彼らが見る世界は綺麗だろうか。
彼らがいる世界は幸せだろうか。
あたしは、今の彼らがそれでも幸せである事を願わずにはいられない。
と言われたら違うと誰もが答えるだろう。
ルートさん=ヴィルヘルム少年かと言われたら、今はイエスと答えるしかない。
実際問題、アーサーのはた迷惑な『ほぁた』のブリタニアエンジェルのせいで、ルートさんはヴィルヘルムになってしまったのだから。
要素の一つとしてルートさんの中にある。
と言うべきなのだろうか。
あたしは、それを聞く事が出来ずに近寄ってきたヴィルヘルムに挨拶をしている菊ちゃんの言葉をぼーっと聞いていた。
「私は、東の国から参りました。本田菊と申します。……ジパングと言えば分かるでしょうか…」
日本の事をジパング(黄金の国)と呼んだのは、彼のマルコ・ポーロだ。
彼はドコの人だっけ?
「あぁ、東方見聞録は読んだ事ある」
「それは良かった」
菊ちゃんはヴィルヘルム少年の言葉ににっこり微笑む。
時代が違うが彼的には良いのだろうかと思うのだけど、まぁいいかぁなんて思ってしまったり。
それよりも、足下からあたしを見上げてるちびロヴィとちびフェリが、どうしたらいいの。
可愛すぎるんだけどっっ。
「あ、あのおねえさん。お名前教えてください」
「あたしの名前」
「はい。ぼくはフェリシアーノ・ヴァルガスっていいます」
「オレは、ロヴィーノ・ヴァルガスっていうんだ」
顔を真っ赤にしてしゃべる二人が可愛すぎて。
「うにゃ~~~、菊ちゃ~ん、ロヴィーノとフェリシアーノが可愛すぎる」
思わず抱きしめてしまったよ。
いや、もう、コレは抱きしめざるを得ないよっ。
「う、お、お、おい、このヤロ、なに、すんだよ……するんですか……このやろ……」
「お、おねえさん。苦しいです」
フェリシアーノも可愛いけど、ちびロヴィが可愛すぎる。
顔真っ赤。
「ロヴィーノ、トマトみたいやわぁ」
「アントーニョみたいな事………いうなよ……」
「うん、ゴメンね。そうだ、お姉ちゃんの名前だよね。お姉ちゃんは月島樋乃っていうんだよ。菊ちゃんの妹じゃないけど、妹みたいな???よく分かんないけどまぁそんな感じ?」
「そうなんですか。あの、あの」
「なに?フェリシアーノ」
「えっと……そろそろ離してもらえないとぼく…お仕事しなくちゃ…ならなくって」
とフェリシアーノがローデリヒさんの方をちらちらと見ながらいう。
そっか…ちびフェリはローデリヒさんの家で召し使い家業か…。
よし、良い事思いついた。
「今日はお仕事無視でお姉ちゃんと遊ばない?」
「で、でも……」
「大丈夫、ローデリヒさんにはお姉ちゃんから遊んで良いですかってお願いしてあげる」
「本当ですか?」
「うん。だから今日はお姉ちゃんとロヴィーノと、あとヴィルヘルムと一緒に遊ぼう」
「あいつもいっしょなのかよ」
「そうよ。一人だけ仲間はずれはダメだからね」
「………樋乃がいうなら……いいけどよ……」
すねるロヴィーノが可愛い。
フェリシアーノはまだ不安げにあたしとローデリヒさんを交互に見る。
「ローデリヒさん、フェリシアーノと遊んでも良いですよね」
フェリシアーノの不安を解消してあげるために、あたしはローデリヒさんに聞く。
「構いませんよ」
ローデリヒさんはそう言う。
「良いって」
「ホント?ホントですか?ローデリヒさん」
「えぇ、今日は自由に遊びなさい。ただし目の届くところにいるんですよ」
「ホントのホントに良いんですか」
「くどいですよ、フェリシアーノ」
「あ、はい。ありがとう、おねえさん」
にっこり笑うちびフェリ。
うわぁ、可愛い。
「いや~~~、可愛いっっ」
「おねえさん、くるしいです」
うわ~~~、これが、これが
「アントーニョさん、コレが楽園ですか」
「せや、コレが楽園や。二人とも可愛いやろう」
「はい。菊ちゃん、ちっちゃいは正義だね」
「そうですね」
はぁ、これスゴい幸せ~~。
よし、何して遊ぼうかなぁ。
外はそんなに暑くなかったし、日本みたいに猛暑で死ぬほどじゃないし。
むしろ、涼しいし!!
外で遊ぼう。
「子供は外で遊ぼう!!!と言う事で、庭に出よう」
ちょうど、あたし達がいる部屋の目の前は庭園が広がっている。
ローデリヒさんお気に入りの花壇もすぐ側だ。
木々も適度にあるし、外に行こう。
フェリシアーノとロヴィーノと、嫌がるヴィルヘルムを連れてあたしは庭に出る。
部屋の中まで入っていた風が外では余計に感じる。
「本当に遊んでいいんですか?」
「いいんだよ。じゃあ何しようか」
何がいいかなぁ。
「何か、したい事ある?」
「したい事……うーん」
「したい事?シエスタ」
ロヴィーノ、即答かよ……。
「あ、したいです。シエスタ」
フェリシアーノまで……。
あぁもー却下。
「まだ、シエスタの時間じゃありません。まずは遊ぶんです」
よし、ココは強制的に鬼ごっこだ。
「かくれんぼじゃ大変だから、鬼ごっこだ!じゃんけんで鬼を決めて、」
「じゃんけんって何ですか」
はい~~~?。
フェリシアーノ、今、なんて言いました?
「樋乃、じゃんけんは基本ヨーロッパにありません。つい最近、入ってきたようですが」
ま、マジデカ!!
そんな話初めて聞いたよ。
日本だけのかよ。
「じゃんけんなら知ってるぞ。カナダで選手権があったな」
「選手権って何?アーサー、それ」
「選手権って……国際じゃんけん選手権に決まってるだろう」
いや、じゃんけんって、選手権にするほどの物じゃないと思うけど……。
って事は、この子達には最初から教えないとならないのかorz。
とりあえず、教えて(興味津々なアントーニョさんも一緒。ギルも来た)
「と言うわけで、負けた人が鬼ね。勝った人が逃げる!よし!いくよ、最初はグー、じゃんけんぽん」
「樋乃が一抜けですね、相変わらず強いですねぇ」
「そんな事ないよ」
コツさえ覚えれば、大体は勝てる。
何のための、『最初はグー』だ。
つられてチョキを出す面々がいるのならば、簡単だよ。
グー、チョキ、パーを連呼して覚えさせればね。
「樋乃、逃げるぞ」
とあたしの手をつかんだのはヴィルヘルムだった。
「え?」
「樋乃の次に勝ったのはオレだ。あいつらから逃げるっていうのも面白そうだな」
そう言ってあいこ状態に陥ったギル、アーサー(なぜか混ざってる)、アントーニョさん、フェリシアーノ、ロヴィーノの5人に楽しく合いの手入れてる菊ちゃん。
「そうだね、逃げよう!!
あたしとヴィルヘルムで先に逃げる。
さて、鬼は誰かなぁ~。
「では、ロヴィーノ君かフェリシアーノ君が鬼になったら私が補助に入りましょう。彼らと共に追いかけますよ」
ちょっとだけ忍者モード?な菊ちゃんにフェリシアーノは喜んでとロヴィーノはヘヘヘってあざ笑ってる。
「菊はすげーんだからな。お前ら絶対逃げられねーんだぜ」
昔の話か?
そっか戦国時代って……南蛮さん渡来の時かぁ。
「でも、お二人のどちらかが負けなくてはならないですよ」
「負けんのかよ。それはそれでムカつく」
「うーん」
再びじゃんけん開始。
じゃんけんで負けたのは。
「な、何でオレなんだ。別に、オレはやるなんて一言も言ってないぞ!!」
「アルトが鬼や、ロヴィ逃げるで」
アントーニョさんがロヴィーノを抱える。
「アルトの奴が鬼、だっせー」
「うるせー。テメェにいわれたくねぇよ。ギルバート」
「フェリちゃん、ぼーっとしてるとあの眉毛につかまっちまうぜ」
「は、はい」
ギルが伸ばした手にフェリシアーノはつかまる。
「それでは、皆さん、逃げてください、アーサーさんが鬼になりますよ~~。まずは、10秒のうちに出来るだけ逃げてください。10、9、8、7、6、5、」
なんでカウントダウンだ、菊ちゃん。
「お、オイ。菊、オレは別に」
「4、3、2、1。さぁ、アーサーさん追いかけてください!!」
「え、お、仕方ねえ、行くぞっ」
アーサーが追いかけ始める。
近くにいたフェリシアーノだったり、ヴィルヘルムだったり、なぜあたし!!だったり、ロヴィーノだったり。
最初は鬼になる事戸惑ってたアーサーだけど、そのうち楽しそうに追いかけ始めた。
子供の扱いが何となく旨いななんて思った見たり(アルの小さい頃は構っていたのかなぁなんて)
ちびフェリがつかまりそうだったところをヴィルヘルムが助けにいったり、ちびロヴィはあたしを盾にするし(全く、困った子だ)。
って言うか、あたしまで追いかけてくるしっっ。
近くにいたギルの背中に隠れてみたけどね。
隠れたら鬼ごっこにならないだろうなんて文句言われたけど、鬼ごっこだもん、何でもありだもん。
と言う事を武器にしてあちこちに逃げ回る。
高おにとかいろいろ混ぜてみて、つかまらない様にして。
庭に広がる笑い声とか、アーサーとギルとアントーニョさんの怒声とか、全部混ざって。
ゆったりと午後の庭を包んでいく。
ゲストルームのお茶会はテラスのテーブルに移っている。
気づいたらちび達だけで遊んでた。
あたしは一抜けしたんだよ。
最期まで遊んでたのはギルとアントーニョさんで、アーサーも早々に抜けだしてた。
「あいつらはガキか」
なんていうけど、結局混ざってたアーサーも子供っぽいような気がするんだけどなぁ、なんてね。
「お姉さん、あの、あの」
「何、フェリシアーノ」
「あの、あの」
なんだかもじもじしてるフェリシアーノが可愛い。
「ねぇ、フェリシアーノ」
「何ですか?」
「抱きしめていい?いいよね」
「え?」
あぁ、もう可愛い!!!
「あの、あの。僕、あのっっ」
なんて可愛い生き物なんだ。
やっぱり、ヨーロッパのお子様のかわいさは異常だね。
フェリシアーノとロヴィーノなんて天使みたいだよ。
うはぁ、聖歌隊に参加してたフェリシアーノ見てみたかった。
今じゃすっかりナンパになっちゃって。
お姉さんは悲しいよ。
「お姉さん、苦しいです」
「あ、ごめんね。フェリシアーノ」
強く抱きしめ過ぎちゃったかな。
ちょっと、反省。
「お姉さん、あのあの、笑ってください。笑った方が可愛いです」
って……ちょっと反省してただけなのに…そんなちびの頃から君は軟派しーかい。
「うん、ありがとう」
もう、参ったなぁ。
「オイ、樋乃。っっっ」
「何?ロヴィーノ」
ちびロヴィがなんか不満そうにちびフェリの隣にやってくる。
「バカ弟ばっかり……ってんじゃねー………よ」
もしかして、君は……。
「あぁ、もうっっロヴィーノっっ」
うにゃ~~、何、この子、すねてるの?
「ロヴィーノおいで」
「えっ?べ、別にそんなんして欲しくって………言った訳じゃっ……ねーん…だから……な」
「いいからおいで」
強制的に抱きしめてやるっっ。
「く、苦しーぞ、このやろー」
「もう、すねないの」
「すねてねーぞ」
「拗ねてるのよ。ロヴィーノは。そんな拗ねなくったってお姉ちゃんはロヴィーノのこと好きだからね」
「ほ、ホントかよっ」
「うんうん」
もう、可愛いよ、ロヴィーノっっ。
顔真っ赤にして、うつむいてるのはもう、真っ赤な顔がもう、ホントにトマトみたいで。
「トマトみたい。って言ったら怒る?」
「怒るっ。けど…樋乃なら…いい」
うにゃーっ、可愛いっっ。
幸せっ。
ふと、ちょっと離れたところにヴィルヘルムがいる。
よし、今日はお姉ちゃんモードだ。
「ヴィルヘルム」
呼んで、捕まえて、ついでに抱きしめてみる。
「な、何でオレまでっっ。オレはまずい。お前、あいつが、怒るから。あいつが、拗ねるから」
ヴィルヘルムが視線を何処かに這わせながら言う。
もう、いきなり出てきたあいつって誰だ!
「あいつって誰?お姉ちゃんは知りません。いいの。あたしは自由にやるの。君を抱きしめたいと思ったからお姉ちゃんは君を抱きしめてるの。文句ある?」
「いや、え、あ、あ、くっそー」
いやーん、可愛い。
ヴィルヘルムも可愛いじゃないか。
そうだよな…神聖ローマだって可愛いよね。
ちっちゃいもん。
「ヴィルヘルム、少しは素直になっても良いのよ」
「エリザベータ。別にオレはっ」
「可愛い」
エリザの言葉に顔を真っ赤にするヴィルヘルムはやっぱり可愛い。
「あぁ、もういい。樋乃、そこにいろ。いいな」
あたしから無理矢理抜けだしてヴィルヘルムはフェリシアーノとロヴィーノと共にローデリヒさんの自慢の花壇に向かう。
「大丈夫?三人だけで」
「問題ない」
背中に声を掛ければそう一蹴されてしまった。
まぁ、そうか……居たんだもんね。
なんか、不思議な感じ。
お子様三人の声がしなくなって、庭は静けさを取り戻す。
「どないしたん?」
あたしの隣にアントーニョさんが座る。
「今、幸せなのかなぁって……」
「何が?」
「気にしないでください。あたしの独り言ですから」
庭にまた戻ってうろうろしているお子様三人組を見て思う事。
多分、全然、意味の無い事だと言われてもおかしくないだろうけど。
この頃の彼らからして、今の彼らは幸せなのだろうかと、思ってしまったんだ。
例えば戦国時代だったとして…500年以上前の彼らと今の彼らの中はどうなのかな…って。
比較するのも間違っているって思うけど……。
「いつでも幸せやったで」
「あ、アントーニョさん?」
アントーニョさんはあたしが思っている事を見透かしていたらしい。
「親分の言う事や、間違いあらへんやろ?」
確かに思い出せばフェリシアーノはいつでも楽しそうだし、ロヴィーノだってそうだ。
ルートさんも楽しそうと言う表現は違うような気がするけど…うん同じだ。
「ちゃんと、幸せやで。今も、昔もな」
「だったら、いいな」
ちびフェリとちびロヴィが喜んでる姿が見えた。
喜んでいるというかじゃれ合っているって言うか、喧嘩してるって言うか。
おろおろしてるヴィルヘルムがなんか可愛くって笑ってしまった。