
連れて行かれたアリオスの自宅は、大邸宅だった。 古い伝統的な貴族の館のようだ。 「アリオス…、貴族なの?」 「まあな。だが、今や税金払うのに四苦八苦しているただの男。 ここにはめったに帰らねえけど」」 余りのも立派で、アンジェリークは気後れすらするのではないかと思う。 「とにかく、今日は早めに休め? いいな?」 「はい・・・」 アリオスがあてがってくれた部屋は、趣味のよい調度品がある、立派な部屋だった。 思わず息をb飲んだものの、今まで、慎ましやかな生活を送ってきた彼女にとっては、やはりためらいを感じてしまう。 私には立派過ぎるわ… 「あの・・・、もっと、狭い部屋とか…、立派じゃないところないですか?」 「すまねえが、そこしかないからな。そこを使え」 「はい」 アリオスの言われたので、彼女はおずおずと部屋の中に入っていった。 「ここはバスルームもついてるから困ることはねえだろう。今日は熱いお湯にでも使ってゆっくりしろ。判ったな?」 「はい」 彼女が頷いたのを確認してから、彼は部屋を出て行く。 「隣は俺の部屋だ。何かあったら、言え?」 「はい・・・」 アリオスが立ち去った後、彼女は大きな溜息を吐いて、ベットの上に座り込んだ。 昨日の出来事が、もう十年も前のことのように思える。 MI6に来て、彼女の生活は本当に一変してしまったのだ。 今日の出来事すべてが胸に迫ってきて、アンジェリークは泣きたくなった。 今日はなんて一日だったんだろう…。 めまぐるしかった…。 たった一日でこんなことになるなんて…。 これも…。 私があの男の未来に協力しなかったから…。 だって、将来独裁者になるのが見えた人の元で、私は働きたくなんかなかった。 あの男は、世界を地獄に突き落とす… ----現に、私たちの一家を地獄に突き落としたんだから…。 あの日のことを私は忘れない…。 彼女は思いつめて血が滲むほど唇を噛み締める。 以前は良く笑う少女だった。 だが、あの事件が彼女のすべてを奪い、彼女を根本から変えてしまったのだ 。 父が…、あの日、MI6のエージェントに私に保護を頼んでいなかったら、私は今ごろ…。 彼女はそこではっとする。 「いけない! こんなこと考えてても仕方ない!! 早く、お風呂に入って、寝よっ!!」 彼女はすっと起き上がると、バスルームへと向かった。 着の身着のままでこの屋敷にやってきたが、ベットの上には、すでに、彼女が休めるようにと、下着とパジャマ、それにバスローブがおいてあり、どれも新しかった。 有難う、アリオス… 彼女は自分の上司に感謝しながら、バスルームへと向かった。 その彼女の様子を、アリオスは廊下からそっとドア越しに見守っていた。 少しは落ち着いたか… 彼はじっと扉を見つめながら、紫煙を宙に吐く。 おまえを、エリスと同じ目には合わせねえから… おまえだけは俺は全力で守る…。 そう、たとえ俺に何があってもだ… 彼は優しい眼差しでドアをもう一度見つめた後、部屋へと入っていった---- ---------------------------------- 湯船につかりながら、アンジェリークは体と心を癒していた。 心を落ち着かせようとして考えつくのは、銀の髪の青年のことばかりだ。 アリオス…。 私が、家族と自分以外で未来を読み取れなかった唯一の人。 それがどうしてかはわからない…。 私を守ってくれる男性には違いないけれども、どうしてあんなに寂しそうなんだろう…。 あの瞳---- 私と同じような気がした…。 ふうと溜息を吐いて、彼女はバスタブから出て、パジャマに着替えた。 そしてそのままベットへともぐりこむ。 アリオスの家にいるのって、不思議な気がするわ… アリオスのことを考えているうちに落ち着いたのか、彼女はいつのまにか眠りに落ちていた---- 深夜---- 物音がしたような気がして、アンジェリークは目を覚ました。 ゆっくりと足音がして、こちらに近づいてくるような気がする。 その足音が余りにも不気味に感じて、彼女はその身を震わせた。 まさか、誰かが…。 いや、そんなことはないはず!? ここはアリオスの家だから…。 だけど・・・、だけど・・・ 昼間のことがあってか、アンジェリークは心底震えていた。 震える手で、自宅から持ってきた唯一のもの----銃を手にとり、胸に置く。 落ち着け、落ち着くのよ、アンジェリーク その途端---- 隣のドアが開く音がして、彼女は力が抜けるのを感じた。 よかった・・・ アリオスだ… 彼女が床に身体を崩れた音を聞いたのか、不意に部屋のノックがされた。 「アンジェリーク?」 「あ、アリオス」 彼女が発して弱弱しい声に、彼はすべてを悟った。 「入るぞ?」 そのまま返事をしない彼女に、アリオスは怪訝に思いながら、部屋の中へと足を踏み入れた。 「アンジェリーク…」 そこには血咲くなり、縋るような眼差しを向けている、子犬のような彼女がいた。 無理もねえ…。 まだ、17なんだ・・・。 なのにこいつは、背負い切れないものを抱えている… 彼は彼女の側に行き、同じ目線になるためにしゃがみこむ。 「どうした?」 「…ン・・、大丈夫…」 彼女が彼の手にしがみつこうとした、その時---- 「・・・・!!!」 「伏せろ!!!」 アリオスがそのまま彼女の身体に飛び掛り、身体を伏せさせる。 強固な屋敷の中に入れなかったので、射程距離が遠かったのと、部屋の頑丈な防弾ガラスのおかげで、音だけで、銃弾は空を切ったようだった。 「アンジェ、立て」 「はい!!」 再び彼女の身体に緊張が走る。 「行くぞ!!」 「はい!!」 二人はそのままへ部屋を出て、外へと向かった---- |
TO BE CONTINUED・・・