OPERA NIGHT〜極彩色の世界〜

 が来てから2週間が過ぎた。
 最初はどうなる事かと思っていたが、兄貴もきちんと教えている様だし(最も、エリザと菊とが脅した結果とも言えるが)、も覚えは悪くない様だった。
 自主的に一人でも練習している様だ。
 確かに1ヶ月という長い様で短い期間でワルツのステップを覚え、かつ踊れる様にするには、そのくらいしなくては無理だろう。
 俺も練習していた時は大変だった。
 兄貴はああ見えて何でも器用にこなす方だが俺はそうはいかず何度迷惑をかけたか分からない。
 その点については感謝しよう
 兄貴もに教える事楽しんでいる様だし良いだろう。
 今日もまた、レッスンが始まる。
 今日からは曲に合わせてだったな。
 姿勢についてもに教えなくてはならん。
 ローデリヒが作ったダンスのレッスンマニュアルを見ながら確認しよう。

皇帝達の戯れ

 ルッツが作る昼食を食べ終わり、ソファで寛ぎながらローデリヒの作ったマニュアルを見る。
 坊ちゃんも良くやるよ。
 こんなの要らねって言ったのによ。
「ルートヴィヒさん、これはどうするんですか?」
「うむ、それは…」
 ルッツとが食後のデザートを作る声を遮るように俺様の家の電話がなる。
「Hallo」
『Hola、アントーニョやで』
『allo、ジル、元気?』
「あんだよ、二人して」
 電話をかけて来たのはフランツとアントンだった。
『今な、俺らドイツに来とんねん。ヒーちゃん暇やろ思うてな』
『ちょっと貸して、で俺たちお前の所行こうって思ってる訳?OK?』
 ちょ、待て!
 今からアントンとフランツが来るだ?
 アントンならともかくとして、フランツは不味い!
「か、構わねえけどよ。どの位でこっち着くんだ?」
『後、30分くらい?』
 マジかよ。
 そのくらいなら。
『平気なん?』
「ああ、構わねえよ。俺はたいした用事ねえからな」
『ほな、歓迎してや』
 そう言ってアントンは
 電話を切る。
 それ程長くは話してない。
 とはいえあいつらが来るまでもう30分はないだろう。
 まずい、アントンだけならいい。
 問題はフランツだ!
 を彼奴に会わせるわけにいかねえ。
「兄さんどうしたんだ?」
 俺の様子がおかしい事に気がついたのか、ルッツが近寄って来る。
「彼奴らが来る」
 その一言でルッツは状況を察したらしい。
「ど、どうするんだ兄さん!」
「今、それを考えてるんだよっ。……ルッツ、お前アスター達と遠出したいって言ってたよな」
 が来るちょっと前の話だ。
 その頃忙しかったせいかルッツがそんなことをぼやいていたのを思い出した。
 俺様すげー。
「あ、あぁ。確かに言ったが」
が、あいつらと遊びたいって言ってたんだ。を連れて、行ってこい」
 ルッツがフランツとの会議でフランスに行ってたとき、が呟いていたんだ。
「どうしたの?二人とも」
 がルッツが戻ってこないことに不思議に思ったのかこっちにやってきた。
、聞いて喜べ!」
「喜ぶって。何?」
「ルッツがアスター達連れてちょっと遠出するんだ。も一緒に行ってこい」
「い、良いの?」
「あぁ」
 俺の言葉には嬉しそうにほほえむ。
「練習は?」
 まぁ、気になるだろうな。
「ルッツだって踊れる。一緒に練習しろ」
「って言うか、外で?ちょっと恥ずかしいっ」
「大丈夫だ。恥ずかしがることはないぞ。ダンスホールはたくさん人はいるんだ。度胸付けるためにもいいんじゃないのか?」
「ルッツの言うとおり恥ずかしがってる場合じゃねえんだからな」
 俺とルッツの言葉には頷く。
「分かった。じゃあ、着替えてくる」
「おぉ」
 が自分の部屋に向かう。
「兄さん、大丈夫なのか?」
「何がだ」
「フランツ達だ。さっさと帰るんだろうな」
「俺が聞きてぇよ!あいつら急に来るって言いやがって!!」
 はぁ。
 俺とルッツ二人してため息をつく。
「お待たせ」
 ジーンズにTシャツのが戻ってくる。
 ルッツはいつでも犬と出かけられるような格好だ。
、楽しんでこいよ」
 くしゃくしゃっと頭を撫でると
「あぁもー、ホント止めてよ〜ぐしゃぐしゃにするの」
「良いんだよ。これが楽しいんだ!!」
 俺はそうに言いながら、黒い髪を綺麗になでつける。
 この手触りが俺様好み〜〜楽しすぎるぜ〜〜。
「に、兄さん……。ともかく行ってくる。帰る頃一回電話する」
 ルッツの言葉に頷く。
「じゃあ、行ってきます」
 とルッツは犬たちを連れて出ていく。
 それからすぐにフランツ達がやってきた。
 ぎりぎりだったわけだ。
「Hola、ヒーちゃん!!」
「Bonjor、ジル」
 フランツとアントンがやってきた。
 ずかずかと中に入ってきて二人して辺りをきょろきょろ見渡す。
「なぁなぁ、ちゃんおらんの?」
「お兄さん達、ちゃんに会いに来たんだけど」
 やっぱりか〜〜お前ら〜〜。
 予想はついていたけどよっっ。
 って言うか、何でがココにいること知ってるんだ?
 菊が…言うはずはねぇよな。
だったら出かけてるぜ」
「そうなん?」
「残念。まぁいいや。今日はもう暇だし、ジルでもからかってたら帰ってくるでしょ」
 帰れよ〜お前ら〜。
「で、なんでココにいるって知ってるんだ?」
「そんなん聞いたからに決まっとるやん」
「だから、誰に聞いたんだよ」
「俺はロヴィーノや」
「俺はフェリシアーノ」
 はぁ?
 なんでフェリシアーノちゃんとお兄様がいうんだよ!!!
「それはなぁ、忘れもせえへん、5月末の話や。ロヴィーノがなぁ、めっちゃテンション高かってん。あんな笑顔のロヴィなんて久しぶりに見れたんやで。楽園や〜」
 お前の楽園はどーでもいい。
「ちょうどその頃だよ、俺イタリアに行ったらさぁ、フェリシアーノとロヴィーノが二人して楽しそうにガイドブック付き合わせて相談してるんだよなぁ」
「そうや、めっちゃもおぉぉおぉぉなぁ、かわいかってん」
「そう、俺、連れて帰りたくなっちゃったぐらい」
「連れて帰るな!!フェリシアーノちゃんとロヴィーノお兄様になんて事しようとしてんだ!!」
「でさぁ、その1週間後、めっちゃヘコんでんねん。どないした?て聞いたら……、がドイツの家に行ってもうたから寂しい言うよんねん」
「フェリシアーノも見てられねぇぜ?っていうか、あそこ二人して落ち込んでるんだよな」
「ほんでな、俺らそんなんあの二人ヘコませる娘、見てみたいって思うたんよ」
「別にわざわざ、ここに来なくたって良いじゃねえか」
「何言ってるの、そうでもしないと彼女に会えないでしょ?菊ちゃんには門前払いされるしっ」
 フランツは泣きそうに言う。
 そりゃそうだろう。
 菊は一番にフランツを警戒していた。
「それは自業自得や」
「ひど、アントワーヌ、ひどっ!」
「悪い、フランツ。俺もそれに関しては同意見だ」
「二人してひどすぎないかそれ?」
「自分の行いよぉ、考えてみいっ。ベルにまで手を出しくさって!」
「わ、昔の事今更出す?」
「いつでも出したるわっ。あの恨みは忘れへんで〜」
「それは俺だけじゃなくってアーティとかエルンストとかロドリグだって原因があるでしょ?最後に連れてったのロドリグじゃん。あ、ジルお前も原因だよな」
「って言うか、一番の原因はお前じゃねーか!!フランツ!」
 昔の事(西継承戦争あたり。この戦争で白は墺領に。西&仏&バイエルンとかvs英・墺・普・蘭連合)を持ち出してオレ達は言い合う。
 昔の事だと片付けるには記憶はまだ浅くない。
 そのうち、アントンがキレて帰ってくれればいいんだが、そう簡単にもいかなそうだった。

「だいぶ踊れるようになってきたようだな」
 広大な敷地のすみの方で俺とはダンスの練習を開始した。
 犬たちは遊び疲れたのか木陰で休んでいる。
「姿勢はもう少し伸ばして、目線はもう少し上の手の方がいいだろう」
 踊ることにも慣れてきているはずなのでローデリヒが作ったマニュアルに従って、それに伴う視線の修正を行う。
 はコツさえ覚えてしまえば音楽やっていたせいかリズムで覚えていく。
 兄貴も彼女が素直に吸収していくのが面白いのか毎日楽しそうにダンスを教えている。
 もっともそれが原因で最初の頃が飛び出したというハプニングもあったが、今はそんなことも忘れたように仲良くやっている。
 日本語だと雨降って地固まるというがまさしくその通りだろう。
 正直、最初兄貴が教えると言ったとき、不安があった。
 あの兄貴が人に物を教えることが出来るのだろうかと。
 だがよくよく考えてみれば、俺にいろいろ教えてくれたのは兄貴だし、菊が開国当初教えを請うたのも兄貴だ。
 他人には非常に誤解されやすいが、気に入った人間に対しては非常に面倒見が良いのは事実だ(フェリシアーノしかり)。
 のことも気に入っているようだし、良いことだろう。
 他の面々(エリザやローデリヒ)からしたらそれが良いと言えないかもしれないが。
「ルートさんどうしたんですか?」
「いや、夕飯は何にしようかと思ってな」
「………ルートさんって、すっごく主婦ですよね。菊ちゃんもそうなんだけど」
「兄さんが何もしないから必然的にな………」
 と、言うか、出来ないというか……。
 料理のレパートリーがあまりないから必然的にという形になる……だけだと…おもう。
「そう…なんだ…」
「あぁ」
 なぜか視線をそらされたが……夕飯を作るのは別に良い。
 いつもの事だ。
 それよりも、フランツ達は帰っただろうか。
 兄貴の事だ……追い出せるとは思えない……気がした。

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あとがき

悪友来た〜〜〜〜〜!!!!
というわけで、悪友編です。
詳しい事は後編で。
エルンストって?蘭さんの事です。