DUKE AND I


その夜は、結局、明け方近くまでアンジェリークは、アリオスの淫らなレッスンを受け、朝まで彼の腕の中で過ごした
 目が覚めると満たされた身体と共に、満足感が心を満たされる。
 時計を見ると、もう起きなければならない時間を少し過ぎていた。
「あっ、いけない・・・!」
 慌てて、アンジェリークは飛び起きると、ベッドから出ていこうとした。
「きゃっ!!」
 突然、華奢な腕を掴まれて、アンジェリークはベッドの中に引きずり込まれる。
「もう少し寝てろ、一緒に・・・」
「あっ・・・」
 背後から強く抱きすくめられて、アンジェリークは甘い声を上げた。
「今日のおまえは休んでもいい。ちゃんとメイド頭にも言っておいた」
「ご主人様・・・」
 アンジェリークは、アリオスに甘い肢体をすり寄せ、その暖かさにうっとりとする。
「アンジェ」
 アリオスは、彼女を組み敷くと、その可愛さの余り、再び、情熱が高まる。
「あっ、ご主人様・・・」
「もっとおまえを愛したい・・・」
 昨夜火をつけられ、深く愛された身体が、再び、炎になって、全身を覆いつくす。
「ご主人様・・・」
「これから、毎晩、俺のところに来い・・・。休みの前の日は、朝までおまえを離さねえからな・・・」
 何度も甘いキスを送って、アリオスは優しく、囁く。
 アンジェリークは、甘い幸せを感じながら、彼に身を任せた。

 私、今、凄く幸せです・・・。



 それからと言うものの、アンジェリークは、毎晩のように、アリオスの調教を受け、セックスの面でも、アリオスの好みの女となっていく。

 離さねえ・・・! 絶対に!

「おまえはどうしてそんなに可愛い・・・」
「ご主人様・・・」
 潤んだ瞳をアリオスに向け、アンジェリークは、温かさを求めて、アリオスに腕を延ばす。
「抱き締めて下さい」
 可愛い懇願。
 アリオスは甘く優しい微笑みを浮かべると、彼女を力一杯抱き締める。
 そうしてやると、か細い腕が彼をしっかりと包みこんでくる。
 その柔らかな温もりが、アリオスは好きだった。
「ご主人様・・・!」
 何度も愛し合い、アンジェリークは、アリオスが紡ぎ出す、愛の戦慄に溺れていく。
 アリオスもまた、彼女に深く溺れた。
「アンジェ!」
 アリオスは、他の女を抱くことなど、もはや考えられなかった。
 二人は、熱い思いを互いに抱いているが、それをまだ口にはしていない。
 淫らに甘い関係は、毎夜、宴のように続いていた。


「アンジェリーク」
 仕事中に声を掛けられて、彼女は振り返った。
 そこには、一緒に働いている、ランディがいた。
「あ、ランディ…」
「後で話があるんだけど、仕事が終ってからいいかな?」
 少し照れくさそうに言う彼に、アンジェリークは優しい微笑を浮かべる。
「いいわよ?」
 そこまで言って、アンジェリークははっとする。

 明日、ご主人様も私もおやすみだから、早めに来いって言ってたな…。
 一緒に過ごしたいし、彼と会っていることがご主人様にばれたら…

 突然黙り込んだアンジェリークに、ランディは急に不安げな、頼りなさそうな表情になる。
「…どうしたの?」
 彼の、少し不安そうな声と表情に、アンジェリークは我に返る。
「あ、ごめんなさい。
 勿論いいわ。だけどあまり時間がないから手短にお願いしていいかしら?」
 アンジェリークの笑顔に、ランディは笑顔で頷いた-----



 総ての仕事が終わり、アンジェリークはランディと少しだけ庭で話をすることにした。
「ごめんなさい…。5分ぐらいしか時間はないけど」
「あ、かまわないよ」
 緊張しているのか、彼の声は固く、少し震えている。

 ランディは私と同じ年…。
 やっぱり、ご主人様は、大人で落ち着いてる…

「-----あ、あのさ、アンジェリーク、誰か…、好きな人いる?」
「えっ!?」
 ランディの言葉に、アンジェリークは息を飲む。
 脳裏には、アリオスの顔が浮かび、アンジェリークは真っ赤になった。
「…あ、あの…、私…」
「俺! 君のことが好きなんだ!」
 意を決して、ランディは思い切っていった。
 熱血少年らしい告白である。
「-----あの、私…」
 アンジェリークは、益々戸惑った。
 彼女の困ったような、潤んだ瞳を見て、ランディは総てを悟り、フッと寂しげに笑う。
「-----好きな人…いるんだ…」
 その言葉に、アンジェリークは素直に頷いた。
「そう・・・か・・・」
 彼は頷くと、次の瞬間には、もう爽やかな笑顔を浮かべて、アンジェリークを見ていた。
「すっきりした! 
 その人が僕は羨ましいけど、君が幸せだったら、俺は構わないよ!」
「ランディ」
 爽やかな彼の笑顔がとても眩しい。

 あなたのように真っ直ぐな気性だったら、私、ご主人様に言えたのに…。

「私…片思いなの…」
 素直に言う彼女を、ランディは複雑な気分で見つめる。
「-----頑張れ。
 きっと思いは通じるさ、君ならね」
「ランディ…」
 彼の真っ直ぐな瞳を見ていると、アンジェリークは癒されるような気がする。
 彼女はしっかりと笑うと、頷いて見せた。
「うん、頑張るわ!」
「その調子だ!」

 アンジェ…!!!

 笑いあって仲良さそうに見つめる二人を、アリオスが見ていた。
 彼は嫉妬でその身を焦がす。


「じゃあ、おやすみ」
「うん…、おやすみなさい」
 二人は、最後には爽やかに微笑み合って、その場で別れた。
「さてと、私も部屋に戻らなきゃ…」
 振り向いた瞬間、アンジェリークは急手を乱暴につかまれて、息を飲んだ。
「アンジェ…!」
「ご主人様…」
 痛いほど強く掴んだのは、アリオス。
 彼の異色の眼差しには、激しい嫉妬の炎が燃え上がってる。
「来い!」
「きゃあっ!」
 そのままアリオスに強引に抱き上げられると、彼女は彼の部屋に連れて行かれた----

 ご主人様…
 何故そんな恐い表情を…

  

コメント

23000番のキリ番を踏まれた朝倉瑞杞様のリクエストで、
「アンジェリークを調教するアリオス」です。
メイドとご主人様。
むちゃくちゃ長くなってますねえ。
ごめんなさいです。
後2回ぐらいはお付き合いくださいませ