Destiny Third

能力
7・記憶容量
「君には、会ってみたかったんだ」
 デューク・シェルはそう言いながら、髪にふれてくる。
「カルス、ルイセに近づくな!!」
 ………っえ?
 ガイ…今………。
「ルイセ…か」
 そう言ってデューク・シェルは数歩後ろに後退する。
「ルイセ、君の名前いい名前だね。また逢おう」
 そう言って、カルス……デューク・シェルは消えてしまった。
「デュークは、テレポーター?」
「そうだ……」
 マリーチの問いにガイはうなずく。
「ともかく、戻って報告だね」
「……姉さんに報告か………。気が重いな」
 理奈の言葉にマリーチがため息をつく。
「千瀬ちゃん?」
「何?」
 マリーチに呼ばれ、視線を向ける。
「こいつ、馬鹿でごめんね」
 とマリーチはガイを指した。
 マリーチが何を言いたいのかがすぐに分かった。
 あたしの名前は竹内千瀬だけど…ルイセ・エシルっていう名前だって事ぐらい分かってるから大丈夫。
「別に、気にしてないよ」
 そしてそうあたしは答えた。
 ただ……寂しいだけ。

「そうか……、デュークがか…」
「デュークがここから出て行って、数年か…」
 コラム星のプリマス事務所に戻れば、そこにはこの星のフィスト…紺色の髪と目を持つ女性、カーラ・ムアさんとセチス…プラチナブロンドの髪と青い瞳を持ちメガネをかけている男性アドニス・ウラルさん、そして何故か
「…デュークにも困ったものだね」
「パルマにいるという話は本当の事なのかもね…」
 クェスさんとウィルさんもいたのだ。
「いつ来たんだ」
「ついさっきだよ。ところでガイ…、…今はいいか。じゃあ、炎の塔で合ったこと詳しいことを聞かせてほしい」
「…分かった」
 ウィルさんに促されてガイはか炎の塔であったことをかいつまんで話す。
「入り口はテレパスキーか…。前回の調査ではテレパシストは一緒に行動しなかったと言うから、そのせいで見つからなかったといっても間違いないな」
 ウィルさんは当時の資料を眺めながら言う。
「で、天塔の八姉妹か」
「おそらく、レグルト原種らしい」
「……おそらくというよりも確信だろう。お前の場合は」
 ウィルさんの問いにガイはしっかりとうなずく。
「レグルト原種と確信した理由は」
 今度はカーラさんが問う。
「入り口のテレパスキーがレグルト人が使う構造に似ている。読み込んだ時それ以上の高度なテレパスブロックがかかっていた。あのブロックのかけ方は特徴にレグルト人が使う特徴が色濃く出ていた。ただブロックレベルは通常にかかるレベルより遙かに上。それで俺はレグルト原種と判断した」
 と何ともなしにいうガイに理奈は感心する。
「あれってサイコメトリーで読んだって事だよね…。ガイはすごいなぁ」
「理奈、あんたはわかんなかったの?」
「なんか、変なのいっぱい見えたよ。数式とか頭痛くなっちゃうような物まで」
 あのときの事を思い出したのか、理奈は頭を抱える。
 塔に入ったときは、何か感じたんだけど……。
 ………そう……いえば………。
 ……今、何を思ったんだろう。
 何か思ったんだけど…忘れた。
 何でだろう。
 …ガイ達はまだ話している。
 あたしと理奈は横でそれを見ていた。
 なんか、ほっとかれてるそんな感じだけど。
 話に加わって、何かできるってもんじゃないけれど。
「兄が……デューク・シェルがあの場に来たことは先に説明したとおりです」
 そう言って、ガイは真正面に向けていた視線を外す。
 ガイの真正面にいるのはカーラさん。
 詳しいことは分からないけれど、カーラさんとデューク・シェルは何らかの因縁っていう大層なものじゃないのかも知れないけれど何かはあるんだろうなと思った。
 その後、あたし達パルマ星の面々はコラム星からパルマ星に帰ることになり、その宇宙船の中でいきなり、ちょうど手動航行から自動航行に船が変わったときにウィルさんがガイに聞いてきた。
「ところで、ガイ、千瀬ちゃんの能力はなんだい?」
「ウィ、ウィル?」
「???え?」
 本当に突然だった。
 ウィルさんがあたしの名前を言ったのが。
 思わず驚いてウィルさんを見つめちゃったけど、ガイも驚いてあたしとウィルさんを交互に…どちらかといえば、ウィルさんをにらみつけるようにしている。
 ウィルさんは最初からあたしのことを千瀬じゃなくってルイセって呼んでたから。
 てっきり、あたしの本名を知らないものかと思ってたけど……。
 よくよく考えたらそんなことないんだよね。
 プリマスのフィストだし、あたしやガイの上司だし。
 でも、どうして急にあたしの本名なんて呼んだんだろう。
 ぐるぐるになりそうな頭で考えていたら、
「ガイがね、君のこと前は千瀬ってちゃんと呼んでたのに急にルイセって呼んだからね。何でかなぁと思って。カーラ達の所にいる間だけかなぁって思ってもここに来てからもそう言ってるからね。ガイが呼ばないんだったら俺が呼ばせてもらおうなんてね。それにしてもひどいね、千瀬ちゃんだってデュークに名前聞かれてびっくりしてたのにガイはいきなりルイセだなんてね。不安というよりも疑問を持つのも当然だよね」
 そういうウィルさんの笑顔はにこやかで。
 まるであのとき合ったことを見たかのように…。
 ついでに今の感情もまるで分かってますと言ったように…。
 ガイはカーラさん達の所での報告ではデューク・シェルが出てきたことは言ったけれど、あたしの名前を聞いてきたことまでは言ってない。
 …………っていうか、ウィルさん、あたしの考えてること…もしかして…読んでる?
 え、読まれてる?
「ウィル、説明しないつもり?」
 困った顔を見せるクェスさんにウィルさんは苦笑してガイはムスッとした顔を見せてそっぽを向いている。
「それはクェス、君がしてくれるんだろう?」
 なんて言いながらウィルさんはクェスさんに微笑んで、それに答えるクェスさんも微笑んで………。
 なに、見せつけられるこの二人のラブラブは。
「ルイセは、ウィルがどうしてルイセの名前、ここでない所の呼び方で呼んだのか知りたいのよね」
 あっけにとられているあたしはクェスさんの言葉に頷くことしか出来ない。
「実は、ウィルってガイ以上のテレパシストの持ち主なの。だからルイセのテレパスで無理矢理覚醒させたブロックじゃ防ぎ切れてないって言うか、ウィルにはふつうにしゃべってるのと同じぐらいに聞こえちゃうって言ったほうがわかりやすいかしら」
 ………………嘘。
 って事は、あたしがの思考回路は、ウィルさんに筒抜け………。
 さ、サイアクだ……。
「ごめんね、千瀬ちゃん」
 なんてウィルさんはやっぱりあたしの名前を呼んでくる。
 呼ばれるのは嬉しいんだけど…複雑な気持ちになる。
 ガイは…呼んでくれてたのにどうして呼んでくれなくなったんだろう…。
 って………これも読まれるよ。
 ウィルさんをこっそり盗み見れば苦笑してる。
 あぁ、どうすればいいの?
「そう心配しなくても大丈夫よ。ルイセの能力をちゃんと目覚めさせれば、テレパスブロックも働くわ」
 困ってるあたしをクェスさんが少し苦笑いを浮かべながら言う。
「今はルイセの能力、一方しか覚醒してないからね」
 一方しか覚醒してない……。
 そ、そう言えば……ガイが「俺はESP能力者だから、ESPしか目覚めさせることが出来ない」て言ってたけど…。
 って言うか、そんなこと分かるものなの?
「ガイが目覚めさせたんでしょう?あんまりほめられた方法じゃないけど…上位テレパシストのガイが相手じゃ、のんびり覚醒を待ってるって言うわけにも行かないものね。というわけで、ガイの能力は知っての通り、ESP所持者」
 クェスさんの言葉に頷く。
「通常プリマスのペアは、EPS能力者とPSI能力者の二人で形成され、その例外はないということは聞いてるわよね?」
 ………はい?
 それ初耳。
「ガイ、そのこと説明しないでどういう事?」
「説明する暇がなかったとは言わないでくれよ」
「…っ」
 ウィルさんとクェスさんの二人に睨まれて反論しようとしていたみたいだけど、ガイは結局黙り込んだ。
「全く。まぁ、そう言うことなのよ。能力の偏りがないようにっていう事なんだけどね。片方を無理矢理目覚めさせた場合、片方が閉じている状況になってるわけ。ちなみに、ガイが検知出来ないのはガイの力で目覚めさせたから。ガイの能力には反応するように出来てるのよね」
 もう頭のなかいっぱいいっぱいになってきてるような気がする。
「大丈夫かい?」
 ウィルさんが心配そうにあたしの方を見る。
 あっ、しまった。
 ウィルさんには全部筒抜け。
「な、何とかなるんですよね」
「もちろん。だから、あたしがいるのよ」
 あたしの質問にクェスさんは頼もしく言ってくれる。
 でも、どうするんだろう。
「クェスは、PSI所持者だからね。クェスに任せておけば大丈夫だよ。ちなみにクェスの得意領域は能力関知。テレパスの亜種に近いものだけど、コピーも出来たっけ?」
「コピーした一回だけね」
 よく分かんない能力だ。
 それより、PSIの覚醒ってどうするんだろう。
「無理矢理開けます」
 あたしの疑問にきっぱりと答えるクェスさん。
 いや、無理矢理ってどうするのよ。
「記憶容量を司る記憶野にアクセスして〜」
 はぁ?どういう事?
「まぁ、ともかく、そこに座ってくれる?」
 クェスさんに言われるがまま、されるがままに指定された場所に座る。
「そんなに怖がらなくても大丈夫よ。ただ目を閉じて深呼吸して、リラックスして」
 クェスさんの言葉のままに行動していく。
「少しおでこあたりが熱くなるけれど、我慢してね?」
 こっそり目を開けてみれば手がかざされてる。
 何が起きるか不安だけど、もう一度目を閉じて、深呼吸を繰り返す。
 次第に熱くなってくる額、というよりも頭の中。
 チカチカと目の奥が光って、暗くなっていく感覚。
 立ちくらみとか貧血にも似た何か。
 体温だけが上がっていく。
『……………………っっ』
 見える強い光。
『……!……』
 感じる強い思念。
『………………』
 遠くに見える風景。
 それが一瞬のフラッシュバックの様に現れた。

「ルイセ、大丈夫?」
 声を聞いて。
「目を開けてもいいわよ」
 言葉の通りに開ければ、心配しているクェスさんとウィルさん。
「気分はどうだい?」
「ウィルにはもう聞こえてないみたいだから大丈夫よ」
 ガイを思わず探して、ウィルさん達のすぐ隣にいて、何故かほっと息を吐いた。
「えっと、大丈夫?かな?」
 なんだかよく分かんなくって言った言葉に
「その調子じゃ不安だな」
 とガイがため息をつきながら言う。
「お前が言う言葉じゃないなガイ」
 そうよ、ウィルさんの言うとおりよ!!
「全く、お前はもう少し他人をいたわると言うことをしなさい。というわけで、休暇を言い渡すよ」
 ウィルさんはそうガイとあたし(主にガイにだと思うけど)に言った。
 きゅ、休暇って…、いきなり何でだろう。
「カーラ達やクェスとも相談したんだけどね、まだお前達はパートナーとなって短い訳だし、もう少し、コミュニケートという物をとった方がいいだろうと思ってね。明日から休暇してきなさい」
「相変わらず、むちゃくちゃなこと言ってくれるな」
「無茶だと思ってるのはお前だけだよ。マリーチは快く受けてくれると思うけど」
「俺とあいつを一緒にしないでほしい」
 そう言ってガイはため息をついた。
「まぁ、千瀬ちゃん、ガイのことよろしくね」
 ウィルさんはやっぱりあたしの事を千瀬と言ったまま。
 ガイは……名前を呼んでくれないまま、休暇をとることになった。
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