きっと、それは昔の事だ。
忘れてくれていて構わない。
ほんの拍子に思い出してくれれば…。
ただ、それだけで構わないのだ。
「あいやー、スケジュールの調整がついちまったあるよ」
「不都合なんですか?」
「そういうわけじゃねーある。ただちょっと面倒なだけあるよ」
「出来れば……耀さんにも出席していただきたいのですが……」
買い物から帰ってきたら居間で菊ちゃんと王さんが会話していた。
スケジュール帳を引っ張り出してあーだこーだと言い合っている。
菊ちゃんの秘書になったとはいえ、未だあたしは菊ちゃんのスケジュールを把握してない。
聞いてるんだけど、教えてくれないって言うか。
まだ良いですよなんて言われる。
もう少し慣れてからって言うのもあるのかな。
「菊ちゃん、ただいま」
「お帰りなさい。」
菊ちゃんは……あたしを名前だけで呼ぶようになった。
嬉しいんだか、ちょっと照れくさいって言うか。
この人がさん付けしないのって結構意外な気がするし。
「あいやー、帰ってきたあるか」
「はい、ただいま帰りました」
王さんとはこれで2度目だ。
「菊ちゃん、何の話?」
「はい、次回に行われる協議のスケジュール調整ですよ。耀さんにも出席していただく予定ですから」
「菊、勝手に決めるなある!」
「ですが、耀さんに出席していただかないと………ヨンスさんが…………」
菊ちゃんが非常に言葉を選んでることに気がつく。
っつーか、ヨンスって誰ね。
「ヨンスさんは…任勇洙…お隣の韓国ですよ」
………言葉選んでる理由が分かりました。
すみません(汗)。
「直近では来週の耀さん宅で行われる会議ですね。イヴァンさんもいらっしゃるってお聞きしましたが」
「そうある……だからいやある」
「そう言われても……イヴァンさんにも協力していただかないと……っていうか、イヴァンさんとヨンスさんの橋渡しが出来るのは耀さんだけですし………。アルフレッドさんは逆にイヴァンさんを刺激しかねないですし……」
「分かってるあるよ〜〜〜」
…あれか…、………この会話聞いてて何の会議だか分かっちゃったよ……。
って、来週菊ちゃん中国行くの?
「いつから行くの?いつ帰ってくるの?」
その間一人かよ〜〜。
そりゃ、ぽち君とたまが居るから一人でも平気だけど……。
いや、この広い家で一人はちょっと寂しいよ…よく菊ちゃん今まで平気だったな。
「何を言ってるんですか?も行くんですよ」
え?
「あたしも?」
「、あなたは私の秘書じゃないんですか?秘書ならば一緒に来て当然でしょう?」
まぁ、そうですね。
「我も歓迎するあるよ。菊、台所借りるある。今から、我が料理を作るある。も一緒に作るよろし」
「あたしも?」
「そうある、は具材切るよろし」
王さんは楽しそうに言ってくる。
「わ、分かりました」
なんだか、よく分からないままあたしは王さんの料理の手伝いをすることになった。
「ネギ、切るよろし」
「何作るんですか?」
「蛋花湯と炒飯ある」
蛋花湯?って
「わかりやすく言えば中華卵スープあるよ」
なるほど。
って事は、本場の中華料理が食べられるんだ!!
楽しみ〜〜。
「ハム切るよろし」
って、全部あたしが切るのかい!!!
「そういえば、何故我は王さんあるか?菊みたいに我のことも別に呼ぶある」
「え?いきなり何を」
「我は耀ちゃんなんて言われるのはこそばゆいある。菊よりお兄さんあるからな」
いや……おじいちゃんって言った方が正しいような。
「何か言ったあるか?」
「いえ、別に」
「だから、我の事は哥哥って呼ぶある」
「ぐぅぐぅ?」
「そーある。我の国の言葉では兄のことを哥哥って呼ぶある!!。だからもそう呼ぶよろし」
「ぐーぐーってなんかアヒルみたい」
「アヒルってひどいあるよ〜」
「あの、提案なんですけど、にーに(兄兄な感じ?)じゃだめ?お兄ちゃんって事で」
「好好好好好好好好!!!」
なんか、すっごく喜んでるような気ガス。
すっごいかわいいなぁ。
さすが、連合の紅一点(違うから)
「良いある、良いあるよ〜〜。これでは我の妹!!あるな」
「じゃないから〜〜〜!!!」
「そんなにすぐに否定されるとショックあるよ」
「一応……あたしの血縁者は菊ちゃんだけだから……。ごめんね、にーに」
「……がかわいいから許すある」
よし、これでにーに呼びおK
だって、読んでるとき。この仙人様の愛称はにーにだったもん。
ヘタに王さんとかぐーぐーとか呼ぶより全然しっくりくるし。
って言うか、この材料の量、3人前にしては多くない?
ネギも結構多く、ハムも結構多く。
出してある卵に至っては5個分だ………。
「にーに、誰か………」
「菊、火がないある〜〜」
聞こうと思った瞬間ににーにが菊ちゃんを呼ぶ。
火がないあるって……、IHなんだけど……このキッチン。
「IHですから、火は出ないですよ。ヘタなガス代より火力は上ですから安心して炒めてください」
「そうあるか?それでも菊の所は火力が弱いから大変ある」
「すみません」
「それでも何とかやってみせるあるよ!!!」
そういってにーには中華鍋を温め始めた。
「」
「何?にーに」
「何でもねーある」
にーにはそこで言葉を止める。
そして中華鍋を見てあたしを見てもう一度視線を中華鍋に戻す。
「これは……独り言ある」
そういいながら、にーには話し始めた。
「我が菊と出会った頃は、まだ飛鳥の頃だったある……」
飛鳥って飛鳥時代の事かな?
遣隋使ってその頃だっけ……。
「そして菊は都の作りを勉強しに来たある。そして我は菊と作られた都を見に来たある。菊は嬉しそうに橿葉を見せるある。我は凄く嬉しかったあるよ…………、菜楽、最後に見れたのは美彌だったある。それ以降、我と菊の交流は途絶えたあるよ……」
交流が途絶えたって……894に戻そう遣唐使?
「我もその頃忙しかったある。菊がこれなくなったのも無理ねえあるな……。我の独り言はこれで……」
「菊、遊びに来たんだぞ!!」
ものすごい物音を立てて扉が開く。
「ジョーンズ!!なんでお前はいつもそうやって騒がしく入ってくるあるか!!!」
「あれ?耀もいたのかい?てっきり居ないものかと思ってたよHAHAHAHA」
「勝手に人の家に来て騒ぐなある!」
いや、ココ、にーにの家でもないから。
菊ちゃんを見ればすっごく困った顔してる。
えっと、この声は……アメリカか。
「やぁ、俺の事覚えてるかい?」
…………すみません、アメリカってことしか…覚えてないんだけど……どうしよう。
「じょ、ジョーンズさんですよね?」
「ひどいなぁ、ファミリーネームで呼ばれるとは思わなかったよ」
「一応、初めてあった方には名字で呼ぶようにしてますので」
に、にーにが、アメリカの事「ジョーンズ」って呼んでて良かった!!!
お前呼びしてたら本気でどうしようかと思ったし。
「そうなのかい?じゃあ、これから名前で呼んでくれよ。アルフレッドでもアルでも構わないぞ!!」
「はい」
なんとか、名前覚えてないの知られずに済んだよ。
菊ちゃんもホッと胸なで下ろしてたし。
「で、アルフレッドさんは何しに?」
「アルフレッドだよ、。フレディでもいいけどね」
なんか、訂正されてるしっっ。
「で、アルは何しに?」
「まぁ、いっか。うん、来週、耀の所でやる会議の打ち合わせにね。やっぱりHEROが居なくちゃ話は始まらないからね」
………………………はぁ、そうですか。
って事はあの大量の材料はこの人も食べるからって事だったのかよ〜。
「菊ちゃん、あたしアルフレッドさんが来るなんて聞いてないよ」
「私もついさっき聞いたばかりなので驚いているんですよ」
あ、そっか、菊ちゃんふりまわされてるもんね。
「〜、こっち手伝うあるよ〜」
「分かった」
にーにが今できあがった炒飯をお皿に盛りつける。
アル用だけちょっと大きい。
「にーには知ってたの?アルが来るって」
「が帰ってくるちょっと前に連絡来たあるよ。だからほんのついさっきあるな」
はぁ、ホントに突撃なんだ。
アルって。
そういえば……。
「にーに、さっきの話…」
炒飯を炒める前にしてた話。
「あれは何だったの?」
「……あれはただの独り言ある。ただそれだけあるよ」
にーにはそう言って鼻歌を歌いながら卵スープの味見をする。
鼻歌を歌ってるって事はもう聞いても教えてくれないって事かな。
「」
「何?にーに」
「我は嬉しいあるよ」
どういう意味?
「ただ、それだけね。さ、出来たある。ご飯にするあるよ〜〜」
そう言ってお盆にのせたスープをにーには居間に持って行く。
あたしはもう一つのお盆にのせた炒飯を持って行く。
今から、みんなで夕飯だ。
にーにの話は気になったけど、その後アルフレッドと遊んでいたらすっかり忘れてしまっていた。
おまけ
アルvsのマリカ
「どうして、アルフレッドさんはそうやって突撃するんですか?」
「スピード出さなきゃ勝てないだろう?も上手そうだし」
「上手じゃない。バナナの皮ゲット〜〜。くらえ〜〜」
「boooooo、ひどいよ、〜〜」
「まったく子供あるよ。お前らは」