
来やがったか・・・ アリオスは、冷静にバックミラーを見つめながら、運転を続ける。 「アリオス、これは!?」 「やつらは意外に”おりこうさん”だということだ」 「え、きゃっ!」 今日にアリオスがハンドルを切り、体がドアにあたってアンジェリークは悲鳴をあげる。 「いいか、逃げ切るからな? おまえも協力しろ?」 アリオスの声はいつものように感情はなく冷静だったが、アンジェリークは落ち着いていられなくて、僅かに身体を震わせて頷く。 「よし、いいこだ」 片手で栗色の髪を撫で付けられれば、彼女は不思議と落ち着いてくるのを感じた。 アリオスの指先は、不思議・・・。 私の気持ちを感嘆に鎮めてしまう、魔法の指だ・・・ 冷静に、後方のフェラーリとの車間距離を開けながら、アリオスはゆっくりとアクセルを踏む。 だが、相手も巧者で、同じようにスピードを上げて、車間距離を保ってくる。 この俺に追いついてくるということは・・・、あれは改造車だろう・・・。 が、ここはロンドンの街中だ・・・。 むやみに銃を使うことは出来ねえ。 どこに車を入れるかだが・・・。 不意にアリオスの目に道路標識が入る。 郊外に向かう高速道路を案内している。 彼はそれに向かってハンドルを切る。 方向も都合がいい・・・。 速やかに処理が出来るはずだ・・・。 二台の車は、そのままロンドンの街をすり抜けて、高速へと乗る。 「アンジェ・・・」 「はい」 その声は感情がなかったが、彼が彼女に協力を求めていることを、肌で感じる。 張り詰めた緊張感が、車内を覆う。 「しっかりつかまってろ? 万が一のために、銃を用意しろ」 「判りました」 アリオスは最後の手段に出る。 改造を施された彼の車は、通常の車よりもかなりのスピードが出る。 周りに対向車がいないことを確かめると、アリオスはアクセルを踏み始めた。 アンジェリークも言われたように愛銃を用意する。 BMWのスピードはどんどん加速し始めた。 だが---- フェラーリは離れるどころか着いて来る。 しかも追いつこうとしている。 あせってきたか・・・。 やつらは手はださねえだろう・・・。 恐らくはアンジェリークの生け捕りが目的だろうから・・・ フェラーリはそのままアリオスのBMWに追いついてくると、車体をぶつけ始める。 その衝撃に、アンジェリークは身体をすくませた。 背中には冷たい汗を感じ、その冷たさに身体を震わせる。 だが、アリオスは何も変わらない。 いつものように涼しげな表情だ。 車の流れが途切れる。 今この場所にいるのは そろそろだな・・・ 突然、アリオスは、シートの下に手を伸ばして、45口径のショットガンを手にした。 「----俺の車を傷つけやがって・・・、おかえしだ」 すぐさま彼は左手だけでトリガーに手を掛ける。 標的を見てはいない。 彼はあくまで前だけを見て、運転に集中しているかのように見える。 ガチャリ。 断層に弾丸がこめられる音がした。 その瞬間---- いとも簡単にトリガーは引かれた。 そのまま、フェラーリの車体に命中し、スピンをして、車は中央分離帯へと激突し止まる。 幸い、何の被害も起きない。 そう、フェラーリ以外は。 アリオスはバックミラーでフェラーリの様子を一瞥すると、そのまま車のスピードを加速させる。 煙草を口にくわえながら、顔色を変えず、紫煙をくゆらせている。 その横顔を見ながら、アンジェリークは不意に泣きたくなる。 肩を震わせて、感情を押さえようとする彼女に、アリオスは冷たい眼差しを浴びせ掛ける。 「----私はこれからどうなるの・・・」 呟かれた言葉は、苦悩に満ちている。 彼女は顔を両手で覆い、栗色の髪を何度か揺らす。 「----やつを逮捕するまでは無理だ」 「・・・・そんなこと・・・いわれなくても判ってるわ・・・」 しゃくりあげながら、彼女は恨みを含んだ眼差しを彼に向ける。 「感情は、全て押し殺せ・・・。 俺はそう教えたはずだ・・・」 凍りつくような冷たい声。 アンジェリークは胸を鷲掴みにされるような痛みを覚えた。 「----出来ない!! そんなこと出来ない・・・!!」 「やらなければ、ならねえ。守るものを守りたいのであれば・・・」 すっかり興奮状態に陥ったアンジェリークに、アリオスの一言は冷水のように浴びせかかる。 彼女ははっとする。 弟が気にかかる。 彼女をおびき寄せるために、何度も襲われたマルセル。 「マルセルは・・・!? マルセルは!」 彼の精悍な肩を、彼女は夢中になって揺らしていた。 「----案ずるな・・・。マルセルは無事だ。昼過ぎには、別の病院に転院させた・・・」 大きな溜息をつき、アンジェリークはそのまま彼の胸に崩れ落ちた。 よかった・・・。 やかった、マルセル・・・ 「・・・これから・・・、私はどうなるんですか?」 「取りあえずは、俺の屋敷で暮らせ。 セキュリティも施してあるから、安心だ・・・。 最初から、そうすればよかったんだが」 アリオスの屋敷!? そう考えるだけで、アンジェリークは別の意味で鼓動が早くなるのを感じた。 ---------------------- 「そうか・・・。また殺られたのか、あの男に・・・。 全く、あいつはどこまでも私の邪魔をする・・・。 判った、又報告を持っている」 薄暗い部屋で、男は報告の電話を切った。 彼の表情は不気味さが蠢いている。 あの男は懲りてはいないのか・・・。 愛するものを奪われる苦しみを味あわせてやったというのに・・・。 まだ必要に私を追いかけるのか・・・・。 邪魔はさせぬ、絶対に。 アンジェリーク・コレットを手に入れることを---- エリスの後は、おまえ自身だ---- 0016、アリオス!!! 男の眼差しが闇に無気味に光った---- |
TO BE CONTINUED・・・
![]()
コメント
エージェントアリオスの五回目です。
カーチェイスだけで終わっちゃった(笑)
もっと活躍をさせたかったんですが(笑)
ショットガンはまあ、私の好みで使わせていただきました〜。
![]()