ファルダーガー

  第2章・1部 終章そして転章  

 あたしは今雨水の聖城の少し離れた離宮にいる。
 呆気無い…幕切れって言っていいのかな。
 ともかくあたしは元の世界に戻る事になった。
 でも、不安がなにか残る感じだった。
 一体何だったんだろう…あの声は…。
「ミラノ…支度できた?」
 ファナが呼びに来る。
 今日、あたしは元の世界に帰る。
「ありがとう、ファナ今…行く」
 …もうサガの怒った顔見れないんだ…。
 ふとそんな事を感じてしまった。
 もしかするとあたしはサガの事が好きなのか?
 …考えてもしょうがない…行こうっと。
「かわいいお嬢さん。どこかにお出かけですか?」
 上を見上げるとそこにはラテスがいた。
「…や、ミラノちゃん、久しぶりだね。でも今日帰っちゃうって言う話を聞いてね…寂しいな」
 ラテス……。
「何か浮かない顔だね。気になる事でもある?」
 ラテスの言葉に頷く。
「…声が聞こえたの。勝ち誇った…高飛車な笑い声」
「いつ?」
 ラテスにその声を聞いた時の事を説明する。
「分かった…大丈夫君は心配しなくてもいいよ」
 そうにっこりラテスは微笑む。
「ありがとう…ラテス」
 あたしはそうラテスに言った。
「ところで?ラテスって何者なの」
「言っただろう海の神だって」
 そう笑ってラテスはあたしの質問を交わし消えてしまった。
 本当に何者なんだろう……。
 サガはラテスの事を多分知ってて…カーシュは知らなくてガイア様は知ってるって言う事は…古代神か?
 でも…あたし古代神の名前知らないし…。
「ミラノ、いつまでみんなを待たせるつもりだ。ファナがお前の事を呼びに来てからどのくらい立ってると思ってるんだ!!」
 サガが起こりながら迎えに来る。
「きゃー、ごめんなさい!」
「ごめんなさいじゃないだろう。ほら…行くぞ」
 怒ってる。
 でも…ごめんね。
 帰りたいのかどうか判らなくって今は…もう少しここにいたいの。
『キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
 頭の中で鳴り響く大音量の叫び声!。
「どうした?ミラノ」
 突然立ち止まったあたしを心配そうにサガは振り返る。
「……なんでもない」
 とサガに言いながら自分に言い聞かせていた。
 そして、あたしはみんなの待つゲートに向ったのだ。
「ミラノ…これは君が持っているべきだ」
 と、バキア様に『双龍のメダル』を返そうとして逆に返された。
 でもさぁ、あたしが持っていても仕方ないんだけどね。
「元気でね、ミラノ。またあなたに会えるといいわね」
 そうだね、ファナ。
「元気でな、ミラノ。今度来た時はいろんな所連れていってやるよ」
 ありがとうカーシュ。
「ミラノ…元気で」
 サガは一言だけそう言う。
 でも、さっきさんざん話していたんだよね。
「ミラノ…オレはラプテフに戻る。こっちに遊びに来た時にはラプテフにおいで…」
 ってそう言ってくれた。
「ミラノ…多分君は必ずここに戻ってくる。でも、その時はまた君を助けに行くよ」
 ラテスはあたしがゲートに入る瞬間にそう言った。
 どう言う意味か確認しようとしたけど既に遅くあたしは転移をしていた。

 とある場所ではホルムが誰かと話していた。
「気分はどうだい?」
『誰だ…お前は…』
「私か?私はホルム…ホルム・トルニオ・リュクセル。では、お前は誰だ」
『オレは…オレは…』
 そして、言葉をとめる。
「…言いたくないのか?それとも知らないのか?」
『………』
 ホルムの言葉に黙り込む。
 人……そう、人なのだ。
 年の頃は17.8ぐらい。
 ミラノと同年であろうと思われる少年が一人。
 ガラスケースと思われる中にいた。
「ミラノ……と言う少女を知っているか?」
 ミラノと言う言葉を聞き反応を示すが…ほんの一瞬の出来事だった。
「知っているね…知らないはずはないな…」
 そう言ってホルムは彼がいる部屋から出る。
 部屋の前にはネイが待ち構えていた。
「ホルム、彼は何者なの?」
「分らない…だが自分の名前を言った時、彼は我々と同志になる。ただその時をジッと待つだけだ」
 そう言いながらネイの肩を抱いた。
「ホルム…?」
「ネイ……そろそろ始めようか…」
「え?」
 ホルムはネイにその言葉が届く前に消えてしまった。

 とある森の中…一人の女性の目の前にひと組の男女がいた。
 そこは森よりも深きところ。
 生きとし生ける者の生死を扱う…樹海…。
「やはり…この森がそうなんですね」
「その通りです。私はこの森の主にお仕えし…あなた方のような者を導く定め…。しかし、あなた方はまだ来てはならない」
 黒々とした長い髪を持つ女性はそう男女に告げる。
「何故です?私達はあの時死んだのではないのですか?神官メタよ」
「私の名前を知っていましたか…カバネルの長。あの時、私の主があなた方をこの地へと転移させたのです…」
 と、神官メタは目の前の一組の男女にそう告げた。
 
 とある湖の近く、一つの曲が艶やかなヴァイオリンによって奏でられる。
「パラ…チレニアの皇帝は既に死んでいたらしい…」
 一人の男性…いや女性…どちらとも言えない人物がヴァイオリンを奏でていた女性に声をかける。
「そうなの?オルト。じゃあ、皇帝が殺されたって言う噂も事実の様ね」
「あぁ…」
 そう言ってオルトは湖より遠くを眺める。
「心配?」
「何が」
「あなたの御兄妹の事よ…。お兄様と双子の妹さん」
 そうパラが言うとオルトは笑って答える。
「少しはね…。でも、あの二人はこっちの事なんて全然心配していないさ」
 と…。
「パラ…あの方がぼく達をお呼びだ…」
「その様ね」
 と、いいパラとオルトはその場を立ち去った。

 その頃ワール・ワーズは抜き打ちライブの打ち合わせをしていた。
 言い出しはチェスターである。
「相変わらず、こういう事を良く考えるよ、チェスは」
「ま、いいだろう。思いつきにしてもさ」
 マレイグの言葉にクロンメルが答える。
「しかし、カバネルでライブをするとは思わなかったな」
「そこがボクのねらい目なんだよクロン」
 クロンメルの言葉にチェスターが答えるがマレイグは何か釈然としない。
「なんで、カバネルが狙い目なんだ」
 チェスターは言葉を選びながらマレイグの質問に答える。
「カバネルの首都ではなく、聖都リラでやるんだよ。昔から聖なる地とされている聖都リラで」
「聖都リラ…か」
 とマレイグはチェスターの言葉を静かにくり返す。
「…ミラノ元気かな」
 チェスターの言葉にクロンメルは頷く。
「多分元気だよ。きちんと会って話してないけどね」
 というクロンメルの言葉にチェスターは何か思い付いたようだがその場では何も言わなかった…。

 気が着くと自分の部屋に居た。
 時間は数時間しかたっていなくって…。
 まるで、今までの事が夢みたいだった。
 なんか少しホッとしている気分だった。
 でも、今日から夏休み!
 夏を満喫するぞ!
 でも、次の日に夏を満喫できない様な事件が飛び込んで来た。
「みらの、知ってる?龍太郎君、昨日帰ってこなかったんですって」
 お母さんの話だと、龍太郎は連絡もなしに外泊をする人ではなく必ず家に連絡するらしいのだが…昨日の夜に限って連絡がなかったらしい…。
「誘拐かしらねぇ…」
 なんてのんきにお母さんは言ってる。
 そう言う場合じゃないと思うんだけど…。
 そんな様子を見てあたしはふと思い出した。
 龍太郎がネイにさらわれた夢を見た事を…。
 のんきに構えている夜をむかえあたしは夢を見た。
 龍太郎の夢…そしてサガの夢を。
 次の日龍太郎のお母さんは忙しかった。
 龍太郎の交友関係全てに電話を掛けまくって学校にも連絡して…。
 夏休みに入ったって言うのに大変だ。
 で、学校の方から担任の先生が龍太郎の家に来て居た。
 その夜、龍太郎の家の手伝いから帰って来たお母さんの話では龍太郎のお母さんは心配で疲れ切ってしまったらしい…。
 幼馴染みのあたしでさえ心配してるんだもの…。
 当たり前だよね。
 でも…本当にどこに行っちゃったんだろう。
 それから一週間…誘拐か?という思いは現実味を帯び龍太郎の家ではとうとう警察に捜索願いを出した。
 そして…あたしは不思議な夢を見るようになった。
 セピア色の風景。
 見た事もないような景色。
 そして、サガ、ファナ、カーシュの三人。
 ワール・ワーズやバキア様にエト様。
 ほかにあたしが出会った人々。
 フラッシュバックのように入り込んでくる、『大地の剣』、『炎の剣』、『氷の剣』と他のいろいろな物(多分これが『聖宝』だと……)
 『光の剣』は出てこない。
 なぜなら『光の剣』はあたしが持っている『双龍のメダル』にきちんとはまっているからだ…。
 そして、ある日夢がストーリーを持ち始めたのだった…。

 〜ファナ編〜
「急げー!城壁の守りを固めろ!我々にはファナ様よりお預かりした『氷の剣』を敵衆の手より守らねばならぬのだ!」
 リグリア王国内、ロマーニャ。
 ロマとナイルが生まれたとされる町で、リベール地方最大の都市である。
 そのロマーニャを治める、カプリ公爵。
 本名はマリーナ・ピッコラ・カプリ。
 若干、十九歳にて公爵の位となった女性である。
 そして、ファナの親友でもある。
「この、ロマーニャの城は鉄壁といわれた所。しかし、おごってはならない。そのおごりが自らの負けを生むのだ…」
 そう周りに言い聞かせながらカプリ公は自分にも言い聞かせた。
「マリーナ様に申し上げます。リベラルの町より伝令が参りました」
 マリーナが頷くと兵士は伝令を連れて来た。
「ロマーニャ城主のマリーナ・ピッコラ・カプリ卿に申し上げます。私はウォールナイト、ファナ・ネイピア・カイクーラ様より遣わされたウォールナイトでございます。ファナ様は現在、今朝リベラルを出立し、先程ロマーニャの郊外まで来て居り、こちらに先に御挨拶に参りました。」
「本当か?」
 と、マリーナの言葉に伝令は頷く。
「ファナ様が来るまで…我々は耐えねばならない…ファナ様が来るまで…」
 と、マリーナが呟く。
「ホーホッホッホッ。本当に甘い対応をしているのね」
 高笑いが外から聞こえてくる。
「誰だ!」
 と、マリーナが外に出る。
「何者?そんな言い方なさるのね。私は魔界八人衆の一人。ネイ・ラパス・サンラファエル。氷の剣を頂きに来ました」
「…まかい八人衆?魔界衆ではなかったのか?」
 ネイの言葉にマリーナはくり返す。
 その瞬間だった。
「も、申し上げます。マリーナ様、ただいま、ファナ様がこちらに参られました」
 その伝令の言葉にそれぞれ違う表情でマリーナとネイは驚く。
 マリーナは嬉しさで、ネイは…不意をつかれたような…。
 そして、ネイはその場を立ち去ってしまった。
「ネイ!!……。ファナ様…、お待ち致しておりました」
 立ち去ったネイを悔しそうにマリーナが見ている時、ファナが足早にマリーナの元にやって来た。
「カプリ公爵、久しく会わない間にすっかり公爵が板に着いたみたいで…」
「私など…まだ若輩者です」
「そんな謙遜しなくても…」
 と、かるく挨拶、雑談を交わす。
「雑談はこの辺にして…マリーナ卿、『氷の剣』は何処に?」
「御案内しましょうか?ファナ様」
 と、申し出るマリーナにファナは断る。
「何故?」
 その疑問にファナは静かに答える。
「あれは…私が持つべき物ではない。ある人が使ってこそ…本当に意味があるもの…」
 と…。
「ある人…とは」
「時期がくれば…あなたもあえる。さぁ、彼女がくるまでしっかり『氷の剣』を守りましょう」
 と、ファナは力強くいった。
 その言葉の中の『彼女』にマリーナは気になったが…深く追及する事が出来なかった。
 なぜならファナの表情はすでに『氷の剣』を守る決意でいたからだ。
 そんな自分を見るマリーナに気付きながらもファナは心の中で呟いていた。
『ミラノ……早く来てね……』

 〜カーシュ編〜
「ここは、カスピに行く、最後から二番目の砦。もう一つあるから大丈夫だなんて思っていたら、カスピの町はこの前のように壊滅してしまう。だからしっかり守らなくてはならないんだ」
 カーシュはカスピへの最後から二番目の砦にいる。
 なぜこの最後から二番目の砦…フィアットの砦にカーシュがいるのかというと、最後の砦に『スリーナイト』(『スリーナイツ』のナンバー1の総称)と『スリーナイツ』のナンバー2が控えているのでカーシュはここの砦にいるのである。
「カーシュ様、勇者様は何処に居られるのですか?」
 ふと、カーシュに質問をぶつける『スリーナイツ』の一人。
 思わず、カーシュはその事に着いて口を噤んでしまった。
 なぜなら、勇者であるミラノがこの世界の者ではないという事を知っているのは世界中でほんの一握りの人物のみなのである。
 そして、『スリーナイツ』の中ではナンバー1とナンバー2とサガ、ファナ、カーシュのみ。
 カーシュに質問をぶつけた者が知らないのも当然であった。
「どうかなさったのですか?」
「いや…ミラノは…勇者は今、修行の旅に出ているんだ…。オレも行きたかったんだが…一人で行くと言って譲らなかった…」
 と、カーシュは寂しく言う。
 本当の所を言えば、カーシュはミラノの後を着いて行ってみたかったのである。
 ミラノの住む世界に興味があったのだ。
 だが、世界のシステムがそれを許さなかったのである。
 『ファルダーガー』とミラノが住む世界は一方通行なのだから。
 ミラノは自分の世界から来たり、帰ったりする事はできても、その反対は『双龍のメダル』なしでは出来なかったのである(ミラノを迎えに行った、タリアは『双龍のメダル』と共に下に降りた)。
「カーシュ様、何を考えておられるのですか?」
「嫌…何でもない………」
「何でもないではないんじゃない?」
 長い沈黙の後の女の声。
 その声にカーシュは愕然となった。
「どうしたの?カーシュ」
 その問いにカーシュはゆっくりと振り向く。
 そこには一人の女性しかいなかった。
 そして、カーシュは二人っきりと言う事を確認すると一つの言葉を紡ぐ。
「…レス…」
「覚えていたのね」
 その女性の言葉にカーシュはゆっくりと頷く。
「…忘れる訳がない…。レス……レスティニアス、本当にいなくなるなんて思わなかった。今、何やっているんだ?」
「カーシュ…」
 一気に言葉を吐き出すカーシュにレスティニアスは冷たく言う。
「カーシュ、あなたが『スリーナイツ』…。もしくは勇者と共にいるなら、私はあなたと敵対する事になるわね」
「……レス……」
 カーシュはそう言ったきり黙ってしまう。
 レスティニアスも同様だった。
 長い長い沈黙が二人の間を通る。
 時折聞こえてくる風の音。
 沈黙をやぶったのは最初と同じくレスティニアスだった。
「いい事を教えてあげるわ。カーシュ、私は『魔界八人衆』として行動しているのよ」
「まかいはちにんしゅう?」
 聞き慣れない言葉にカーシュは首をかしげる。
「『暗黒集団”魔界衆”』の新名。地下活動していた私達は『魔界八人衆』として新たなる局面をむかえたの」
 カーシュに喋る隙を与えずレスティニアスは喋り続ける。
「それは、ロマ様の完全なる復活なのよ。三聖人や神の言う事なんか覆してあげるわ!」
 そう言い放ち、レスティニアスはその場所から消えた。
 それをカーシュはただ呆然と見ているだけだった。

 〜サガ編〜
「お客さんはどこまで行きはるんですか?」
 トゥルカ地方独特の方言の女性がサガに聞く。
 ここはラプテフのトゥルカ。
 トゥルカからショルドまでのフルース街道の道筋の茶店の出来事である。
 この世界の交通機関は発達しているが、修行の為に街道を歩く人々が後をたたなかった。
 サガもその一人で、オデッサ台地よりショルドの自分の家まで歩いて帰ろうとしていた。
「ショルドまで行きはるんですか?これは遠いですねぇ…。ところでラサって知ってはります?」
「えぇ、まぁ」
 サガは、しどろもどろに鳴りながら頷く。
 なぜならラサはサガの生まれ故郷なのである。
「何か、ラサでとんでもない事になっているらしくって…。噂では『トーニック』が動いているとか、いないとか。『トーニック』が動いているとなると結構、危険と違います?お客さんも歩いてショルドまでは危険ですよ」
 と、柔らかく茶店の店員は言う。
「大丈夫ですよ…御心配為さらなくても。お勘定ここにおいて行きます」
 サガは『大地の剣』を肩に背負い歩き出す。
「『トーニック』……」
 そう呟いて…街道を進み初めていた。
 『トーニック』、ラプテフの特殊捜査機関。
 そういう風に一般の人は認識していた。
 だが、サガは『トーニック』の事を異常に気にしていた。
 そして、空を仰ぎふと呟く。
「ミラノ………」
 と……。

 とある所。
「キャー!!」
 叫び声があたりに響き渡った。
「助けてくれ」
「誰か、助けて…」
 うめき声がそこら中に流れている。
「クックックックックック」
 そのうめき声に混ざって嬉しそうな忍び笑いが聞こえてくる。
「ハーハッハッハッハッハ」
 その笑いはしだいに高笑いへと変化していく。
 その恐ろしい高笑いにあたりの人間は恐怖に落ちていく。
 うめき声を発する人々の姿がしだいに鮮明になってくる。
 惨たらしい惨劇。
 手足が吹き飛んだ人。
 足がどろどろになっている人。
 言葉では表現しきれない…いや表現を拒みたいと思う程の惨劇が広がっていた。
 そしてその中心には嬉しそうな顔をしている男が一人。
「ハーハッハッハッハッハッハ。全て殺してやる。全てなくしてやる。全ては無の存在になるべきなのだ!ハーッ」
 と、気合いを男が入れると身体から目も暗むような光が発せられた。
 と、共に一瞬の叫び声。
 その声は誰の耳にも聞こえる程だったが誰の耳にも入らなかった。
 なぜなら、光がおさまった瞬間、男の周りにいた人々はその姿をとどめてはいなかったのだから……。

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアア」
 思わず叫んでしまった。
 そして、目を開けるとまだあたりは暗く、恐ろしさの余りに部屋の電気をつける。
 ファナが出てきて、カーシュが出てきて、サガが出てきて、そうして最後のシーン…。
 一瞬、寒気があたしを襲う。
 もしかすると、正夢なのかも知れない恐怖。
 最後のシーンが嫌にリアルなのも…正夢だからって言う感じがあるから。
 あたしはベットから降り、『双龍のメダル』を捜した。
 何かの思いがあたしの奥底にあったからだ。
 『双龍のメダル』………光ってる。
 淡く発光してる。
 ど、どうして…………。
 どうして、『双龍のメダル』が光ってるの?
『…多分君は必ずここに戻ってくる』
 ラテスの言葉を思い出す。
 その時はあまり気にも止めなかったのだけど…。
 何か、胸騒ぎがする。
 やだ、何だろう…この胸騒ぎ。
 もしかして、夢の通りになってるんじゃあ…。
 行かなくちゃ…行かなくちゃ!!
 あたしは、『ファルダーガー』に行かなくちゃならない。
 絶対に…。
 あそこには何かある。
 夢の事…そして龍太郎の事。
 だって、あたし『ファルダーガー』で龍太郎の夢をよくみたんだもん。
 おかしすぎるよ。
 こっちにいた時は全然見なかった龍太郎の夢。
 もしかすると、龍太郎は『ファルダーガー』にいるんじゃないんかって思い始めた。
 よし、行くぞ!!
 そう、思い立ちあたしは着替えて鏡に『双龍のメダル』をかざし適当に念じたのだ。
「あたしは、ミラノ・フォリア・ウォールス…。お願い、『双龍のメダル』あたしを『ファルダーガー』に連れていって」
 すると、一気に『双龍のメダル』が光りを強め光があふれ出すと同時にあたしは鏡に映っている『双龍のメダル』に吸い込まれていったのだ。

 とある山中
「エラン様…勇者はこちらへ来るのでしょうか」
 少女と思しき者が全身を闇色に包まれた男に言う。
「まずは間違いないだろう…そう案ずるなモルよ。そなたは私の神官。やるべき事を考える事だ」
「……はい、そうですね。では、まず霊都サルバトスに行ってまいります」
 と、モルと呼ばれた少女は消える。
「案ずるな…か。それは誰に言った言葉かな」
 そう言い、エランは森の中へ消えて行った。

Copyright (c) 2005 長月梓 All rights reserved.