OPERA NIGHT〜極彩色の世界〜

 ベルギーの王立音楽団の奏でるワルツの音色に聞き惚れる。
 後でウィーンフィルとかベルリンフィルとかで聞いてみたいなぁ。
 やっぱり、ワルツだから、ウィーンフィルかぁ。
「何、考えてるんだ?」
「何って……後でウィーン・フィルでワルツ聴いてみたいなぁって思っただけだよ」
「そうか」
「うん。そう」
 ワルツの音色に合わせてフロアでいろんな人が踊っている。
 あ、菊ちゃん発見。
 相手はシャルロッテさんかな?
 少しだけ、目を閉じて音楽に身をゆだねてみる。
 いろんな人の会話が聞こえてくるけれど、それでも音楽に集中出来る。
「え?」
 ふと手を重ねられる。
 目を開けて見れば、隣に座ってるアーサーの手。
「あ、アーサー?」

 じっとあたしを見るアーサーのエメラルドグリーンの瞳に、思わず引き込まれそうになった。
『Could you dance with the ladykin and me?』
 え、英語〜〜。
 でしゃべられても分からないってばぁ。
「英語ぐらい覚えろ」
 苦笑いを浮かべながらそう言ってアーサーはあたしの手を取る。
「姫、どうぞ私と踊ってください」
 そう言ってあたしの甲にアーサーは口づけを落としのだった。

皇帝達の集まり 〜夜の舞踏会〜 3 

 フロアに連れ出されてあたしはアーサーと踊ってる。
 アーサーのエスコートは紳士然としていてさすが紳士の国の人って感じがする。
 フランシスさんは……『元ヤンだから、気をつけた方がいい』って言うけど。
 確かに元ヤンだろうけど、今までそんな風な感じを見た事がない。
 見ない方が良いのかもしれないけれど。
「どうした?」
「そう言えばアーサーとちゃんと1曲踊らなかったなって思ったの」
 日本で一緒に練習した時は曲かけなかったから。
「あの時は、ありがとう。練習台になってくれて」
「気にするな。オレが暇だったから練習手伝っただけだしな」
 そう言ってアーサーは少し微笑む。
「ねぇ、アーサー、あたし、ちゃんと踊れてる?」
 あたしの問いに彼は頷く。
「日本でも言っただろう。特に問題はないって。ロダリクが見ていたって菊が言っていたしな。ギルバートだけじゃ不安だったが…」
「あたしも、結構みんないろいろ言うから正直言って不安だったんだけどね。でも、ギルは結構丁寧に教えてくれたよ」
「それは、と踊れば分かる。それに、不安になる必要は無いと思う。……その、ちゃんと踊れてるから」
 やっぱり、ほめられると嬉しいな。
「ありがとう、アーサー」
「別に、ほめた訳じゃないんだからな、思った事を言っただけだからな」
「うん、ありがとう」
「……だからっっ。っっばかぁ」
 なんでそこで悪態つかれなくちゃならないんだか……。
 まぁ、そこがイギリス流ってやつで。
 流れる曲に合わせてアーサーと踊る。
 ふと気がつく…アーサーが機嫌悪いような??
 さっき、機嫌が悪いってアルフレッドが言ってたけど、アルが思うほどって言うか、全然機嫌が悪いようにはその時とちょっと前のあたしには思えなかった。
 でも、今のアーサーはちょっと機嫌わるい。
「アーサー、一つ聞いて良い?」
「何だ」
 声の調子が不機嫌醸し出してる気がする。
 紳士って不機嫌顔に出して良いのか?って言ってみたいんだけど……。
「どうしたの?」
「どうしたのって何処か変か」
「え?変って言うか……。機嫌が悪いような気がする」
 単なる気がするだけだから、それがデフォって言われたらどうしようも無いんだけど。
「あぁ、済まない。少しだけ不満な事があっただけだ。が気にすることじゃない」
 そう言ってアーサーは 笑顔を見せる。
 アーサーっていつも不機嫌そうな顔してるから笑顔って結構貴重なんだよね。
 だから結構好きなんだよね、アーサーの笑顔って。
 ワルツの音色に合わせて踊っていたらやっぱりアーサーが不機嫌になっていく。
「アーサー?」
「……………………………気にくわねぇ」
 は?
 ぼそっと、あたしに聞こえない様に言ったつもりだったんだと思う。
 本当に小さな声だったから。
「アーサー?何が気にくわないの?」
「あいつの笑いが聞こえる」
 あたしの問いかけにアーサーは答える。
 あいつの笑い?
 アーサーが言うあいつって誰だ!!!
「勝手にはさせねぇよ」
 ぼそっと呟いたかと思うと、アーサーは何処かを見る。
 アーサーの視線の先が気になったけど
、ステップ変えるぞ」
 はぁ?
 爆弾発言にどうしたらいいのか!
「は?アーサー、ステップって何?」
「良いから、オレに合わせれば問題ない」
 問題ないって……。
 あたしが戸惑っている間にアーサーは日本で一度だけアーサーと練習した踊り方で踊っていく。
 そんなアーサーにあたしはついて行くのが精一杯で。
、踊ってれば慣れるから」
 踊ってれば慣れるからって……あたしはワルツ初心者だってこと忘れてないかな?
「あいつの気配が消えれば別にいい」
「ねぇ、アーサーどういう事?」
 アーサーをじっと見ると我に返ったらしい。
「き、き、気にするな。こ、これはオレの問題だからな」
 訳、わかんないよ、アーサー。
 って言うか、かなりキツい。
 一回しかやってないんだから、踊れるわけないじゃない。
、後一曲付き合ってもらうぞ」
 ちょ、そんなぁ。
 初心者のあたしに2曲連続は無茶だってばぁ!!
 ワルツは体力が必要。
 …今更ながらに思い知らされた。

*******

 やっぱり、へばったわけですよ。
「アーサーさんも無茶苦茶しますね」
「もっと言って。やだって言うのに聞いてくれないんだもん」
 ホント、2曲連続なんてあり得ない。
「まぁ、コレも国際交流だと思って」
「さっきは外交って言った。少しっていうかもうやだ、絶対踊らない」
 そう言ってふてくされたあたしに菊ちゃんは困った顔をする。
「まぁ、今日は随分踊られてましたし……」
「誰のせいだ」
「済みません、私ですね。が踊っているのを見ているのが楽しくって。1ヶ月で随分と上達したと。まぁ、爺心だと思ってください」
 おじいちゃんは優しいものだと思います。
 なに、このスパルタ。
「もう、こんな無茶はさせませんよ。安心してください」
「ホント止めてよね」
「はい」
 あたしの………お披露目?って言うのがあるって知ってるから……何も言えないんだけど。
 何、この上流階級状態。
 はぁ。
 ちょっと、息苦しい、ここから抜け出したい。
「菊ちゃん、お手洗いって何処かな」
「この会場の外ですが…」
「分かった、行ってくる!!」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、すぐに戻ってくるから」
「アリョーナさん」
 すぐ側にいたアリョーナさんに菊ちゃんは声をかける。
「申し訳ありませんが、をレストルームに連れて行ってもらっても良いですか。一人にさせるのは心配で心配で」
「良いですよ(ドイーン)。菊さんがちゃんの事心配するの、私も分かりますから(ベイーン)。私もイヴァンちゃんの事が心配だし(バイーン)」
 ウクライナのアリョーナ・グラチェワさんはしゃべるたびに豊満なお胸の効果音が……ホントになるんだな。
「じゃあ、ちゃん、行きましょう」
「は、はい」
 アリョーナさんに付き合ってもらってお手洗いに向かう。
 場所が分からないから助かったのだけど……。
 個室に入って、ようやく一息つく。
 ホッと、息が出て、狭いけど、トイレの中だけど、なんだか、ホッと一安心した。
 息が詰まってたんだなって。
ちゃん、大丈夫?(ドドイーン)」
「あ、ハイ大丈夫です。今出ます」
 アリョーナさんの言葉に個室から出る。
「大変ね、ちゃんも(ボイーン)」
「そんな事ないですよ」
 と苦笑いで答えた。
 舞踏会の会場に戻ると運良くなのか運悪くなのか、上司につかまる。
 アリョーナさんに先に行ってもらうよう言って、上司の相手をする。
 うん、単なる「楽しんでいるか?」っていう話だったんだけどさ。
 相づちを打っていると目立つ銀髪が見えた。
 今までずっとあの場所にいたはずなのに、ギルはエリザに話しかけていた。
 エリザの事誘うのかな?
 エリザは絶対ギルとは踊りたくないって言ってたような。
 またフライパンの餌食になるんじゃないのかな?
 別に良いけど、エリザも、こんな人だらけのど真ん中でやらないだろうけど。
 上司に元の場所に戻る事を告げあたしは、元の場所に戻る……。
 気がついた、今あたし自由だ!!
 誰も周りにいない。
 もう踊るつもりないし、踊ってるのを見てるのもあきたし。
 抜けだそう。
 ドコにって踊ってる最中、見えたんだよね、大きなガラス窓の向こうはテラスになっている事を!!
 そっちに行っちゃえ。
 誰にも気づかれないように端の方から外に出る。
 涼しい。
 中は熱気にあふれてて正直暑い。
 クーラーはかかってるみたいなんだけどね。
 うっは〜〜、つかれた〜〜。
 テラスから夜空を眺めると綺麗な月が見えた。
 少し歩くと階段登場。
 ディズニーの……シンデレラのお城の舞台みたいだな。
 なんてそう言えば、グリム兄弟ってドコの人だっけ?
 ……まぁ、いっか。
 そんな事、今は聞こえてくる音楽と涼しい夏の宵にまったりしよう。
『Guter Abend der ladykin』
 風が気持ちいいなぁ、さすが、ヨーロッパ、湿気がない。
 昼間着物着ててもそこまで暑くなかったしなぁ。
 日向はさすがに暑かったけど、日陰に入ると涼しいんだよね。
『Was machen Sie?』
 突然、隣に人が登場。
 え?
 顔を見上げると金髪碧眼の男の人。
 誰?
 ドコの人?
『Konnten Sie mit mir tanzen, wenn es Zeit gibt?』
 そう言いながらあたしの手を取る。
 ちょ、ちょっと待って。
 あの、どちら様ですか?
『Es scheint wirklich eine Frau in Japan zu sein. Es ist sehr wunderbar』
 話が通じてない。
 何語?
 ドイツ語っぽいけど。
 これってナンパ?
 なんかもう近づいてくる〜〜。
 いや、もうホントごめんなさい。
 両手で相手を押しても彼はどんどん近づいてくる。
 ちょっと待って〜〜。
『Ah es tut mir leid. Ich sind Klemens Stolz. Fräulein, Wie ist Ihr Name?』
 もう、なんて言ってるか分からないよ。
「ホント、ごめんなさい。わたしドイツ語分からないんです」
 ドイツ語か!
 自分で言ってて気がついた。
 っていうかあってる?
 っていうか、誰か助けて〜〜〜。
 顔近づけてきた〜〜〜。
『Das, was gemacht wird』
 ふと声がする。
 ドイツ語だけど。
 あたしに顔を近づけてきた人も、あたしも声の方を見る。
 オールバックの銀髪の人。
 いやもう全部言わなくても分かる。
『Herr Gilbert・Beilschmidt・B・Königreich Preußen』
『Wenn es meinen Namen weiß, ist es sicher, was für eine Frau zu kennen, die der Japanerin neben Ihnen ist. 』
『Mir tut es leid. Ich komme früher als Ihre Exzellenz zurück.』
 そう言って、その人は足早にこの場を去っていく。
 た、助かったぁ……って助かってないよ。
 ギルが怒ってるよ。
 オールバックにしてるギルが怒ってるよ〜〜〜。
、何してんだ、てめーは!!」
 ぎゃ〜〜。
「ぎゃーじゃねえ、逃げんな、こら」
 逃げようと、回れ右をした瞬間、腕をつかまれる。
「お前は、何でおとなしく戻らねえんだ!!何であの場所にいろって菊が言ったか分かってねーのか?お前は!!」
「だ、だって…上司に呼び止められて戻るに戻れなくって、戻るのも面倒だしってそれに、なんか…一人になりたいなぁと…」
「一人になってコノザマかよ。こういう場所で一人になるって言う事がどれだけ危険か、もう少し考えろ」
「そんな事言われたって……」
 大体、初めてだし……。
 ちょっと抜け出すぐらい大丈夫かなって思ったし。
「どれだけ捜したか分かってんのか。オイ」
「??」
 捜した?
「エリザと踊るんじゃなかったの?」
 あたしの事、捜してたの?
「なんで、エリザベータと踊らなきゃならねーんだよ」
「エリザの事…誘ってたんじゃないの?」
 さっき……エリザに声かけてたよね。
「だから、何であの男女と踊らなきゃならねーんだって言ってんだよ。だいたい、あいつはお坊ちゃん以外の人間と踊ってるところ見た事ねーよ」
 そ、そうなのか。
 エリザって、ローデリヒさんとしか踊らないのか。
「あいつのパートナーはローデリヒがやってるからな。あと例外で、フェリシアちゃんか?」
 知らなかった。
 確かに、エリザはローデリヒさんとしか踊ってない気がする。
「あー、髪がベタベタだ。やっぱワックスはあんま好きじゃねえんだよな」
 そう言ってギルはオールバックを崩してる。
「なんか、勿体ない。ギルのオールバックって貴重なのに」
「良いんだよ、あんま似合わねえしな。、わびしろ」
「わびって?」
「俺様に捜させた詫びだ」
「何それ」
「髪、直せ」
 はぁ?ワックス着いてるヤツをどう直せと。
「早くしろ」
 そう言ってギルは頭を下げる。
「もう、しょーがないなぁ」
 どう直せって言うんだ。
 全く、もう一回オールバックにしてやる!!
 そっと、髪に触れる。
「くすぐってー」
 そう言ったギルはあたしが逃げ出さないようにか、両手を背後の手すりに付け、あたしを囲む。
「ぎ、ギル」
 か、かなり近いんですけど。
「勝手にいなくなってんじゃねえよ」
「……ごめん……なさい」
 聞こえないぐらいの声で、それでも届いた言葉にあたしは素直に謝る。
 菊ちゃんも……捜してるんだよね。
「危なすぎるんだよお前は、無防備で。抜け出したくなったら、一人で抜け出すな。他のヤツは文句言うかも知らねえけど、俺様が一緒に抜けだしてやるから」
 ギルの言葉に頷く。
 頷いたあたしにギルは笑顔を見せる。
 ギルが見せる笑顔はいつもホッとする。
 本当に楽しそうで嬉しそうなんだよね。
 ふと、ギルがあたしの手を取る。
 手の甲に口づけを落として目線をあたしに合わせる。
 不遜的なルビーの瞳がにあたしを見つめる。
「ぎ、ギル?」
『Sie sollten sich entscheiden, daß ich verteidige. Nehmen Sie bitte und tanzen Sie meine Hand.』
 って、ドイツ語で言われても分からないってばぁ。
「ギル、なんて言ったの?」
「ドイツ語ぐらい覚えろよ」
 ………その調子でいろんな人に言われたらあたしは何カ国語覚えなきゃならないんだろ。
 英語でしょ、ドイツ語でしょ、イタリア語、フランス語に、ノルウェー語に、スペイン語に、ロシア語に、ハンガリー語に、オランダ語に、後何語?
「ドイツ語だけにしろよ」
「で、なんて言ったの?」
「…………………………………。jaって答えるだけで良い」
 何、最初の沈黙。
 ホントなんて言ったの?
「気になるんだけど」
「おとなしく、答えろ」
「しょうがないなぁ……いいよ」
「良い根性してんじゃねえか」
「じゃあ、yes?」
「てめ、」
「えっと…………………………ja?」
「そこでクエスチョンマークはいらねーよ」
「そうだね」
 ギルがあたしの手を取る。
 聞こえてくるワルツの曲が替わるのを見越していたかのようにギルはあたしをリードしていく。
 踊っているギルはいつもの残念さが(って言うと小鳥の様な俺様のドコが残念なんだって余計残念な事になるから言わないけど)なくて…なんて言うか、雰囲気が全然違う。
 なんて言うか『あんなんでも』っていうのがしみじみと分かるというか。
 なんて言うか……こう、言うと調子に絶対にのるから言わないけど、ってさんざんドイツで苦労したんだ。
 スゴ〜いって言ったら調子にのる調子に乗る……。
 ルートさんに「あまり兄さんをほめるのは止めてくれ」って言われてぐらいだ。
 それ程ほめてないんだけどな。
 で……ギルは……なんて言うか、高潔な騎士っていうか、そんな感じがする。
 根本的なベースはギルは騎士なんだよね。
 黙ってれば、大人しくしてれば、調子に乗らなければっていう条件が付くんだと思うんだけど。
 ………………やっぱり誉めすぎてるのかな?
 もう一個気がついた。
「やっぱり、ギルが一番踊りやすい」
「そりゃ、そうだろ、俺様と一番踊ってるんだから」
「そっか。そうだよね」
 ギルの言葉に納得する。
 何だろう、練習の時は大丈夫だったんだけど、今、スゴく緊張する。
、うつむかないでちゃんとこっちを見ろ」
「え……だって」
 なんか緊張してるあたしにそれはないでしょう。
 気づいてやってる?
「練習の時は大丈夫だったじゃねえか」
「だって…」
 緊張してるなんて今更いえない〜。
「だってじゃねえよ。お前に教えた俺様が、言ってんだから安心しろ。ちゃんと踊れてる」
「うん…」
 少しだけ、顔を上げる。
 ギルはあたしの方を見ながら笑顔浮かべてる。
 あのケセセセな感じの笑い方じゃなくって、素直な感じの。
 それを見たら、緊張がちょっとだけほどけた。
 そうか…あたし、嬉しいのかもしれない。
 ホントは踊りたかったんだ、ギルと。
 だから緊張したんだ。
「なんか、今、楽しい」
「そ、そか、相手が俺様だからな」
「うん」
 また違うワルツが流れている。
 気がついたら2曲目で、誰もいないテラスで誰にも気兼ねせずに踊り続ける。
 今までで一番楽に踊れてるかもしれない…なんてね。

「何?」
「……行くぞ」
 へ?
 ワルツを踊るのを止めてギルは言う。
「行くってドコに」
「あいつらが居ないところだ」
 ??
 ギルがあたしの腕を取る。
 ギルの背後に見えたのは??
 はぁ?
 なんか、みんな居るよ。
 って言うか、エリザがフライパン、振りかざしてる。
「どこ行くつもりだ、テメェ」
「止まりなさい、ギルベルト!!!」
 アーサーの怒声とエリザの声。
 と同時に投げられるフライパンは、見事にギルに。
「ぎ、ギル、大丈夫」
 大丈夫じゃないと思う。
 なんで、こんなことになっちゃうんだろう。
、大丈夫?」
ちゃん見つけた〜〜」
 駆け寄ってくるエリザと泣き出してるフェリシアーノに抱きしめられるあたし。
 って言うか、この風景前も見たっていうか体感した。
 プラス菊ちゃんがホッとした顔で近寄ってくる。
、心配したんですよ。アリョーナさんから後からくるだろうと聞いたとき、すぐに戻ってくると思っていたら、テラスに飛び出していたなんて思いもよりませんでした」
「うん……ちょっと出てみたかったんだ。内緒で」
「そしたら、ナンパされたと言う事ですか………」
 ………は?
 菊ちゃん、今なんて言った?
「………菊、おま、どこから…」
「さて?」
 復活したギルは菊ちゃんに聞く。
 菊ちゃんいつから居たんだろう。
 ナンパされてたって言ったらほぼあたしがテラスに出てきてすぐぐらいから?
「だから、言ったじゃねえか。お前は無防備過ぎるって」
 ロヴィーノにそう言われる。
 な、ナンパされたのはあたしのせいじゃなくって。
 いや、あたしのせいか。
「うん、もう、ホントごめんなさい。さんざんギルに怒られました」
 今は謝っておこう。
 いや、抜け出したくなるんだけどさ。
「菊、コイツにを預けたのは間違いだったんじゃないのか?」
「あぁ?アルトゥル、テメェよりましじゃねえか」
「ギルバートの言うとおりだね、アーサーに任せるよりはギルバートにって言う菊の考えは正解だったと思うよ。ま、どっちもどっちだと思うけどね」
「アルフレッドっっ」
「アルフレート」
「DDDDDD」
「まぁ、アルの言う事は確かだけどね。お兄さん的には……………………………………一応ジル?」
「眉毛よりはましやな」
「眉毛ってなんだ、訂正しろ、アンソニー」
「俺様の方が良いっていえよ、眉毛なんかより」
「どっちもどっちなんだよ。お前達は。だから一応、眉毛よりはって言ってんじゃん」
「眉毛、眉毛っていうなばかぁ!」
「だから、どうして眉毛な君はそこで泣くんだい?分からないよ」
 …………あたしはこの状況が分からないよ。
 ギルには腕につかまれてるままだし、菊ちゃんは困ったように見てるし、
「お前は勝手にに抱きついてんじゃねえよ」
「良いじゃん、オレが兄ちゃんより先にに到着したんだから、オレが先なのは当然だよね」
「ふざけんな〜〜」
 あたしの背後でくるん兄弟が喧嘩してるし。
 この場から移動したい。
 悪友&アルはアーサーの事、からかってるし。
、大丈夫だった?無理矢理コイツに変な事されてない?」
 そう言いながらエリザはあたしの腕からギルの手を引きはがす。
「大体、コイツはいつまでの腕つかんでるのよ。ドコに連れて行くつもりだったわけ?白状しろ!勝手に取らないでよ、を。あんたっていっつもそう。あたしの大事な物ばっかり取っていくんだから!」
「別にいいじゃねえか」
「ふざけないで!良いわけないでしょ、」
 再び、フライパンを装備するエリザ。
「エリザ、国際問題にならないようになさい」
「はい、ローデリヒさん」
 …………いや、だから……。
 さぁ、はぁ。
「大変だね、ちゃんも」
「分かってるんだったら、止めてください、イヴァンさん」
「えぇ、だって面白いよ。僕は見てる方が楽しいからそれでいいかなぁ」
 何よそれぇ。
 確かに、イヴァンさんの言う事は分かる。
 見てるだけの方が絶対に楽しい。
 当事者って絶対に大変。
 はぁ、ホントこの場から逃げ出したい。
 逃げ出す方法ってないかな?
 誰かに助けてもらうしかない。
 あたしだけじゃ絶対につかまる。
 悪友&アーサーは問題外。
 当事者+危険人物だし。
 フランシスさんはあれだしアントーニョさんだってあぁ見えて結構あれだと思う。
 くるん兄弟は……ヘタレだし、無理だろう。
 ルートさんは頼りになると思うけど、ギルが泣いたり逆に変なスイッチ入ったら後が怖い(ドSだっていうし)。
 イヴァンさんは菊ちゃんが泣くからダメだし、菊ちゃんは何を言ってるんですかって却下してくる(穏やかそうに見えて実はドSだって事、あたしが一番知りたくないのに知ってる(T_T))。
「XDDDDDD、全く、アーサーはめんどくさいなぁ」
「めんどくさいって言うな!!」
 さっきからアルはアーサーをからかってる。
 ………あ、アルか!!
 アルフレッドが居たじゃん。
 アルはあたしのすぐ側だ。
 配置はこう、あたしの隣はギルからエリザに替わってる。
 後ろにはくるん兄弟だったり菊ちゃんだったり、ギルは悪友&エリザに囲まれてる。
 の隣にアーサー。
 で、アルは、今あたしの隣だ。
「ん?何だい
 あたしがアルの袖を引っ張ったのに気がついたのかあたしに問いかける。
「アル、お願いあるの」
 小声で言ったあたしにアルは耳を寄せる。
「何だい、。内緒な事かい?」
「お願い、あたしをここから連れ出して」
 アルしか居ない!
 菊ちゃんも泣かずに、アーサーも、ギルも手を出せない人って言ったら、まぁあれだけど、アルしかいない。
 本当は頼りたくないんだけど、この際しょうがない(ってホント、なんて言うか対アルの関係そのままだなぁ。orz)
「本気かい?
「うん、本気。アル、お願い」
「ん〜〜」
 そううなってアルは周囲を見る。
 周りはあたし達の事を気にしていない。
「OK、それはスゴく面白そうだ」
 そう楽しそうに笑って、アルはあたしを抱える。
「じゃあ、行くよ、!!!」
「了解!」
 みんなに当たり前だけど見つかる。
「おま、何やってんだ」
、ドコに行くんですか!!」
「アルフレッド、をドコに連れてくつもりだ」
 足から抱え上げられたあたしは誰がドコにいるのかスゴい分かる。
 このテラスには今日来てる国な人達が居て…。
「それはアーサーには秘密なんだぞ」
「アル、早く!!」
「了解」
 あたしが望んでる方向とは逆の方向に向かおうとするアルフレッド。
「アル、そっちじゃない、向こう!!」
 あたしが指す方向に向かわせる。
 あたしがテラスに出た入り口とはまた別の出入り口。
「アル、ストップ」
「何でこんなところに。本気で逃げたかったのかい?」
「違う」
 って、逃げないで。
 そこにはアリョーナさんとナターリヤが一緒にいた。
ちゃん、どうしたの?(ドイーン)」
「アル、ナターリヤと踊ってきて」
「はぁ?」
 あたしの言葉にアルと逃げようとしたナターリヤが驚く。
「な、何を言ってるんだい?」
「みんながココに来たら、責められるのはアルフレッド。逃げる方法はアルがフロアに出るしかないでしょう?」
「君だって怒られるんだぞ?」
「あたしは怒られるのは分かってるの、あたしからのお詫び兼ねてるの、早く」
、いきなり踊れって言うのはどういう事?私はっ」
「ナターリヤ、一人しか踊らないってわけじゃないでしょう?」
 エリザがローデリヒさんとだけしか踊らないみたいに、ナターリヤも一人としか踊らないって訳じゃない。
 だって、さっきナターリヤがトーリスさんと踊ってるの見た。
 彼女だったら絶対一人しか踊らないってなったら、トーリスさんじゃなくって絶対イヴァンさんだと思う。
「ここに来て、踊ったの、二人ぐらいじゃないの?あたし、踊りまくったから分かるけど、踊れる人だったら、もっと踊った方が楽しいの分かるよ」
 あたしは、まだ楽しいって所までは行ってないけど。
 大変の方が先に来たけど。
「アルは踊ってて楽しいと思う。実際、楽しかったよ。アルは…どう思ってたか分からないけど」
「オレも楽しかったんだぞ。は思っていた以上に踊れたしね」
「ありがとう、アル。だから、ナターリヤ、アルと踊ってみて。あたし、ナターリヤが楽しそうに踊るの見てみたいな…。何となく、ナターリヤはこう言ったら怒るかもしれないけど、アルと話してるとき楽しそうだよ」
 な気がするが付くけど。
 嫌じゃないよね。
 あの時は確かにそう思ったから。
 あたしが言ってる事は……多分、無茶苦茶な事かもしれない。
 でもさ……。
「でも…私は」
「いいじゃない、ナターリヤちゃん。(バイーン)踊ってきたら?(ブイーン)イヴァンちゃんにはお姉ちゃんから言っておいてあげる。ね(ベイーン)」
「姉さんまで、何を」
「OK。がそこまで言うんだったら、踊ろうじゃないか、ナターリヤ。付き合ってもらうよ」
 そう言いながら、アルはナターリヤの手をつかみその甲に口づけを落とす。
 うわぁ、やっぱり、絵になるなぁ。
「な、何をっっ」
 顔が真っ赤なナターリヤが、可愛い!!
「二人とも、行ってらっしゃ〜い!!」
 アルとナターリヤの背中を文字通り押してフロアの方に向かわせる。
 ちょうど曲が替わる。
「ナターリヤちゃん、楽しそう(ボイーン)」
 アリョーナさんさんは言う。
 ……楽しそうか?
 なんか、殺伐してるような気がする。
 し、失敗した?
、何をしてるんですか」
 一部始終見ていたはずの菊ちゃんが背後から言う。
「見たかったの。あたしが」
 アルフレッドとナターリヤが踊ってるのを。
「もの凄く今日が大変だったから、最後の最後で萌えを補充したかったの!!」
 他人の事より、自分の欲求優先!!
「とはいえ……いくら何でも」
ちゃん、ちょっと困るんだよねぇ。コレ。良い事何だか、悪い事何だか、僕としては微妙なんだけど」
 イヴァンさんにも責められる。
「いいんです。せっかくの舞踏会だもん、………必要ないでしょう?そう言うの」
 社交界だけど。
 いろいろ思惑絡むのぐらい承知してる。
「たとえ、それが春の夜の夢ごとしだろうが、たとえ真夏の夜の夢だろうが……夏至は終わっちゃったけど……」
「短くても……ですか」
「うん。だから、いいの」
 あたしの言葉にアーサーはため息付く。
「無茶苦茶だな」
「いいの、あたしが見たかったの。あの二人が踊るところ」
 萌えと、いろいろと。
 いろんな事、絡めなくたって良いじゃない。
 無茶苦茶言ってるのは、あたしが一番理解してるわよ。
「お前の言う事が正しいのかも、知れねえな」
「ギルベルト君も良い事いうね。でも僕は微妙な気持ちのままなんだよ。だから、君に責任取ってもらおうかな」
「ふ、ふざけんなぁ〜〜〜」
「な〜んて冗談だよ。ちゃんの言うとおり、折角の舞踏会だもんね、野暮な事はしないよ。ホントだよ」
 イヴァンさんはそう笑う。
「まぁ、ナターリヤが楽しそうだからいいか。なんで止めなかったんだって言われそうだけど」
「その時はお姉ちゃんが助けてあげるね(ドイーン)、イヴァンちゃん(バイーン)」
 アリョーナさんの言葉にイヴァンさんは困ったような顔をした。
「菊ちゃん、やっぱり踊りたい人と踊るのが一番だよね」
「………そうかも、知れませんね。で、は誰と踊ったのが一番だったんですか?」
「え?」
 突然、菊ちゃんに聞かれる。
 そこをつっこまれるとは思いませんでしたよ。
「一番の人?」
 ……………。
「オレだよね」
「オレに決まってんだろ」
「俺様だろう。俺様と踊るのが一番踊りやすいって言ってたよな」
 フェリシアーノとロヴィーノが聞いてくる。
 で、ギルがそれにのって……。
「それはお前がの練習相手だったからだろう。オレとの相性はまぁまぁだったな」
「アーティとは踊りづらそうだったよね。お兄さん、見てて思った」
「あれはっっ」
 なんか、……えっと、
 また、収拾が付かなくなってきたような気がするよ。
「で、誰だったんですか?」
「え?」
 だ、誰だろう。
 正直、踊った人が多いので分かりません。
「そうですか?私はとても楽しそうに踊っていたのを見ていたので、その方かと思ったのですが」
「だ、誰?」
「おや、気づいてませんか?まぁ、それも悪くはありませんね」
 な、何だろう。
 あたしも気づいていない胸の内を知られている……この感じは。
 別に、誰って言う人いなかったわよ。
「あえて言えば、菊ちゃん?」
「まぁ、そう言う事にしておきましょう」
 そう言う事にしておいて。

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あとがき

苛々アーサー編といろいろと中二なギルベルト編。
ギルってガチで中二な設定やれるから楽しいですねww
最初は苛々アーサー編。
ワルツのステップ、アーサーは亜種って言う感じにしました(オイ)。
教わった物を、アーサー的にアレンジしちゃった。
菊ちゃんは誰からワルツ習ったんでしょうね?
やっぱりアーサーかなぁ??
と悩んでみる。
アルは正統で踊る気がする。
絶対アーサーから教わってないような。

ドイツ語しゃべりまくり〜〜
脇キャラには適当にドイツ語でナンパしてもらいました。
ナンパするイタリア系ドイツ人だと思うさ。 ……で、翻訳は日本語からドイツ語に直じゃなく、英語に翻訳し(かつ対訳チェック)その後ドイツ語に変換…という苦労を。
なんで、そんな時間がかかる事を……したのか私にもよく分かりません。
対訳は文中に入れようかと思ったのですが、ここで反転でさらします。ギルの台詞があまりにも恥ずかしすぎるのでwww。
Was machen Sie?(何をなさっているんですか?)
Konnten Sie mit mir tanzen, wenn es Zeit gibt?(お暇なら、私と踊っていただけますか?) Es scheint wirklich eine Frau in Japan zu sein. Es ist sehr wunderbar(さすが、日本の女性。奥ゆかしいところも素敵ですね) Ah es tut mir leid. Ich bin Klemens Stolz. Fräulein, Wie ist Ihr Name?(あぁ、失礼、私はクレメンス・シュトルツと言います。お嬢さん、あなたのお名前は?)
Das, was gemacht wird(何やってる)
「Herr Gilbert・Beilschmidt・B・Preußen(ギルベルト・バイルシュミット・B・プロイセン卿)」 「Wenn es meinen Namen weiß, ist es sicher, was für eine Frau zu kennen, die der Japanerin neben Ihnen ist. (オレの名前を知っていると言う事は、そこの日本人がどういう人間か分かってるって事だよな)」
「Mir tut es leid. Ich komme früher als Ihre Exzellenz zurück.(………し、失礼致しました!!)」
「Sie sollten sich entscheiden, daß ich verteidige. Nehmen Sie bitte und tanzen Sie meine Hand.(あなたは、私にとっての守るべきお方。どうか、我が手を取り共に踊ってくださいませ)」

以上です。
対訳じゃなくって意訳ですね。
ウムトラウ字だっけ?は、HTMLの定義を使って表示させてます。
もう、後書きまで長くなったので、この辺で。