CHAPTER 6


 連れて行かれたアリオスの自宅は、大邸宅だった。
 古い伝統的な貴族の館のようだ。
「アリオス…、貴族なの?」
「まあな。だが、今や税金払うのに四苦八苦しているただの男。
 ここにはめったに帰らねえけど」」
 余りのも立派で、アンジェリークは気後れすらするのではないかと思う。
「とにかく、今日は早めに休め? いいな?」
「はい・・・」
 アリオスがあてがってくれた部屋は、趣味のよい調度品がある、立派な部屋だった。
 思わず息をb飲んだものの、今まで、慎ましやかな生活を送ってきた彼女にとっては、やはりためらいを感じてしまう。

 私には立派過ぎるわ…

「あの・・・、もっと、狭い部屋とか…、立派じゃないところないですか?」
「すまねえが、そこしかないからな。そこを使え」
「はい」
 アリオスの言われたので、彼女はおずおずと部屋の中に入っていった。
「ここはバスルームもついてるから困ることはねえだろう。今日は熱いお湯にでも使ってゆっくりしろ。判ったな?」
「はい」
 彼女が頷いたのを確認してから、彼は部屋を出て行く。
「隣は俺の部屋だ。何かあったら、言え?」
「はい・・・」
 アリオスが立ち去った後、彼女は大きな溜息を吐いて、ベットの上に座り込んだ。
 昨日の出来事が、もう十年も前のことのように思える。
 MI6に来て、彼女の生活は本当に一変してしまったのだ。
 今日の出来事すべてが胸に迫ってきて、アンジェリークは泣きたくなった。

 今日はなんて一日だったんだろう…。
 めまぐるしかった…。
 たった一日でこんなことになるなんて…。
 これも…。
 私があの男の未来に協力しなかったから…。
 だって、将来独裁者になるのが見えた人の元で、私は働きたくなんかなかった。
 あの男は、世界を地獄に突き落とす…
 ----現に、私たちの一家を地獄に突き落としたんだから…。
 あの日のことを私は忘れない…。

 彼女は思いつめて血が滲むほど唇を噛み締める。
 以前は良く笑う少女だった。
 だが、あの事件が彼女のすべてを奪い、彼女を根本から変えてしまったのだ

 父が…、あの日、MI6のエージェントに私に保護を頼んでいなかったら、私は今ごろ…。

 彼女はそこではっとする。
「いけない! こんなこと考えてても仕方ない!! 早く、お風呂に入って、寝よっ!!」
 彼女はすっと起き上がると、バスルームへと向かった。
 着の身着のままでこの屋敷にやってきたが、ベットの上には、すでに、彼女が休めるようにと、下着とパジャマ、それにバスローブがおいてあり、どれも新しかった。

 有難う、アリオス…

 彼女は自分の上司に感謝しながら、バスルームへと向かった。

 その彼女の様子を、アリオスは廊下からそっとドア越しに見守っていた。

 少しは落ち着いたか…

 彼はじっと扉を見つめながら、紫煙を宙に吐く。

 おまえを、エリスと同じ目には合わせねえから…
 おまえだけは俺は全力で守る…。
 そう、たとえ俺に何があってもだ…

 彼は優しい眼差しでドアをもう一度見つめた後、部屋へと入っていった----

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 湯船につかりながら、アンジェリークは体と心を癒していた。
 心を落ち着かせようとして考えつくのは、銀の髪の青年のことばかりだ。

 アリオス…。
 私が、家族と自分以外で未来を読み取れなかった唯一の人。
 それがどうしてかはわからない…。
 私を守ってくれる男性には違いないけれども、どうしてあんなに寂しそうなんだろう…。
 あの瞳----
 私と同じような気がした…。

 ふうと溜息を吐いて、彼女はバスタブから出て、パジャマに着替えた。
 そしてそのままベットへともぐりこむ。

 アリオスの家にいるのって、不思議な気がするわ…

 アリオスのことを考えているうちに落ち着いたのか、彼女はいつのまにか眠りに落ちていた----


 深夜----
 物音がしたような気がして、アンジェリークは目を覚ました。
 ゆっくりと足音がして、こちらに近づいてくるような気がする。
 その足音が余りにも不気味に感じて、彼女はその身を震わせた。

 まさか、誰かが…。
 いや、そんなことはないはず!?
 ここはアリオスの家だから…。
 だけど・・・、だけど・・・

 昼間のことがあってか、アンジェリークは心底震えていた。
 震える手で、自宅から持ってきた唯一のもの----銃を手にとり、胸に置く。

 落ち着け、落ち着くのよ、アンジェリーク

 その途端----
 隣のドアが開く音がして、彼女は力が抜けるのを感じた。

 よかった・・・
 アリオスだ…

 彼女が床に身体を崩れた音を聞いたのか、不意に部屋のノックがされた。
「アンジェリーク?」
「あ、アリオス」
 彼女が発して弱弱しい声に、彼はすべてを悟った。
「入るぞ?」
 そのまま返事をしない彼女に、アリオスは怪訝に思いながら、部屋の中へと足を踏み入れた。
「アンジェリーク…」
 そこには血咲くなり、縋るような眼差しを向けている、子犬のような彼女がいた。

 無理もねえ…。
 まだ、17なんだ・・・。
 なのにこいつは、背負い切れないものを抱えている…

 彼は彼女の側に行き、同じ目線になるためにしゃがみこむ。
「どうした?」
「…ン・・、大丈夫…」
 彼女が彼の手にしがみつこうとした、その時----
「・・・・!!!」
「伏せろ!!!」
 アリオスがそのまま彼女の身体に飛び掛り、身体を伏せさせる。
 強固な屋敷の中に入れなかったので、射程距離が遠かったのと、部屋の頑丈な防弾ガラスのおかげで、音だけで、銃弾は空を切ったようだった。
「アンジェ、立て」
「はい!!」
 再び彼女の身体に緊張が走る。
「行くぞ!!」
「はい!!」
 二人はそのままへ部屋を出て、外へと向かった----

TO BE CONTINUED・・・


コメント

エージェントアリオスの六回目です(笑)
もっと活躍をさせたかったんですが(笑)