Force Of Passion

2


 アリオスに失礼はあってはいけないと、アンジェリークは思い切りお洒落をして、土曜日の午後を迎えた。
 アリオスに言われたように、医院の裏口のインターフォンを震える指で押す。
 胸のドキドキが耳にまでついてきて、妙に意識しているのか真っ赤になった。
「アンジェリークか? 中に入れ」
「はいっ」
 鍵が開く音がして、アンジェリークはドアを開けてゆっくりと中に入る。
 すでに玄関先では、アリオスが迎えに来てくれていた。
「こんにちは」
「ああ。中に入ってくれ。準備は出来ているから」
「はい」
 いつもの白衣姿のアリオスも悶絶カッコいいが、私服の今日もまた素晴らしく素敵に思える。
 シンプルなモノトーンのシャツと黒い革のパンツ。
 余りにも素敵すぎて、アンジェリークは見惚れてしまった。
 アリオスもまた今日のアンジェリークはいつもにも増して可愛く思える。
 ワンピースは良く似合っているし、笑顔の清楚さは健在だ。
「こっちだ」
「はい」
 アリオスに連れられて行った場所は、いつもの診察室ではなく、居室しかもベッドのある部屋だった。
「より効果を上げられるようにと、ワンピースに何かあったら困るからな? ベッドの上にあるローウ゛に着替えてくれ。その際、ブラジャーは外すこと。ローウ゛の下はぱんつ一丁だ」
「・・・はい」
 あまりにもアリオスが淡々と話すものだから、エロティックな要素は一切ないように思えた。
 が、その奥では、もちろん邪な思いがあることをアンジェリークは知る由もない。
「準備が出来たら言ってくれ」
「判りました」
 アリオスが部屋から出ると、ほんの少し恥ずかしいと思いながらも、手早く着替えることにした。

 やっぱり本格的なんだ・・・。
 アリオス先生になら、肌、触れられてもいいかな?

 裸に近い格好にさせられているにも関わらず、アリオスへの恋心からか全くおかしくは思わない。

 せ、先生が肌を触れたら、きっと私・・・。

 アリオスの繊細な指先を思い浮かべるだけで、躰の奥が熱くなるのを感じた。
「あの、出来ました・・・」
「ああ」
 ドアの外で待っていたアリオスは、ゆっくりと部屋の中に入ってくる。
 ローウ゛姿を晒すのは嫌ではないが、少し恥ずかしかった。
「じゃあ、ベッドの上で俯せになって寝てくれ。しっかりとまずは凝りをほぐしてやるからな」
「はい」
 何も知らないアンジェリークは、狼のまな板の上に乗ったことに気がつかない。
「まず、背中と腰だな」
「はい」
 アリオスはアンジェリークの躰に跨がるような形でマッサージを始めた。
 親指が確実にツボを抑えてくる。
 強くもなくかと言って優し過ぎるわけでもない、丁度いい押し具合だ。
「気持ちいいか?」
「はい、凄く」
 本当にあまりにも心地が良すぎて、よだれが出てしまう。
「腰近くを押すぜ?」
「はい」
 腰に食い込んでくる指が、快楽の泉を湧き出させた。
「すごく、気持ちいいです」
「胃の後ろあたりはどうだ?」
「気持ちいいです〜」
 胃の裏のツボも心地好くて、知らず知らずに甘くも快楽の声を上げていた。
 不意に上半身をぐいっと起こされて、背後から抱き締められる格好になる。
「気持ちいいか?」
「はい、とっても・・・」
 アンジェリークはとても甘い吐息を吐きながら完全にリラックスしている。
「足のツボも押してやるぜ」
「はい、お願いします」
 再び寝かされて、アリオスの手が足を滑るように触れていく。
 官能的な手の動きに、喘いでしまう。
「立ったりするのも、すげー楽になるからな」
「はい・・・」
 くすぐったいのか気持ちいいのか中間ぐらいの気分だ。
 アリオスの指先は気持ち良すぎて、変に躰が熱くなる。
 ぴくりと躰を動かすと、太股に手を置いた後、アリオスは一端動きを止めた。
「どうした?」
「ちょっと、熱いです・・・」
「どんな感じに熱いんだ?」
 低く囁く声もまたセクシー過ぎて、益々躰が熱くなって、どういう感じだか上手く説明出来ない。
「・・・躰の芯が凄く熱くて、何だかヘンな気分なんです・・・」
 大きく深呼吸をすると、アンジェリークは潤んだ瞳でアリオスを見つめる。
「どうしてでしょうか・・・」
「全然おかしなことじゃねえぜ? 正常な女としての躰だぜ?」
「あっ・・・」
 顔を唇が触れるぎりぎりのところまで近付けられる。
「俺のこと、好きか?」
 途端にアンジェリークは真っ赤になる。
 それが答えを言っているようなものだ。
「・・・あの・・・」
 言葉を濁そうとするが、目は口ほどに物を言う判りやすいアンジェリークにはほとんど意味はなかった。
「訊いてるんだぜ? それを教えてくれたら、躰の芯が熱い理由を教えてやれるぜ」
「・・・意地悪・・・」
 少し恨めしいそうに言うが、アリオスには効果がない。
「どうなんだ? 俺はお前が好きだぜ、アンジェ」
 アリオスが投げてきた直球を、アンジェリークは素直に受け止める。
「・・・好きです・・・」
 それに答えるかのようにアリオスは甘く微笑むと、抱き締めて唇を重ねてきた。
 初めてのキス。
 唇を包むようにしっとりと吸い上げてくる。
 アンジェリークの全てを奪うような愛撫。
 何もかも初めての経験に、頭の芯までとろけてしまいそうだ。
「んんっ!」
 巧みに感じる場所を攻め立ててくるアリオスに、いつしかしがみついてしまっていた。
 唇を離されたときには、周りが唾液でいっぱいになる。
「先生・・・」
「すげー色ぽいぜ。最高に綺麗だ」
 ぎゅっと抱き締められると、とても気持ちいいが、何か硬いものが躰が当たる。
「先生・・・、なんか硬くって熱いのがあたってる・・・」
「おまえを俺が欲しがっている証拠だ」
 華奢な躰を抱き締め直して、アリオスはゆっくりとローウ゛に手をかけていく。
 この指先に触れられたい。
 そんな思いの魔法にかかり、アンジェリークは特に抵抗しようとしなかった。
「もっと気持ち良くなるように、マッサージしてやるよ」
「アリオス・・・」
 アリオスの手が優しく伸びてくる。白い胸に伸びた時、アンジェリークは官能の鍵を手にいれた。

コメント

アリオスさんに指圧されたい〜。
エロ整体師の話は次回本番編に続く




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