
「何をそんなに戸惑っている・・・」 アンジェリークの雰囲気から、アリオスは彼女の考えを読んだ。 「あ、私は・・・」 見事に読まれてしまい、彼女は戸惑ってしまう。 「心配するな。部屋は別々だし、俺も、仕事の相手とどうこうなりたいと思わねえから」 「はい・・・」 きっぱりとした否定。その言葉はアンジェリークに深く突き刺さる。彼女は、心の動揺を知られないようにと、努めて冷静に振る舞った。 「今夜は早く寝ろ? いいな?」 感情を湛えない不思議な異色の瞳に、逆らえなくて、アンジェリークは何とか頷いた。 「おまえは客間を使え。ここだ」 彼の後ろに着いて、案内された部屋は、小さな個室で、ベッドもシングルで、最低元必要なものしかなかった。かえってその簡素さに彼女は安心する。 「重ね重ね有り難うございました!!」 深々と頭を下げて、彼女はアリオスに礼を言った。 「そんなことはいいから、とっとと寝ろ?」 「はい」 促されて部屋に入った後、アリオスがドアを閉じた。 どうして、こんなに似ている・・・。酷な試練だな・・・。 部屋に一人になり、アンジェリークはそのままベッドに沈み込んだ。 私は、何を構えてたんだろう・・・。 きっと心の奥底で、何か期待してたのかもしれない・・・。 アリオスが側にいてくれればいいって。 こんなに誰かに側にいてほしいなんて思ったことがなかった・・・。 --------- その夜、アンジェリークは眠りに落ちたものの、悪夢にうなされていた。 乗っていた父親の車が、故意に事故を起こされたあの夜の夢。事故のほんの少し前、彼女だけに見えた惨事の影像。 咄嗟に、体を小さくして守った。 そのまま車は方向性を失ってクラッシュし、ボンという音の後、炎上した。 真っ赤に燃え盛る炎。 「お父さん! お母さん!」 叫んでも返事はない。 横にいた弟のマルセルの体を何度も揺すれば、ぴくりと瞼に反応があった。 「マルセル!」 「痛い・・・、おねえちゃん・・・」 彼は力なく呟くと、再び瞼を落とす。 「どうしたの? ね? マルセル! マルセル!」 何度もsの名を呼んだが、マルセルはそのままぐったりとして反応がなかった。 「ねえ、マルセル! お願い、目を覚まして! お父さん、おかあさん! お願い私を一人にしないで!!」 アンジェリークは泣き叫び、車内の熱さに気が狂いそうだった。 --------- はっとして、アンジェリークはそこで目覚めた。 「夢・・・」 全身が冷たい汗でビッショリとなり、気分が悪い。 彼女はそこでおおきな溜め息を吐くと、その体を起こした。 あの時、父の下院議員当選記念パーティで、あの男の考えと未来を完璧に予知してしまった。私は不安になって、そのことを父に話し、父はそれを裏付ける証拠を取って、彼を追及した。 彼はそれで失脚をし、この国の首相の道を閉ざされた…。 ----そしてあの事故! 彼女は身の毛をよだつ思いがして、頭をぶんぶんと振ると、そのままベットから降りた。 あんな夢を見たい上落ち着かない。 きっと、あの男の差し金だろう…。 今夜の一連の出来事は…。 MI6に彼と通じるものがいてもおかしくないもの。 だったら…。 アンジェリークは決意を秘めたように頷くと、部屋のドアに向かった。 これ以上…、私の周りにいる人たちが傷つくのを見たくないから… ここにいたら…。 アリオスに迷惑がかかってしまうから…。 彼女はそれだけの思いで、この部屋を後にしようとした。 ノブに手をかけ、ドアを開けたとき、彼女は息を飲んだ。 「アリオス…」 「どこに行く…」 そこにいたのはアリオス。 まるで彼女がいなくなるのを察したように、そこに立っていた。 「…どこって…、のど乾いたから…」 しどろもどろに答える彼女の嘘など、彼には明らかだ。 「嘘は言うなよ? どこか…、いくつもりじゃなかったのか?」 心の奥底まで見透かしてくるような眼差しに見つめられて、アンジェリークは、その身を固くした。 「…夢を見たの…」 その視線から逃れ、彼女はポツリと呟く。 「夢?」 怪訝そうに、彼は眉根を寄せた。 「うん…。あの事故の夢。お父さんもお母さんもいなくなったあの事故の…」 声が震えている。 「それがどうして逃げ出すのとどう関係があるんだ?」 一筋の涙が彼女の頬を伝い、アリオスは胸を締め付けられそうな思いがした。 「・・・だって・・・、これ以上…、周りの人に迷惑掛けてくなかったから…」 その言葉は、彼の、氷で出来た心の奥を少し溶かしてゆく。 「アンジェリーク…、バカ、気にするな…」 「はい・・・」 無意識にアリオスはアンジェリークを胸のなかに包み込んでいた。 忘れていたぬくもり。 彼はそれにめまいを覚える。 俺としたことが…。 どうしてこの温もりが心地よいと思う…。 もう忘れていたことなのに… アンジェリークは心の不安がかき消されるのを感じる。 そのまま、アンジェリークの背中を優しくあやして、彼は彼女が落ち着くまでずっとそうしていた…。 |
TO BE CONTINUED・・・
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コメント
エージェントアリオスのお久しぶり。
すみません…。
あまり話が進んでません(苦笑)
さくさくと進ませていきます!
今度のターゲット?
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