貰った”一日過ごす券”をじっと見つめながら、アンジェリークは思案にくれる。 これって、デートの誘いなのかな・・・。 それとも・・・。 でもあの男のひとだったら、ちょっと嬉しいかも・・・。 ぐるぐると頭の中に色々な感情が沸き起こり、アンジェリークは、真っ赤になったり、不安になったりとかなり忙しい。 「電話で声を確かめるとか・・・。それだけじゃこころもとないものね」 確実性もない以上は、携帯で話して決めるのも気が引けた。 結局、思案にくれて、アンジェリークは学校のパソコンでネット検索することにした。 空き時間を利用して、”アルウ゛ィース総帥”と入れて検索をするだけで、かなりのファイルが見つかった。 その中に、すぐに写真のあるページが見つかり、それをじっと見つめる。 やっぱり、そうだったんだ・・・! 検索結果は、アンジェリークにとっては幸せなものとなった。 アルヴィースの社長があの銀の髪をした青年だと知り、甘い興奮が全身を駆け抜ける。 アリオスさんって言うんだ・・・ 名前まで素敵・・・。 アリオスが絡むものは、何でも素敵だと思うのは、もう恋をしている証拠だ。 写真が載っているページをこっそりとプリントアウトし、それを持つ手が震えた。 家に帰った後、再びチケットを眺めて、書かれている電話番号をなぞる。 片手に携帯を持っていながら、アンジェリークはボタンを押せなかった。 デートする、しないに関係なく、お礼はしないとね・・・。 こんな豪華な福袋だったんだから。 でも、豪華だから福袋って言うのかもしれないけれど・・・。 自分の心には、”デートには関係ない”とわざと言い聞かせながらも、再びj彼に会いたいと思うのは乙女心だ。 アンジェリークは意を決して、彼に電話を掛けることにした。 一応、五時半ぐらいになったらね。 ひとり暮らしなので、夕食の準備などをしながら時間を潰すことにする。 残りもので簡単に豚カレーの下拵えを終えた頃、時計はその時間となった。 電話・・・! とろ火にしてカレーを煮込みながら、アンジェリークは携帯を手にして、震える指で番号を押す。 何度も最後のひとつで、切ってしまう。 「どうしよう・・・」 余りに緊張して心臓が飛び出しそうになりながらも、彼の声が聞きたくてしょうがなかった。 落ちつくために、何度も深呼吸をした後、彼女はゆっくりとボタンを押し始める。 覚悟を決めて最後のボタンを押すと、すぐに呼び出し音が鳴り響いた。 「アリオスだ」 艶やかな声は、確かにあの青年だった。 その声を聞くだけで、アンジェリークは息が早くなる。 「あ、あの、私、アンジェリーク・コレットといいます。昨日はお世話になりました!」 「ああ、おまえさんか」 アリオスも実はアンジェリークから電話が来ないのを、少しイライラしながら待っていたのだが、ここは、冷静に対処する。 「はい。アリオスさんにはきちんとお礼が言いたくて・・・」 「だったら、そのチケット行使してくれよ。俺もおまえさんに逢いたい」 彼女から連絡があれば、ここからは自分が主導権を握るつもりだった。 あくまでアリオスはストレートに攻める。 「あ、お忙しいんじゃなんですか?」 「おまえさんになら時間を使えるぜ」 「有り難うございます」 耳元に甘い囁きに、アンジェリークは甘くのぼせてしまう。 「チケットは使うか?」 「・・・はい」 ストレートに訊くアリオスの雰囲気に押された形で、アンジェリークは返事をした。 「サンキュ。じゃあ約束しようぜ? チケットの行使の日」 「バイトがありますから、おっしゃって頂いた日を空けます」 「オッケ。じゃあ次の日曜日はどうだ?」 アリオスは間に時間を空けることはなく、攻めるつもりだった。 間を空けてしまえば、他の者に奪われてしまう可能性が大きいからだ。 「・・・じゃあ、その日に」 アンジェリークは素直に同意しつつ、胸の高まりを抑えることが出来ない。 彼女が素直に同意してくれるのが、彼にとってはすごく嬉しかった。 「じゃあ、その日は、朝早くから出かけようぜ。10時にうちのデパート前の”空飛ぶ天使の像”前で」 「はい。判りました」 アンジェリークはうっとりと夢見ごこちで言う。 「あの福袋に入っている服を着てきてくれ」 「はい」 何だかくすぐったいと思いながらも、アンジェリークは素直に返事をした。 「それじゃあ、楽しみにしてるからな? おまえさんのことをよく知りてえしな?」 「はい。私も楽しみにしています」 ここまで言うと、電話を切った。 その瞬間脱力し、彼女は大きく深呼吸をする。 デートの約束をしちゃった・・。 そう思うだけで、アンジェリークは真っ赤になってしまう。 「アリオスさんと、デート・・・」 真実だとは俄かには信じることが出来ずに、アンジェリークは口に出してみた。 そうすれば真実味が増してくるのを感じる。 彼女は携帯を握り締めながら、じたばたとするのであった。 デートの前日は本当に眠れなかった。 緊張と胸のどきどきが激しい。ベッドに入っても、ついつい寝返りを何度も打ってしまった。 アリオスさん・・・。あの素敵な声に、あの姿・・・。 目と耳に焼き付いて離れない・・・。 その生の声を聞けるなんて、姿を見られるなんて・・・。 凄く幸せ。 アリオスのことを思いながら、いつしかうとうととまどろみの世界に、アンジェリークは入っていった。 翌朝、すぐに目覚ましは、その世界を破るかのように鳴り響き、彼女は目を覚ます。 「準備しなくっちゃ!」 アンジェリークはベッドから飛び起きると、準備をしっかりはじめる。 今日はいつもより念入りに準備をしっかりとする。 栗色の髪をつやつやにするために念入りにブラッシング。 肌も、昨日は角栓を取るパックとコラーゲンのパックを十分にした。 多少の寝不足ではびくともしない、つるぴかのお肌になっている。 ファンデーションはまだ早いから、彼女はローションと紫外線止めのをしっかりと塗り、ほんのりパールのピンクのグロスを付けた。 元来の肌が美しい彼女は、それだけでも華やかになる。 アリオスからプレゼントされたと言っても過言ではない、”エンジェル・ブルー”のセーターとスカートを着て、上からは去年バーゲンで買った別珍のジャケットを羽織る。 髪は方までの髪をピンで上手く止めてまとめた。鏡でみるとなんとか様になっている。 「じゃあ、行こうかな」 アンジェリークはやる心を抑えきることが出来ないまま、約束の場所に向かった。 電車に乗って約束の場所まで向かうのにも、浮かれてしまう。 今日は、いつもと代わり映えのない景色ですら、絵画のように思えた。 乗る電車ですらもアルヴィース電鉄なのが嬉しい。 今から、私は、あなた達の一番えらい人に会いに行くのよ!! 電車にすら話しかけるアンジェリークであった。 電車を降りて、緊張の面持ちで、彼女はデパートの前の象に向かって歩く。 あ・・・!!!! 約束の時間より5分前。 アンジェリークが夢見た、”皇子様”アリオスが、待っていてくれた------ TO BE CONTINUED… |
コメント 福袋ネタです。 デートは次回ということで。 しかし『アルヴィース』 完全なる知恵者。 ラグナは完璧な神 今更ながらすごい名前(笑) 北欧神話〜。 |