舞踏会はまだまだ終わらない。
フロアは注目を集める人達がたくさん踊っている。
あたし?
……少しぐらいのんびりさせてください。
「、踊るんだぞ!!」
我が儘王様、HERO、アルフレッドが推参しました。
「が踊れるようになったって聞いたんだぞ。ギルバートに教わったんだって?まぁ、アーサーよりはましだと思うんだ」
「どういう意味だ!!こら」
「そのままの意味じゃないか。がアーサーの家に1ヶ月だろう?…グルメながアーサーのせいでめしまずになるじゃないか」
「ケセセセ、そりゃ言えてるな」
「オレの飯はまずくねー」
………あたしは、アルにまでグルメと思われているのか………。
そんなにあれこれアルの前で食べてたかな?
少しだけ、複雑なんですけど……ねぇ。
エルンストさんと踊って戻ってきたら即行、ロヴィーノに捕まりました。
「ロヴィーノ、少し休みたいんだけど……」
「分かってる。あんまり慣れてないもんな。でもこの1曲ぐらいだからな」
ロヴィーノの言葉に頷く。
フロアを見ればさっきからずっと踊ってる人もいる。
スゴいなぁ、よく体力あるよなぁ。
「、そろそろ行こう」
ロヴィーノがあたしに手を差し出す。
あたしが彼の手に重ねると甲に口づけされる。
「、」
顔を上げるロヴィーノのオリーブグリーンの瞳に何だかを感じたのは気のせいだと思いたいのですが……。
「どうした?」
なんだろう、緊張の度合いがフェリシアーノと違う!!
「なんか、ロヴィーノ、雰囲気違う」
「そうか?そんな事ないと思うけどな」
そう言ってロヴィーノは微笑む。
似てるのに違うんだよね…フェリシアーノとロヴィーノって。
「行こうか、」
フロアに流れるワルツ曲が終わり、あたしはロヴィーノに連れられてフロアにでる。
新たな曲が流れる。
ロヴィーノのリードで踊り始める。
「ムキムキの所に行ったときはどうなるかマジで心配だったんだけど、取り越し苦労ってヤツか?なんか安心した」
ロヴィーノのリードになれた頃、そう言われる。
「なんか、いろんな人に言われるよ、それ」
「いろんな人って?踊ったのオレとフェリとエルンストと菊だろ?」
「あとエリザ」
「エリザさん?」
あたしの言葉にロヴィーノは驚く。
そりゃ驚くよね、エリザと踊ったなんて言ったら(芋兄弟&眉毛は練習相手なのでノーカウント)。
「ウィーンでエリザが本番じゃ踊れないからって」
「あぁ」
ロヴィーノは納得する。
「、この後どうするの?」
「この後?」
不意にロヴィーノは聞いてくる。
正直、もう踊りたくないです。
口に出したって無理ですって言われるの分かってるから言わないけどね。
後、何人と踊らなきゃならないんだろう……。
疲れたよー。
「、疲れたって顔してる」
「まぁ……この舞踏会って何時に終わるんだろうなぁって思ったら…ちょっとね」
「オレと踊るのが嫌なのかよ」
ちょっとだけ泣きそうなロヴィーノ。
そ、そう言う意味じゃないんだってばぁ。
あぁ、誤解されるとは思わなかった。
「そう言う意味じゃないよ。ただ、後何人と踊らなきゃならないんだろうなって思ったら憂鬱になっただけで……。ロヴィーノと踊るのは楽しいよ。ホントだよ」
うん、それは嘘じゃない。
王子2号……と言ったらロヴィーノに失礼だけど、フェリシアーノとはまた違った王子様なんだよね。
踊ってるロヴィーノって。
フェリシアーノが優しい王子様だとしたらロヴィーノはちょっと危険な王子様。
「だったら、この後。何処かに行こうか、」
目を細めてロヴィーノは言う。
でも、何処か笑ってない?
「ろ…ロヴィーノ?」
あれ?
なんか、雰囲気変わったよ。
王子様空気が消えたよ?
「ドコが良い?が選ぶ場所ならドコでも構わないけど…。出来れば他のヤツらの目が届かないところが良いよな」
「ちょ、ちょ、ちょ、ろ、ロヴィーノ、何言ってんの!!」
冗談だよね?
「なんてな、冗談だよ」
なんか雰囲気戻った。
けど、あたしの『危険な』って言う感想はあながち間違ってなかったのかもしれない。
だって、ロヴィーノの雰囲気ってなんかマフィアっぽいんだもん(見た事無いけど)。
「オレが怖い?」
「え?」
怖いっていうか、なんか雰囲気が違ってビックリしたけど。
「別に…怖いとは思わなかったよ。ビックリしただけで」
「ホントか?」
ロヴィーノの言葉にあたしは頷く。
ほら、知ってる人だし、ロヴィーノだし、怖くないし。
「……やっぱり心配だな」
「何が?」
「って、慣れると誰にでも懐くってオレ分かったから」
「懐くって何?」
懐く?
え?
仲良くなったら、仲良くならないか?
そう言うレベルじゃないの?
「って最初、すっげー人見知りしてた。オレが顔を寄せても逃げたじゃん」
そう言いながらロヴィーノは顔を近づける。
いや、今もビックリだってばぁ!
「ほら、今は逃げない」
「今、どういう状況か分かってやってない?」
「さぁな」
そう言って爽やかに笑う。
あぁもう何だかくるん兄弟に振り回されてる感がひしひしとするよ!
「ってやっぱ無防備だよな」
だから、もうどういう意味?
*****
あたしの、ロヴィーノが言う所の『無防備』って言うのはある意味知らない人とは思えないって言うところにあると思うんだ。
読んでたし、知ってる声だし。
ほら、芸能人を知り合いのように思っちゃう感覚?
それに似てる気がする。
でも、そんな事、菊ちゃん以外には言えないけど。
だからって、ロヴィーノが過剰に言うほどの『無防備』では無いとおもうんだ。
うん。
*****
「、踊るんだぞ!!」
我が儘王様もといHERO、アルフレッドが推参しました。
本国での仕事がなかなか終わらなかったらしく、アルフレッドは遅刻してきたんです。
「全く参ったよ。突然に書類出されるとは思わなかったんだぞbooooooo」
「あのねぇ、フレッド、それは僕の台詞だよ。フレッドが今日締め切りの書類を僕に渡してきたのが問題じゃないか」
「だからって、せっかくのパーティーなのに遅刻させたのは君じゃないか。君はのんびりすぎるんだぞ、マット」
……誰?
アルの隣にいる人。
アルと同じ金髪で、同じスカイブルーの瞳で。
アルよりはちょっと柔らかくって、サラサラヘアーで。
……長いくるんとしたアホ毛が特徴的で。
もしかして…カナ……。
「えっと?アル、隣の人は」
「隣?誰だっけ」
「ひどいよ、フレッド。君には頼まない。もう、僕から挨拶するよ。初めまして、さん。僕はマシュー・ウィリアムズ。カナダです」
あぁ、やっぱりカナダさんかぁ。
「は、初めまして」
「よろしくね」
とマシューさんが手を差し出した時だった。
「はオレと踊るんだぞ」
とあたしが出そうとした手はアルにつかまれ、そのままフロアに連れて行かれる事になりました。
って
「アルっっ」
「何だい、」
「何だいじゃないでしょう?いきなりフロアに連行ってなくない?」
「ヒロインはヒーローと踊るものだからさ」
……いや、その理論、よく分からないから。
「って言うか、あたし踊り疲れた〜」
「オレは踊り疲れてないんだぞ。大体何人と踊ったんだい?」
「何人って…。今の所……」
数えてみる……。
「へぇ、まだギルバートとアーサーとは踊ってないんだ」
言われてみればそうだね。
でもギルはともかくとして、どうしてそこでアーサーが?
「君はアーサーと練習したんじゃないのかい?」
そう言えばそうでした。
「忘れてたのかい?アーサーのヤツ、不憫だなDDDDDDDD」
妙にテンションが高い。
いつもの事かとは思うけれども。
それよりも、あたしはアルのワルツに思いっきり振り回されてる気がする。
「上手いじゃないか。アーサーに教わらなくって正解だったね」
気がする以上の……完全振り回されてるあたしにアルは楽しそうに言う。
ふと、アルが黙る。
アーサーの悪口を延々と続ける(アーサーが帰った後も居たアルに延々と聞かされたんだよ)のかと思っていたんだけど。
「アル?」
何処か、遠く見てる?
ワルツ中に踊ってる相手を見ないのはどうかと思うよ?とは思うけど。
まぁ、あたしは見られるとかなり照れてどうしようかと本気で悩むんだけど、いつも(練習の時からだ)。
アルの視線はすぐあたしに戻り、苦笑を浮かべる。
「何でもないよ。アーサーににらまれてさ」
アーサーに?
なんで?
「DDDDD、アーサーはオレが君と踊ってるのが不満みたいなんだぞ。いつからあの調子なのか知ってるかい?」
ちらりとアーサーが居ると思われる方をアルに教わりながら見れば何処か不満顔のアーサーが見える。
「なぁ、アーサーはあぁやって怒ってるのさ」
何で怒ってるんだろう。
舞踏会で不満顔は問題じゃないのかな?
その時、あたし達の横をすり抜けるカップル。
確か、リトアニアのトーリス・ロリナイティスさんと……白金の髪がちらりと……ナターリヤだ。
「……」
ちょっとだけ不満そうな顔。
「アル、ナターリヤと踊らないの?」
あたしの言葉にアルは少しだけ目を見はる。
けれどすぐに苦笑いを浮かべる。
「踊らないね。彼女は踊らない、踊ってくれないんだ」
そう、アルは少しだけ寂しそうに言う。
なんだか、知ってるアルフレッドっぽくなくって不思議。
「着いたときに、誘ったんだけどね、完全無視さ。分かってたんだけどね」
アルは…やっぱりナターリヤが好きなのかな?
それを言っていいのかなんて分からないけれど。
「オレは…自分がどうしたいんだか、時々分からないんだ。いつものように突っ走ってもダメだって分かってる。けど、そうしたい自分も居る。正解がドコにあるのか、分からないね」
自嘲気味に微笑んだアルの表情にちょっとだけ寂しくなった。
「まぁ、今はこのときを楽しもうじゃないか。、付き合ってくれよ」
「この曲が終わるまでならね」
「もちろんさ、アーサーに見せつけてやるんだぞ!」
そんな見せつけるって。
「ざまみろ、アーサー」
楽しそうだな、おい。
まぁ、いっか。
*****
つまり、気にくわない訳だ。
はさっきからいろんなヤツと踊ってる。
菊の命令のはずは無いんだが、菊はが誘いを断らないのをニコニコしながら見てる。
だから、気にくわない。
止めろよ。
と言えたらどれだけいいか。
もう一人、苛々してるヤツを知ってる。
そいつと、一緒にされるのもムカつく。
だいたい、テメーが元凶だろうが!!!
*****
その場所に戻って椅子に座ってぐでーってなったら、
「、御下品ですよ」
とたまたまローデリヒさんに見つかって怒られた。
「疲れました。あり得ません。どれだけ踊らなくちゃならないんですか」
「あなたが誘いを全て受けるから疲れる事になるんですよ、御馬鹿。少し、断る事もなさい」
「そんな事したら……」
あたしの隣に座ってる菊ちゃんに目を移せば。
「国際問題ですよ、」
なんてにっこり笑う。
なんであたしがワルツ断ると国際問題になるんだかちょっと分からないんだけど、こういう状態なので
「鬼ー!!!ってなるんです。だから断れないんです」
助けてください、ローデリヒさん。
「なるほど、なら仕方ないですね。まぁ、今日はあなたの社交界デビューの日ですから、諦めなさい」
……何ですか、その理論。
「菊、を踊らせ過ぎじゃないのか」
キャ〜〜救いの神が来た〜。
救いの神はあたしの背後から菊ちゃんにそう言ってあたしの隣に座る。
「アーサーさん、そうはおっしゃいますが。あの時の衝撃はあなたもご存じでしょう」
「それは否定しないが……。けど」
「じゃあ、アーサーさん、をお願いします」
そう言って菊ちゃんは立ち上がる。
お願いしますって何をっ。
「私も、すこし外交でも」
そう言って菊ちゃんはフロアに向かってしまった。
で、残されたあたしとアーサー。
菊ちゃんって案外自由だよなぁとアーサーと顔を見合わせて笑った。