アリオスは帰ってくるアンジェリークを待ちわびながらの仕事になった。 ひとつぶ残さず食べたお弁当箱を、綺麗に洗い、昼食時にコンビニで買った可愛いデザートをおまけにつけておく。 これで準備万端だ。 放課後になり、また賑やかにもアンジェリークがやってきた。 「こんにちは〜!!」 アリオスに手を振りながら、本当に楽しそうにやってくる。 その様子は、どこか着たいと不安が入り混じっているようだ。 「アリオスさん、こんにちは」 「ああ。弁当サンキュ。美味かったぜ?」 アリオスは甘く微笑みながら、からになった弁当箱を差し出してくれた。 受け取るとからからとからを証明する音がする。 それを聞くと、料理人としての喜びがこみ上げてくる。 「私も、マフラー、とっても温かかったです!!」 頬を染め、アンジェリークは喜びに裏打ちをされた表情で彼にマフラーを返した。 「また、弁当を作ってくれると嬉しいぜ。これが弁当箱代と費用な?」 彼が封筒を差し出したので、彼女は正直驚く。 「そんな、お礼でやっているだくですから・・・」 アンジェリークが戸惑うように答えたにも関わらず、アリオスは封筒を彼女のバッグに入れてしまった。 「アリオスさん・・・」 「これは別だぜ? アンジェリーク」 アリオスに甘く微笑まれれば、アンジェリークは弱くて仕方なく同意をする。 「じゃあ、受け取ります。代わりに美味しいお弁当を作ってますから!! だからお金はこれで終わりにしてくださいね?」 同意はしても、その先は譲らなかった。 「善処する」 ふたりは見つめ合うと、約束をするかのように微笑みあった。 それからは、学校のある日には、アリオスのために、毎日、お弁当を作っている。 それが今、アンジェリークの一番の楽しみになっていた。 美味しいお弁当を作るのが目下の趣味になり、彼女はお弁当の本などを買っては、研究に余念がない。 そそいて、お弁当と引き換えに、アリオスがしてくれたのは、毎朝マフラーを首にかけてくれること。 それは、まるでホットミルクのようなとても甘くて優しい温もりがある。 アリオスの温もりに包まれて歩くのが、何よりも楽しかった。 また足の病院にも彼が送ってくれるので、すごく感謝をしていた。 -----そんな充実とした日々が続いている。 お弁当の食材を求めてスーパーに寄ると、時節柄立派なウ゛ァレンタインチョコレートのコーナーが出来ていた。 「もうすぐ、ウ゛ァレンタインか・・・」 アンジェリークはじっとコーナーにあるチョコレート見つめる。 どれも目移りしそうなぐらい美味しそうだ。 「やっぱり、チョコレートもいいけど・・・、腹巻きをあげたいな・・・」 お弁当の食材を買いながらも、アンジェリークの心は、腹巻きに集中していた。 でも、どうやったらアリオスさんの腰周りが判るんだろう・・・。 お弁当を持っていった時に訊いてみようかな・・・。 毛糸はそれからでも遅くないから。 でも、急がないとね!!! アンジェリークは決意を固めると、しっかりとした足取りで、家路についた。 翌日、アリオスにご機嫌を取るために、昼食のメニューは少し豪華に”茶巾ずし”。 銀だらの西京焼きなど上品なサイドのおかずも忘れてはいなかった。 「これでばっちりよね! 松茸のお吸い物も付けたしね〜!!」 彼女は満足感溢れる表情で、お弁当の蓋を閉める。いつものように足取りも軽く、彼女は工事現場に向かった。 今や、工事現場に行く次いでに、学校に通っている感じのアンジェリークである。 「おはようございます。今朝のお弁当です」 「ああ、サンキュ」 アルミのお弁当で食べるのも、アリオスは心地好く思えてきた。 「今日、ちょっとお願いしたいことがあるんですが、学校の後寄りますから、いいですか?」 思い切り良くアンジェリークはアリオスに訊いてみる。 「ああ。構わねえよ」 「有り難うございます!!」 アンジェリークは、嬉しさの余りに飛び上がりそうになる。 「約束よ!! 有り難う!!」 彼女は満面の笑顔を向け、学校へと向かった。 その表情は、可愛らしく、彼のそれも甘いものになっていた。 いよいよ放課後。 アンジェリークは緊張で胸を震わせながら工事現場に行くと、アリオスは事務所にいた。 「あ、こんにちは」 「ああ。メシ、すげー美味かったぜ?」 「有り難うございます」 真っ赤になりながら、上目遣いに彼を見た。 「・・・あの、お願いですけど…、腰周りを測らせていただけますか・・!」 勇気を振り絞り、アンジェリークは正直に彼に言う。 「腰周り?」 「…はいっ!!」 不思議そうな表情で見つめる彼に、アンジェリークは耳まで真っ赤にしながら彼を見る。 「だ・・・、ダメですか?」 愛らしい彼女に甘い表情をされると、アリオスも弱い。 どうしてウェストを図りたがっているかは見当はつかないが、彼はゆっくりと頷いてやった。 「いいぜ? おまえさんならな?」 「有り難うございます!!」 アンジェリークはほっとした安堵と共に、喜びがこみ上げてくるのを感じる。 かばんからメジャーを取り出すと、アリオスの腰に巻こうとするが、妙に緊張し、その上意識してしまう。 彼の腰に手を回そうとすると震えてしまい、呼吸が速くなった。 「し、失礼します…」 初々しくも白い肌を高潮させる彼女が、アリオスにはかわいくて、そのまま抱きしめたいしょうどうにかられてしまう。 だが祖熟れば、彼女がびっくりとしてしまうかと思い、何とか踏みとどまった。 アンジェリークは一生懸命、彼の腰にメジャーを当てる。 男らしくも甘い香りが鼻腔を擽り、堪らない刺激となった。 震える手で、アリオスの腰周りを何とか測り終える。 その瞬間、ほっとしたような残念なような溜息が、彼女の唇から漏れた。 「あ、有り難うございました…」 「こちらこそ。お役に立てて嬉しいぜ?」 総てを見透かされているようなアリオスの眼差しの光に、アンジェリークはほんのり恥ずかしそうに俯いた。 工事現場を後にして、彼女は、手芸店に駆け込んだ。 紫のラメ入りの毛糸がなくなってはと心配したが、大量にあったので安心する。 そこで店員に、アリオスのウェストのサイズと、腹巻に最適な毛糸の玉数や編み棒などを相談して、買い求めた。 袋にたっぷりと入っているそれを抱えると、心が引き締まってくる。 どこかしら甘い思いも否定できない。 ひと目ひと目心を込めて編もう・・・。 アリオスさんに感謝を込めて…。 私の思いを込めて・・・。 アンジェリークは深く思うと、毛糸の入った袋をぎゅっと抱きしめた------ TO BE CONTINUDE… |
コメント そのタイトルどおり、ヴァレンタイン創作をお届けします。 またまたぼけボケアンジェと、頭の切れる男アリオスのお話です。 ヴァレンタインまで、ゆっくりと完結させたいと思っていますので宜しくお願いします。 ようやく腹巻が編めて、幸せなアンジェちゃんです。 やっぱり腹巻は紫のラメが最高ですな(笑) しかし、長くなりましたな。 これ。 ヴァレンタインまでには無事完結したいものです〜。 |