OPERA NIGHT~極彩色の世界~

 同じだが違う。
 彼女には同じ思いはさせたくない。

 違う事だけれども同じ事を思うのは当然だ。 

皇帝の憂鬱、再び 序章 
 ベルギーの空港で私と樋乃はベルナデットさんやドイツ兄弟、イタリア兄弟との見送りを受ける。
「またね。今度はうちが日本に行くから」
「うん、待ってるね」
 樋乃はベルナデットさんと挨拶をしている。
「菊、話がある」
 ギルベルトさんに呼ばれ、少し離れたところに向かう。
 話の内容は…想像が付いている。
 彼は、危惧しているのだ。
 いや、しているはずだ、全てに気づいているのだ。
「菊、先に忠告しておく」
「はい」
「あいつを、巻き込むな」
 彼の視線の先には彼女がいる。
「……分かっています」
 分かっている。
 巻き込むような事はしない。
 彼女にはこんな醜い思いは見せたくないのだ。
「分かってるのなら……いい」
「ご忠告ありがとうございます」
 彼に礼を言う。
樋乃ちゃん、待たね。次は日本でだね」
「日本で?」
 フェリシアーノ君の言葉に樋乃は首を傾げる。
「そう、来月。オレ達、行くからさ」
「直接じゃなくって寄っていっても良いよな」
「良いですよ」
 ロヴィーノ君の問いに私は答える。
「……あ、うん。待ってるね」
 来月、何があるかを思い出したのだろう。
 彼女は頷く。
「ルート達も行くよね」
「もちろんだろう。何を言ってるんだ」
「俺様達も寄るぜ」
 イタリア兄弟とドイツ兄弟が寄る事はいつもの事。
「あまり、お構いできませんがお待ちしております」
「気にするな、毎年の事だろう」
「オレ達が料理作るから気にしないで」
「楽しみにしてますね」
 出国の時間が迫り私と樋乃は向かう。
「では、また」
「じゃあね、みんな」
 ベルギーを離れ、日本へと戻る。
 樋乃は窓の外を覗いている。
 私の願いは一つしかない。
 彼女の幸せ。
「眠そうですね」
「うん、ちょっと眠いかも」
「疲れですね。まだ日本に付くまで時間があるのですから、眠ると良いですよ」
「うん、お休み」
 樋乃に毛布を掛けて眠るように促す。
 眠る彼女の幸せそうな寝顔を見て思う。
 今はもう遠く離れた地にいる彼の願いはふたつだろう。
 それはもう仕方ない。
 だが、そのうちの一つは確実に彼女の幸せだ。
 彼と私が思う彼女が幸せである事を願わずにはいられない。

 どうか、彼女が幸せであらん事を切に願う。
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あとがき

で、皇帝達の集まり~夜会編~に入れるはずだったエピローグを、憂鬱再び編のプロローグに持ってきました。
エピローグでありプロローグ。