アルゴル戦役、3000年以上も昔に行われた戦役。
 そんな頃に使われていた機体と言うのだろうか。
 あれが……。
「アーマーユニットには特殊な再生塗料が塗られていたという話は本当みたいだったんだな」
「関心している場合じゃないでしょう?リッド。今はそんなことじゃないわ、セクロスはどう?」
「……アドル、ミランセリアの左側をモニタに」
 リッドさんの言葉通りその場がモニタに表示される。
 レニアスに似た機体がそこにあった。
「セクロス……」
「ビンゴって奴か?ウィルとクェスは大地の塔に入ったんだな」
 そうリッドさんは言った。
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