SWEET SLAVE

前編


「何!? コレット財閥の奴等がレイチェルを誘拐しただと!?」
 側近であるエルンストに聞くなり、アリオスは美眉を寄せた。
「はい。こちらが要求をのまないからだと」
 エルンストは落ち着いてはいたが、やはり動揺が隠せない。
 それもそのはずで、アリオスの妹レイチェルは、かれの大事な恋人でもあるのだ。
「レイチェルがあっちの手のうちにある以上は、こっちも手を打たねばならねえな」
「----はい…」
 アリオスは口元で指を組み、考え込むように異色の瞳を少し伏せた。
 彼の頭には一人の少女の顔が浮かぶ。
 本当に、あんな親から生まれてきたのかと思うほど、彼女は優しく、みんなから好かれている。
 彼の妹であるレイチェルが通う名門女学院”スモルニィ女学院"は、良家の子女を教育する学校としても有名で、その少女もそこに通っていた。
 穏やかで、明るくて、彼を魅了して止まない栗色の髪の少女。
 彼女の名前は、アンジェリーク・コレット。
 そう、彼女こそ、アリオスの家である"アルヴィース財閥”と敵対する、"コレット財閥”の総帥の愛娘である。

 そっちがその気なら、目には目をだ----
 アンジェリークには気の毒だが…、仕方あるまい…。
 あいつにはあんなことはしたくねえんだけどな・…

 彼は、思うところがあってか、そのまま立ち上がると、ジャケットを片手にドアへと向かう。
「出かけてくる」
「アリオス様、どちらへ!!」
 エルンストに声を掛けられ、彼は一瞬立ち止まり、振り返る。
「レイチェルを助けるためだ…」
「アリオス様!!」
 エルンストが感動に浸っている間、アリオスはさっさと社長室を出て行ってしまった。

 これしか方法はねえ…。
 アンジェリークには悪いがな・・・

 アリオスは駐車場までエレベーターで降り、そのまま、セキュリティが万全と施された、彼専用の注射スペースへと向かい。愛車のシルヴァーメタリックのポルシェに乗り込む。

 レイチェル。何とか助けてやるから、我慢してろよ?

 そのまま彼はアクセルを踏むと、スモルニィ女学院へと車を走らせた----

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 車の中で様子をうかがっていると、栗色の髪の天使が俯き加減で校門から出てきた。

 レイチェル…。どうしたのかな…

 親友を心配する余り、彼女は元気なく、肩を落としていた。
「おい、アンジェリーク!」
 聞きなれた甘いテノールに、彼女は思わず顔を上げる。
 そこには、レイチェルの兄であるアリオスがいたため、彼女ははっとする。
 いつものように、春の風に愛でられた銀色の髪が靡き、見つめる異色の瞳も魅力的だ。
 アンジェリークはその姿にしばし見ほれ、うっすらと頬を赤らめた。
 彼女の密かな想い人は、アリオスなのだ。
「アリオスさん」
 逢えたのが嬉しくて、彼女はようやく笑顔を浮かべることが出来た。
「よお」
 ふっと微笑んでくれた深い優しさに導かれるようにして、彼女は彼に駆け寄っていった。
「よう、元気か、アンジェリーク」
「お久しぶりです…。----あ、レイチェルの…、具合はいかがですか?」
 そのはにかんだ少女の様子をじっと観察しながら、アリオスはふと思う。

 この様子じゃ…、何にも知らねえんだな・・・

「アリオスさん?」
「----アンジェリーク、悪いが…、俺と一緒に来てくれねえか?」
「あ…、はい…」
 ごく自然にアリオスが助手席のドアを開けてくれたのを、彼女は嬉しく思いながら、うっすらと恥ずかしがって、そこへと座る。
 アリオスは彼女がちゃんと座ったのを確認してから、彼は自分も運転席に乗り込む。
 車が動き出す。
「アリオスさん…、どこに行くんですか?」
 まだ屈託のない声を彼女は漏らしている。
「----楽園だな…」
「え!?」
 自分の耳を疑って、彼女は彼に訊き返す。
 だが、返事は戻っては来ない。
 何も知らない天使を乗せた車は、一路、”甘い罠”に向かって走り始めた----

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 二時間ほど走った時に、流石のアンジェリークはこれはおかしいと思い始めていた。
「あの…、アリオスさん、どちらへ…」
 冷たくも整った彼の横顔をちらりと横目で盗み見しながら、彼女は戸惑いがちに呟く。
「もうすぐ着く」
 車は深い森の中を走っており、閑静な場所に来ていることが判る。
 彼女は不安そうに俯き、唇をきつく噛み締める。

 大好きなアリオスさんだから…、信じられるけど・…。
 やっぱり黙ってこんな場所に連れて来られちゃうと、少し不安になる。

 やがて視界に、瀟洒な館が見えてきた。
 白い石造りで出来たそれは、出窓がいくつもあり、まるで、童話の中のお城のようだ。
「凄い、綺麗なところ…」
 先ほどの不安になったことなどすっかり忘れて、彼女は無意識に感嘆の声を上げる。
 その姿が、彼には可愛くて仕方ない。
 思わず、甘い笑みがアリオスからもこぼれる。
「今から行くのはあそこだ。今日は土曜日だ、ゆっくりしていこう」
「あ、はい…」
 こんなことはいけないと判ってはいながらも、アンジェリークはなぜか胸がときめいてしまう。

 なんだか…、王子様みたいね…。
 アリオスさん…

 甘い罠が仕掛けられているとは露知らず、彼女は、高まる気持ちに、心を踊らされていた。


 車は、館にある広い駐車場に着き、まずはアリオスが先に下りた。
「待て、おまえはおりるなよ?」
「え!?」
 声を上げたのもつかの間、アリオスはアンジェリークをそのまま抱き上げ、屋敷の玄関へと向かったのだ。
「あ、あの…、アリオスさん…、歩けます…、私…」
 耳まで真っ赤にしながら、彼女は両手で顔を恥ずかしそうに覆ってしまう。
「ここは俺の別荘だからな。おれの言ったとおりにしてもらうぜ?」
 甘美な行為に、彼女は全身が甘い旋律で震え上がるのを感じた。

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 部屋に案内されるなり、気のよさそうな中年の家政婦がやってきて、彼女をお風呂に入れ、白いドレスで飾り立てた。
 何が怒っているのかがわからず、アンジェリークはされるがままだった。
 ようやく、家政婦が去ったかと思うと、入れ替わるかのように、アリオスが部屋に入ってきた。
 白いカッターシャツに黒いパンツと言う姿は、艶やかで、彼女を魅了して止まない。
「綺麗になったな? アンジェリーク」
「アリオスさん…、これはいったい…」
 困惑を隠せずに、彼女は呆然とアリオスを見つめる。
「お気持ちは、嬉しいですが、私…、こんなことしている暇はありません、家に帰らなければ…」
「おまえを帰すわけにはいかねえ…」
 冷酷な言葉だった。
 彼女は身を固くし、顔色を青ざめる。
「どうして…」
 わけがわからないというように、彼女は囁く。
「おまえの父親が、妹を誘拐した。取引に応じなければ、レイチェルはどうなっても知らないとな」
「そんな…!!!」
 事実をいきなり突きつけられて、彼女は衝撃の余り身体が崩れ落ちるのを感じる。
「おっと・・・」
 彼の逞しい腕に抱きとめられたが、彼女は身を捩り、そこから逃れようとする。
「止めてください!!」
「ダメだ。目には目をだ…」
 乱暴にあごを持ち上げられたかと思うと、彼女は突然彼の深い口付けを受けた。
「・・・んっ!!」
 初めての彼女には到底ハードで、彼は彼女の唇を深く吸い上げ、舌でなぞり、最後は口腔内までも優しく愛撫を重ねる。
「ああ・・・っ!」
 唇を離されたとき、彼女はどちらかの唾液とは判らない唾液で、口の周りを濡らしていた。
「----今からおまえは俺のものだ…。
 ずっと、おまえが欲しかった…。覚悟しろ…」
「いやんっ・…!!」
 彼女はそのまま彼にベットまで連れて行かれると、その上に押し倒された-----    

コメント

本館の16000番のキリ番を踏まれたゆかり様のリクエストで、アンジェリークを監禁するアリオスです。
次回はもっと凄いことになりますので、そういうのがお嫌いな方は見ないほうがいいかも…



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