いつか大きくなったら、迎えに行っても良いですか?
僕達が大きくなれるのはいつになるのか分からないけれど、いつか絶対、大きくなって迎えに行きたいんです。
欲しいのなんてほんの少ししかなくって、一つ二つしかなくって。
あいつの願いはほんの少ししかないってオレは知ってるから、なかなか言わないあいつの代わりに、オレが言うから。
だから、そこで笑っていて。
花壇から戻ってきたちび達があたしの前にやってくる。
「何?」
「あの、コレ、もらってください」
と可愛い花をちびフェリは持ってきた。
「オレもあるからなっ」
と顔を真っ赤にして差し出すちびロヴィ。
「二人ともくれるの?ありがとう」
小さな花。
ピンクと白の花弁。
なんて言う花かな?
「デイジーやな。フェリちゃん達の国花やで」
「そうなんだ」
コレが、イタリアの国花か、可愛いね。
「お姉さん、あの、大きくなったら迎えに行っても良いですか?僕のお嫁さんになってください」
「まだ、ちっこいけど、大きくなったら、迎えに行くから待ってろよな。白のウェディングドレス着ろよな」
といきなりちびフェリとちびロヴィに言われる。
「あら、二人とも可愛いわね」
エリザがこっちの会話に気づいていたのか、ロヴィーノ話しかける
一生懸命お子様口調で言ってくる二人はあまりのかわいさにどうして良いか分からなくなるんですけど、どうしたらいいですか?
なんて言ってる場合じゃなく。
可愛いお子様からの告白。
無邪気だから可愛いなぁ。
お嫁さんなんて可愛いなぁ。
「うん、いいよ」
「簡単に返事したらあかんて」
「何でですか」
アントーニョさんが言う。
「よお、考えてみぃ、この子等がちっこいのは今だけやで。明日になって元に戻っとって記憶あったら」
……………………うわぁ。
戻ったイタリア兄弟に迫られるのか……。
ちょっと、それはしゃれにならないから勘弁して欲しいなぁ。
それは困る。
それに、そう言えば(忘れてないけど)、あたし約束したんだっけ。
「何をですか」
「お姉ちゃんはずっと一緒にいると約束した人がいるんだよ」
「えぇ〜〜〜」
あたしの言葉にフェリシアーノとロヴィーノは泣きそうだ。
「誰ですか?」
「誰だよ、このやろー」
「うん、菊ちゃんだよ。あたしね、菊ちゃんとずっと一緒にいるって約束したんだ」
今月に入ってすぐにね。
「そんな約束してもうたんや」
「してもうたって……別に菊ちゃんから言ってきた訳じゃなくってただ単純にあたしが居たいから、菊ちゃんと一緒にいると……約束したんです」
だから、フェリシアーノとロヴィーノと一緒には居られないんだ。
「そうなんや、フェリちゃん、ロヴィ。親分もな応援してやりたいねんけどな菊じゃあしゃあないなぁ」
「菊か」
「菊さんはそんなにスゴいんですか?」
「あぁ、めっちゃスゴいで〜〜。ちゃんのお兄ちゃんはなぁ。お兄ちゃん相手じゃ勝たれへんやろ?」
アントーニョさんは菊ちゃんの武勇伝(知ってる奴:主に戦国時代)を話してる。
「アントーニョさん、一応、お兄さんに耀さんも入れてあげてください。あの人一応自称兄ですから。に好きな人が出来たっていったら…何をしでかすでしょうねぇ」
菊ちゃんは苦笑いを浮かべながらアントーニョさんに言う。
何をしでかすか分からないって…にーには………………そんな事無いって言えないのがなんか困ったなぁ。
「でね、菊ちゃんの夢はあたしを嫁に出す事なんだって」
「せやけど、菊はちゃんがお嫁さんに行ったら絶対泣いてもうてまうやろうな」
「うん、だからね、菊ちゃんは婿取る気まんまんだから、あたしは嫁に行かれないのです」
「そうなんや、自称兄貴もおるんは大変やんなぁ」
「でも、楽しいよ。あたし、お兄ちゃん欲しかったから。ずっとお姉ちゃんやってたから、お兄ちゃんって言う存在にあこがれてるんだよね」
だから、まぁ、お兄ちゃんって思えないけど、にーにも、菊ちゃんも居てくれて嬉しかったりする。
「やっぱ、……今でも………お姫さんなんやな」
え?
「大事にされてるって言う話や。それからなぁ、ロヴィ、フェリシアちゃん、ライバルは他にもおんねんで。親分が知ってる限りは二人や。一人は殺したいねんけどな」
殺したいって言葉が不穏。
もう、なんでみんな言葉尻が時々不穏になるんだろう。
「あら、アンタル、気が合うわね。でもあたしは二人とも殺したいのよ」
え、エリザまで何を言ってるの!!
にっこりと微笑んでるエリザが微妙に怖すぎます。
だから、みんな言葉尻が不穏なんだってばぁっ。
「安心してください、お二人とも。私の目の黒いうちには誰にも手出しさせませんから」
「菊さんがそう言うのなら安心だわ」
………今思った。
菊ちゃんの目の黒いうちって……いつまでだろうなぁ。
なんだかんだ言ってずっとありそうだ(それはそれでいいんじゃないのか?)
良いんだよね。
「、コレを受け取れ」
「ヴィルヘルムもくれるの?」
「あぁ。……………………………でも、コレはオレからじゃないからな」
ん?どういう意味?
「あいつが………」
そう言って、ヴィルヘルムはうつむく。
「いいから、受け取れっ!」
そう言ってヴィルヘルムは青い花をあたしに押しつける。
「まぁいいや、ありがとう」
綺麗な青の花だ。
「なんや、嬉しそうやな」
「そりゃ、花をもらって嬉しくない女の子は居ないですよ、アントーニョさん」
「そやなぁ」
アントーニョさんはあたしの言葉に納得する。
「これなんて言う花?」
青い花。
見た事ない。
「どれですか」
「コレ〜〜」
菊ちゃんに見えるように見せる。
「そちらは、矢車菊ですね。ドイツの国花ですよ」
「綺麗な青だね」
「コーンフラワーブルー。サファイアの青だからな」
アーサーが教えてくれる。
「そうなんだ……」
ふわぁ〜〜。
太陽にすかしてみる。
コレがコーンフラワーブルー。
「どないしたん?」
「あたし、宝石の中でサファイアが一番好きなんです」
「なして?」
アントーニョさんはあたしの言葉に疑問を浮かべる。
「あたしの誕生石だから」
青い、宝石。
ピアスでも何でいいから欲しいなと思ってるんだけど……高いんだよね、基本。
「……、一つ聞いて良いですか?」
「何?菊ちゃん」
「お前の誕生日は9月なのか?」
うぉ、アーサー。
菊ちゃんよりも先にアーサーに聞かれる。
「そうだよ、あたしの誕生日は9月。来月なんだ」
「なんで…」
「何でそれを言わないんですか!!」
え?
「…………聞かれなかったから……聞かれなかったら…言う理由がないよなぁと」
大体、みんなの誕生日って知ってるし。
それをきっかけに知るって事もないし。
アーサーは分かんないけど。
そう言えば、
「ギルの誕生日って1月18でいいの?」
「えっ?あ、あぁ」
つい最近、見ました。
プロイセン王国建国は1月18日って(正確にはプロイセン王フリードリヒ1世戴冠した日)。
「じゃあ、来月のの誕生日には盛大にお祝いしないといけませんね」
ちょ、菊ちゃん、な、何言ってるのよっ。
祝ってくれるのは嬉しいけど、盛大じゃなくてもいいって。
「何を言うんですか、貴女がココに来て初めての誕生日ですよ?大切な日ですよ。ここは私が腕によりを掛けてお祝いしますよ」
「もー……菊ちゃんは……。ありがとう、菊ちゃん」
菊ちゃんの言葉に思わず苦笑いを浮かべてしまう。
「僕もお姉さんの誕生日をお祝いしたいです」
「祝うからな」
きらきらした目であたしにじゃれついてるロヴィーノとフェリシアーノは言う。
「プレゼント、親分もあげたるな」
「別に大丈夫ですよ。気持ちだけで充分です」
「せやけどなぁ」
「あ、プレゼントと言えば、あたしちょっとだけ、夢があるんですよ」
「夢?」
「はい。抱えきれないほどのバラの花束?もらってみたいなぁって」
あり得ない、夢だww。
昔の少女漫画にありそうな、そんなシーン。
夢って言うか、まぁよく小説とかでのたとえに近いような物だよね。
あたしの言葉に周囲は固まる。
菊ちゃんだけは苦笑いを浮かべてる。
「菊ちゃん、あたし、変な事言った?現実的には無茶すぎるって分かってるけどさ。言ってみただけだったんだけど……?」
「えぇ、よくちょっと前のドラマや漫画の台詞でありますよね『抱えきれないほどのバラの花束』この際だから、真紅のを付けてみましょうか」
「うんうん」
実際もらったらどん引きするけど、言うだけならただで。
実際もらったら、邪魔くさくってどうしようも無いだろうけど。
ポプリにするにも、ドライフラワーにするにも多すぎるけど。
「実際、抱えきれないほどのバラの花束ってどのくらいの数なんだろう」
「そうですね……100本を実際に抱えた人を見た事ありますが。それでもまだまだですね」
マジデカ〜。
「もらうもらわないは別として抱えてみたいよね」
「、抱えきれないほどなんだから抱えられないと思いますよ」
「あぁ、そっか」
固まっている空気のを無視して淡々とあたしと菊ちゃんは会話を勧めていく。
その空気を破ったのはあたしの隣に座っていたアントーニョさんだった。
「あかん、あかんそないな事、言うたらあかん!!」
「へ?」
いきなりどうしたんですか、アントーニョさん。
呆けてるあたしにギルが言う。
「っそれ以上言うなっっ。マジで実行しやがったらどうするんだ!!!抱えきれないほどのバラなんて邪魔以外の何でもねえじゃねえか」
「ギルベルトの言うとおりです。御馬鹿さん、実際に実行されたらどうするつもりですか」
「そうよ、ちゃん。実行しかねない人が確実にいるのよ」
「そうや、皆の言うとおりや。欲しいなんて思うたらあかん」
誰かがマジでくれそうな勢いで言ってる。
………誰が?
「べ、別に本気で欲しいって言う訳じゃないよ。実際もらったら、どん引きするし、邪魔だし、それに」
そんなに好きじゃないんだよね、バラ。
ガーベラとかの方が好き。
「バラ、好きじゃないのか?」
アーサーが驚いた様に言う。
「まぁ…それ程、だから、『抱えきれないほどのバラの花束』うんぬんは、別に欲しいって言う訳じゃなくってあこがれって言うか。「そんな無茶を言うな」っていうツッコミを待っているボケって言うか」
そりゃ、花束をもらって嫌って言う訳じゃないけど。
もらえるのなら嬉しいけどさ。
って言うか、どうして、こんな話になったんだっけ?
すっかり忘れてしまいましたよ。
あたしの誕生日の話だ、そう言えば。
はぁとため息が出るところであたしはすっかり遊び疲れて眠ってしまったフェリシアーノとロヴィーノとフェリシアーノの手をつかんでるヴィルヘルムを見て思わず和んでしまった。
ため息も忘れちゃった。
ってもう一つのため息もを思い出しました。
「それより、フェリシアーノ達、ホントに戻るの?」
「…え………。多分」
アーサーは私の質問に視線をうろつかせる。
「ヨンスさんは一晩寝たら戻りましたから、多分大丈夫だとおもいますよ」
「だと良いけどよ。アルトゥーロ、これは貸しだからな」
「う、戻るに決まってるだろう」
ギルを初めとした皆にアーサーが囲まれてる。
幸せそうな、フェリシアーノとロヴィーノとヴィルヘルム。
戻ったら大変だななんて、人ごとの様に思ってみた。
あたしもどうやら巻き込まれそうだって言う事だけは充分に分かってるけど。